列車ダイヤについて --  3ー85 マイナンバーカード、普及が先か、使うのが先か?

                                      2022年8月15日  

    3ー85 マイナンバーカード、普及が先か、使うのが先か?
    
  マイナンバーカードの普及率は、およそ50%です。総務省がCMを行っているので、
  もっと増えるかもしれません。
  
  将来の状況として、次のような可能性があります。
  1. 普及率100%近いレベルになり、皆が使っている。
  2. 普及率100%近いレベルになるが、日常使っている人はほぼ皆無。
  3. 普及率は50%のままで、日常使っている人はほぼ皆無。
  4. 普及率は50%のままだが、持っている人は日常使っている。
  
  1.は理想の状況ですが、2. 3. はあまり望ましい状況ではありません。
  それよりは、4.のほうが好ましいと思います。
  なぜ、2.が望ましくないかというと、カードの更新などで税金を使いますが、
  マイナンバーカードを使った行政のデジタル化の恩恵が得られていない状況だからです。
  それよりは、一部の人にせよ、マイナンバーカードを使った行政のデジタル化の恩恵を感じている
  4.の状況のほうが、望ましいと思います。
  
  マイナンバーカードの、普及ばかりに注目せず、持っている人が日常使用して、恩恵を感じることが
  できるようにすることにもっと注目すべきだというのが、今回のコラムです。
  
  「住民票の記載事項として「住民票コード」を追加し、「本人確認情報」を提供することで、
  共済年金の支給や、児童扶養手当の支給、資格試験などの業務の利便性を向上する」というのは、
  平成 11 年8 月 18 日(1999年)「住民基本台帳法の一部を改正する法律」が公布されるに際し、
  総務省が発表した、住基ネットワークシステム構築に関する骨子と稼働スケジュールに関する資料に
  述べられていることです。20年間、行政のデジタル化はまったく進んでいなかったという印象です。
  
  現在、マイナンバーカードを持っている人は、持っているだけで誰も使用していないかというと、
  そのようなことはありません。
  所得税の確定申告を行う際に、e−Tax のシステムを使って申告書を作成し、
  マイナンバーカードを使って、電子申告している人はかなり居ます。
  個人事業主で所得税の確定申告を年に一回行うという人のなかには、
  一年経つと申告書の作成方法をすっかり忘れて、3月になると毎年、レシートの束をみて
  ため息をついている人がいます。白紙の申告書を持って税務署にいくと、
  相談コーナーは異常に混んでいます。
  それに比べると、昨年の申告データーを保存していて、e−Tax のシステムに
  読み込ませると、システムが順番にデーター入力が必要な項目を表示してくれるので、
  記憶がよみがえって何とか申告書をつくることができます。
  マイナンバーカードを使っている人は、基本的に使うと、手書きで書類を作るより便利だから、使っています。
  
  マイナンバーカードを持っている人が、もっと日常使用するようになる方法として、
  ふたつ考えました。
  ひとつ目は、所得税の確定申告のように「署名用電子証明書」を用いた行政手続きの種類を増やすことです。
  土地・建物や車の所有権移転の手続きには実印が必要になるため印鑑証明書が必要です。
  マイナンバーカードを使って印鑑証明書が取得できるとしても、全体の手続きがそれほど簡単に
  なりません。マイナンバーカードを使えば、実印が不要になるようにして、手続き全体をもっと簡単に
  すれば、これらの手続きをする必要がある人は、マイナンバーカードを所有するものだと
  皆が思うようになります。
  
  最近、大臣の交替の引き継ぎの様子がよくテレビに映ります。引き継ぎ文書に筆で署名しています。
  伝統を重んじることも重要ですが、総務大臣とデジタル大臣だけは、デジタル文書に、「署名用電子証明書」
  を使って署名したものを交換してみたらと思います。ハンコとFAXを廃止して、筆で署名しているのを
  見ると、中央省庁のオフィスが地方移転したら、飛脚で文書を送るのかと思います。
  
  ふたつ目は、マイナンバーカードでバスに乗車できるようにするなど、公共交通機関で毎日利用するというものです。
  マイナンバーカードのJPKIの4種類のAPのうち、 利用者証明用電子証明書のシリアル番号を用いた、
  公的個人認証サービスは、マイナンバーを使わないので、民間利用も想定されています。
  地方のバス事業者のなかには、民間企業として、他のバス事業者と競争しているところもあります。
  一方で、競争相手すらいなくて、公的補助がなければ事業の継続が困難な事業者もあります。
  マイナンバーカードの読み取り機の設置などは、自治体が全額補助で行い、自治体内でどれほど
  公共交通機関の利用の需要があるのかを把握し、複数の会社のバスをひと区間づつ利用しても、
  個人の移動距離にもとづいて、運賃の徴収を行い、バス事業者に分配する仕組みをつくれば、
  バス会社を気にせず利用できるので、利用者にとって便利になります。
  また、バス会社毎の利用者の把握に加えて、自治体による、住民単位の移動の要求を把握することで、
  公共交通整備の計画を適切に行うことが可能になります。
  
