列車ダイヤについて --  3ー95 医療とデジタル技術

                                      2022年12月1日  

    3ー95 医療とデジタル技術
    
  マイナンバーカードを保険証として使うことが話題になっています。
  医療にデジタル技術を活用すべきかというと、私はもっとどんどん活用すべきだと思います。
  医療の経験も知識もないので、間違えた考え方かもしれませんが、医療を受けることはあるので、非常に
  関心のある話題です。ひとりのユーザーとしてどのような事を考えているかをまとめたのが、今回のコラムです。
  
  まずはじめに、医療や治療の経験や結果は、人を中心に見る見方と病気を中心に見る見方があります。
  医療技術が初歩的なうちは、医療関係者ならすべての病気に対応できたかもしれませんが、
  現代の医療は、病気毎にいろいろな特殊な治療方法があります。
  さらに工業製品なら、基本的に設計書に基づいて作られていて、使用される環境の違い位しかないのですが、
  人は血液型が違ったり、いろいろ個人個人で違う部分があります。
  このようにひとつの事象を、統計的に、人を中心にまとめたり、病気を中心に解析しまとめるのは
  デジタル技術は非常に得意です。
  また非常にめずらしい病気の場合、デジタル技術を使えば類似の事象がないか検索することができます。
  かかりつけの医師でどのような体質の患者かよくわかっている人が、基本的な医療知識をもったうえで、
  めずらしい病気に関する過去の事例を簡単に検索できれば、効果的な治療ができます。
  
  次に感染症に関してですが、コロナ感染症に関して、波が来るたびに医療機関の逼迫が話題になります。
  感染の波が来そうになると、いつ頃最大で何人の感染者が発生するかの予想が発表されます。
  そのたびに疑問を持ちます。なぜ翌日の感染者数の予測を発表しないのかです。
  天気予報であれば、翌日の予報は高い確率で当たりますが、3ヶ月予報などはそれほどの確率では当たりません。
  感染者数の予測も翌日の予測のほうが高い確率で当たると思うのですが、なぜ発表しないのでしょうか。
  さらに疑問があるのは、いつ頃最大で何人の感染者が発生するか聞いて誰が何を準備しているのかです。
  翌日どれほでの感染者数になって、どのくらいの人が病院に行くので、どれほどの混雑になるかを予想してくれると、
  患者には非常に役にたつと思うのですが、何も発表されません。
  交通機関の座席の予約状況であれば、常にリアルタイムで調べることができ、予約の状況から混雑が予想される場合、
  追加で臨時便が運行されるなどの対策がとられます。
  医療は、他のサービスとはまったく異質なものだと考えているとしたら、それは間違えた考え方だと思います。
  リアルタイムで病院がどれほど混雑していて、待ち時間がどれくらいでこの先24時間の予測がどれほどかを、
  具体的に発表してこそ、ユーザーは正しい判断をすることができます。
  交通機関は公共性があるので、予約状況などを公開すべきだとしたら、病院にも公共性があります。
  個々の病院の営業成績に関わるから発表しないというのは間違えた考え方です。
  
  感染症に関しては余剰ワクチンの廃棄や、病院への補助金が正しく支給されなかったなどの会計的な側面
  の問題も指摘されています。ワクチンの需要がいつ頃どの位あって、ロジスティックスをどのように行うのが良いかは、
  基本的にはコンビニの配送と同じです。高度な個人情報を含む特別な業務だから、他の業務分野のシステムは
  まったく使えないと考えたとしたら、それは間違えた考え方です。個人情報を含まない方法でデーターを扱う技術と
  他の業種でのロジスティックスのシステムを連携して稼働させるデジタル技術を開発すべきで、
  ワクチンの接種が日毎にどの位の水準で行われているかと、需要予測に基づく発注と調達に要する日数が基本になるデーターで
  医療関連のシステムだから一から開発する必要があると考えるのは間違えたアプローチです。
  コロナ感染症だけでなく、インフルエンザや他の病気についても、発生予測と、ワクチンや治療薬の調達と
  実際の使用状況を公表すべきです。医師の数を制限して、需要に対して供給が不足するように調整することで、
  医療機関の利益を確保しようと考えるのも間違えた考え方です。そのような個別最適をめざしても、
  社会保障費などの観点から考えた全体最適は得られません。ATMの待ち行列でも、一列で待つほうが
  全体の待ち時間が短くなるように、社会保障もデジタル技術を活用したデーターに基づく全体最適を目指さないと、
  個別最適をめざしていては、一箇所に患者が集中するなど、めざしたはずの個別最適が得られない状況になります。
    