  最後にもうひとつ、行政のデジタル化を推進するのは、マイナンバーカードの普及だけでなく、
  行政組織内でのデーターの保有の仕組みを考えることが重要です。
  最近、「マイナポイント事業」で不具合があり、1人で複数回の申し込みがあったという問題がありました。
  例えば、マイナンバーカードを誤って交付したような、自治体などが利用者の電子証明書を失効させる「職権失効」の場合、
  利用者証明用電子証明書の引き継ぎを行わないことが原因でした。
  民事訴訟の判決が確定した時、判決に遡及効があるか、対世効があるかが問題になります。
  例えば、会社の設立時の手続の瑕疵による設立無効が確定した場合、遡及効はなく、「将来向かって」効力を失います。
  対世効はあり、第三者に対してもその効力を有します。もし、遡及効が認められると、
  会社を設立してどんどん借金をした後で、取締役が設立無効の訴えを起こし、会社の設立日に遡って会社の
  設立が無効となり、会社が行った貸借契約も無効になって、借金を踏み倒すことができますが、
  そのようなことは認められません。
  一方で、株主総会決議無効の訴えは遡及効があります。例えば、経理の人がミスして、
  配当可能限度額を超える剰余金を配当するとした決議が行われた場合、実際に配当が行われたあとで、
  「将来向かって」株主総会決議の無効が確定しても意味がありません。遡及して、違法な配当金を取り戻して、
  会社の資本の毀損を防がなければなりません。
  
  行政機関のデーターはリレーショナル・データー・ベースに保存されることが多いですが、
  例えば、職員が退職した時、退職のフラグを立てるあるいは現役のフラグをはずしてレコード自体
  を保存する方法と、職員のレコードを削除する方法があります。
  何年かすると削除する場合もありますが、職員のレコードを削除した時、
  関連したレコードを削除する設定と削除しない設定があります。
  その職員が固定資産税の徴収の担当者のばあい、リレーショナル・データー・ベースの
  固定資産税徴収の記録のテーブルには、職員の名前が記載されているのではなく、
  職員のテーブルのレコードIDが記録されています。データーベース内のデーターの整合性を担保
  する強力な機能ですが、もし、職員のレコードを削除した時、関連したレコードを削除する設定にしていると、
  固定資産税徴収の記録のレコードも削除されてしまいます。
  テーブルのカラムのなかに関連するレコードが存在しないものを排除する機能ですが、
  固定資産税徴収の記録のレコードが削除されたからといって、もう一度固定資産税を徴収すると、
  大問題になります。
  このようなデーターのエンティティーのリレーションを確実に設計する必要があります。
  
  さらにもうひとつ(??)、行政のデジタル化を推進するのは、会計検査院の検査の仕組みを変える
  必要があります。
  行政がデジタル化されると、業務で発生したすべての記録が保存されているので、検査の効率性があがります。
  会計検査院の検査報告書には、不当事項、意見を表示しまたは処置を要求した事項などの、指摘事項が記載されます。
  本当にすべて検査したのか、すべて指摘したのかは確認のしようがありません。
  民間の会社の公認会計士による会計監査のように、
  「財政状態および経営成績を、すべての重要な点において適正に表示しているものと認める。」
  と記載する方法であれば、経営者は独立監査人が十分な監査証拠が得られたと判断するだけの十分な
  証拠を提出して無限定適正意見をもらわなければなりません。
  会計検査院は、いくつの事項を指摘したかが重要なのではなく、
  主権者である国民に対して、各々の省庁が、発生した事象を正確に報告していることを保証することが
  会計検査院の使命だと思います。
  統計データーの不正が起きると、会計データー、財務データーも正確に記録されているのかという
  疑いが生じます。
  日本政府の連結財務諸表を作成すると、資産より負債のほうが多い状態が継続しているので、
  民間企業なら、継続企業の前提に重要な不確実性が認められる状態です。
  国債を発行しているといっても、信用不信から長期金利が上昇する状態にはなっていないので、
  民間企業が借金づけになっているのとは違うような気がします。
  会計データー、財務データーが正確に記録されていることは、財政状態によらず、
  すべての基礎になる重要なことです。
     
  行政のデジタル化の恩恵を得るためには、大量のデーターの保存が容易で、解析・分析も容易という
  デジタルの特性を最大に活かさなければなりません。
  COCOAは絶滅危惧種になっていると思いこんでいたのですが、
  じつは最近ダウンロード数が激増で、COCOAログチェッカーが広く使われているそうです。
  似たようなアプリでも、少し機能が変わっただけで、少し使い方が変わっただけで、
  便利なアプリになり、利用者が増えます。利用者自身がどのような場面で使えば有効かを
  自然に考えて、アプリが広まります。
  マイナンバーカードも持っているだけでは意味がありません、便利に使えるカードになって、
  はじめて行政のデジタル化の恩恵を得ることができます。
  基本的な機能の問題ではなく、どのように利用するかをいろいろなケースについて考えることで、
  実現するでしょう。