  集団健康診断の結果には、測定結果が基準内か異常かが表示されています。しかし、例えば40歳以上の検診で
  腹囲や血圧の測定値は基準内の人がどの位居るのか疑問です。身長の測定結果を平均値と比べても意味がないように、
  健康診断の結果も、もっと違った分析があるような気がします。
  mRNAを利用したまったく新しいタイプのワクチンが開発され、がん治療でも、個々の人にあった治療薬が
  開発されようとしています。デジタル技術により、図面があれば、3Dプリンターで1個からでも部品が製造
  できるようになり、古い製品の修理にも使われています。以前はどんなマイコンもパターンを作って製造する必要があり、
  設計を間違えていないかすごく緊張していました。また、マイコンが廃番になると、製品の修理が出来なくなっていたのですが、
  現在ではFPGAを使って設計図があれば、1個でも製造することができます。
  デジタル技術は、データーがあれば個々のものに対応できるということで、まさに医療に必要とされる技術です。
  患者の数が少ないと、経済的に治療薬を開発することができないといわれますが、これからは変わるかもしれません。
  
  モーターは19世紀の終わりに実用化されました。蒸気機関にかわるものとして注目されました。
  しかし、本当にその影響が大きくなったのは、50年近く経って、工場でモーターがあれば必要な箇所で
  動力が得られるので、蒸気機関の動力を得ることを一番に考えた配置から、製造工程を一番に考えた配置に
  変わってからだといわれています。それから100年近く経って、もうモーターの技術は完成しているかといえば
  そうではありません。電気自動車に使われるようになってふたたび注目の技術です。
  例えば、東京メトロ日比谷線の営業電車で三菱電機と共同で、synRM(シンクロナス・リラクタンス・モーター)
  の試験を行い、現在のPMSM(永久磁石・シンクロナス・モーター)より、20%近いエネルギー効率の改善
  がありました。パワー半導体を中心とするインバーターの制御技術が鍵になります。
  動きはじめに少し独特の音がします。実用化されると、ドレミファインバーター並みに話題になるかも
  しれません。(ならないかもしれません。)
  コンピューターが出来てからもう80年近く経っています。その間に、Web1.0 2.0 3.0と日々新しい
  技術が登場します。しかし、長い目で見ると、現在までが第一世代かもしれません。
  SNSでの宣伝媒体など、生活になくてはならないものかというとそうでもないという利用が多かったのですが、
  これからは、医療など、もっと無くてはならない技術に使われるようになります。
  現在、日本ではデジタル技術などについて「失われた30年」と言われます。
  そこで、出来上がった技術として米国などから導入すれば良いというほど単純なものではありません。
  デジタル技術に関して、世界のナンバー・ワンになるか、オンリー・ワンになって、
  開発の先頭に立たないと、30年後には、「取り返しの効かない30年」になります。
  出来上がったデジタル技術の導入だけでなく、独自の技術の開発が必要です。
  
  20世紀には日本の品質改善活動が注目されました。現在では、工場で検査不正などがあって色あせましたが、
  品質改善活動が注目されたのは、それまでにない新しい考え方があったからです。
  ジャストインタイムも、次工程が要求する以上の仕掛品を作るなというように、世界中でだれも思いつかなかった
  考え方に基づいていました。また品質向上と生産性向上はトレード・オフの概念で、過剰品質は、経営に悪影響という
  世界共通の考え方のなかで、品質を向上して作業の手戻りなどを少なくすることで、生産性が向上し経営成績も向上
  するという、品質向上と生産性向上をウィンウィンの関係にするというそれまでにない考え方だったので、
  注目されました。
  それに対して、テレビの地上デジタル放送が始まったころに決まった、地デジ放送の番組の録画を
  10回までダビングできるという決まりには、デジタル技術の本質を理解した上で活用しようという姿勢がありません。
  コピペが簡単で、コピーからコピーしても画質が劣化しないのがデジタルの強みです。
  しかし、著作権の管理を十分に行わないと不正なコピーが行われます。
  著作権管理のための新しい技術を開発するわけではなく、コピペが簡単という、デジタルの強みを活かしきるわけでもない、
  単に落とし所を探るだけの規定が、デジタル技術がわからない人が紙の資料で議論しているうちに
  出来上がったという感じです。
  
  現在、日本に半導体工場を作ろうとしていますが、単に海外の技術を取り入れるだけでは、
  事業規模を大きくするための投資額の競争になります。パワー半導体やアナログ半導体で世界最先端のレベルになるとか、
  ダイヤモンド量子センサーの製品化を世界で初めて行うなど、ユニークな観点が必要です。
  例えば、ダイヤモンド量子センサーが製品化されれば、常温・量子技術の初の製品化になります。
  製品化されると非常に多くのフィードバックが得られるので、量子コンピューターが
  想定より早く実用化されるかもしれません。
  RISC−VはUCバークレーで研究・開発されたマイコン用のISA(命令体系)です。そして、3人の卒業生
  を中心としてSiFiveというスタートアップ企業が設立されました。日本でも、大学の研究からスタートアップが
  設立されるという例が増えていますが、数も規模もまだまだ不足しています。
  デジタル技術をよく理解した人が、政策の立案を行う必要があります。
  ISAとかOSは20世紀の技術で一応結論がでて、21世紀はクラウドなどがエッジ技術だと思っていました。
  しかし、マイコンとFPGAのSoCを作る時、企業買収とからんでx86のマイコンが作られるのかが話題になったり、
  Androidのアプリ開発で、エミュレーターをArmのイメージで動かすか、x86−64のイメージで動かすかが
  話題になり、さらにRISC−VやHarmoneyOSが話題になって、再びISAとかOSが話題になっています。
  20世紀には、困難な鉄道トンネルの工事は、民間資本ではリスクが大きいので、国鉄の直轄工事で行うというような
  ことがありました。21世紀は民間資本が充実して、行政のデジタル化に大きな期待はないかもしれません。
  しかし、すべての居住者やすべての事業者に番号を付与して管理するというのは、中央省庁が企画しなければ
  不可能なことです。行政のデジタル化が民間のイノベーションを起こすことを期待するのも
  的はずれではないように思います。
  ただし、ISAもOSも日本人が非常に不得意な領域です。(個人の感想です。)救いは、RISC−Vが
  オープン・ソースだということで、Armに全集中する経営者もすばらしいですが、RISC−Vに全集中
  する企業もあって良いと思います。
  最近遅延の少ない高速通信回線の技術が発表されました。遠隔手術などに応用されるそうです。
  遠隔手術のように、IT機器を使いこなすというのは、日本人が得意な分野です。
  実用化し、さらに世界の通信の規格作りを日本が先導するところまでいくと、大きな成果が期待できます。
  アメリカは日本の3倍の人口ですが、以前にアメリカでIT機器を売ると日本の10倍売れるといわれた時期があります。
  その後の円高で、日本でIT機器を製造してアメリカで販売するビジネスはなくなりました。
  現在、日本の人口はアメリカの3分の1だが、SNSを常に利用する人の数は変わらないと言われています。
  日本独特の得意なIT分野や利用状況に注目する必要があります。
  
  最後に、電子カルテを中心に、医療に関わるシステムは高度な信頼性が要求される他とはまったく異なるシステム
  だという見方があります。一般的には正しい見方で、個人情報保護の面からも特殊なシステムであることは確かです。
  しかし、病気に関する類似の事象がないか検索するなど、医師が広く知識を得るために利用するとか、
  業務の効率をあげるために利用するなど、普通のシステムで使われている技術が流用できるエリアが
  たくさんあるように思います。
  営業でも、展示するだけで販売しない店など新しい形態の店がありあます。
  オンラインで登録して購入してもらうほうが、カートには入れたけれど結局買わなかった商品など、
  販売業務をデーターに基づいて分析できます。また、店員の人も販売ノルマが無くて説明するだけだと、
  商品にくわしい人なので、お客さんのほうから、積極的に問い合わせがあるというような現象もあります。
  病院を見ての印象は、個々の病院が個人商店で、自前ですべての業務を行っている印象があります。
  経営は現在のままで、デジタル技術を使って、地域医療の現状をデーターで把握し、改善する必要があると思います。
  現在の行政のデジタル化の考え方が、全体的にガバメントクラウドを中心とする、現在のシステムを中心に進んでいて、
  新しいサービスを作り出そうという企画があまり見られません。
  開発途上国では、固定電話はほとんど広まらなかったけれど、携帯電話は急速に進んだように、
  新しい技術が一気に広まることがあります。
  例えば、宅配便はデジタル化が高度に進んだ業界ですが、ユーザーとしてみるとまったく不満がないわけではありません。
  受け取る荷物の状況がオンラインの追跡システムで、細かくわかるのですが、最後、配達中になってからの時間が長いです。
  午前中などの時間指定のサービスよりも、いつ配達されるかが30分単位でわかる方法があるほうが良いと考える
  ユーザーがかなり居ます。
  もし、医療機関や行政機関がデジタル化の進展が遅れていると思っているのなら、それこそがチャンスで、
  携帯電話が一気に広まったような新しいデジタル化をどのように進めるかを考えるべきです。