列車ダイヤについて -- 3ー78 AIによる契約書の審査サービスを有効に活かすには
2022年6月15日
3ー78 AIによる契約書の審査サービスを有効に活かすには
企業の法務担当者の契約書チェック業務を支援する、「AI契約書審査」サービスがスタートアップ企業を
中心に徐々に広まっていますが、6月6日経産省は、「グレーゾーン解消制度」で求められた照会に対して、
こうしたサービスが「設計によっては法律に違反すると評価される可能性がある」という見解を公表して、
関係者の間で混乱もみられます。6月10日の日本経済新聞の社説でも取り上げられ、
「弁護士法72条に違反するのではないか」との懸念にたいし、政府が示した回答は、
「法的にクロに近いグレー」ということで、法曹会も揺れているそうです。
これらの事象にたいして、私はどう思うかというのが、今回のコラムです。
企業の法務担当者の仕事がどのようなものかは、具体的には知りませんが、
これらの報道をみて、個人的に思うことは、ふたつです。
政府は、早く判断する必要がある。
AIと人間が協力して契約書の審査サービスを行うのが良いと思います。
順番に述べます。
インターネットが爆発的に広がるきっかけとなった、アメリカの情報スーパーハイウェー構想では、
通信網の整備よりも、検索サイトで要約した情報を、リスト形式で表示することが、
著作権法の著作権者の許諾なしに複写できる場合に該当するかどうかなどの規定の作成に力をいれました。
サービスが広まってから、一般的に広く認められていることを法律として定めるという方法は、
デジタル化に馴染みません。
法律が変わって、いままで行っていた事業ができなくなることも企業にとって大きなリスクですが、
法律ができた時点で、過去の行為が遡及的に刑法犯として裁かれるおそれがあるというのは、
はるかに大きなリスクです。刑法は原則遡及適用はないので、本当に罪に問われることは基本ないでしょうが、
事業者にとっては、日本では当該事業をおこなわず、海外でおこなうことにすると判断するほどの
大きなリスクです。
法律を定める政治家がリスクを負わないために、あるいは、関連するIT技術が理解できないから、
法律の制定を遅らせるというのは、デジタル化を妨げるもっとも大きな障壁となるおそれがあります。
行政のデジタル化を進めるためには、まず国会が変わる必要があります。
デジタル化を業務に有効に活かすという面では、法曹会も一部を除いて、
あまり積極的でないのかもしれません。文書を解釈するAIが進歩しています。
法曹会も、国会で法律文書にミスがないかの審査などでも、もっと積極的に
デジタル技術を法律文書の審査に活かすべきだと思います。中小企業庁の持続化給付金の審査でも、
AIによる審査も併用して、迅速化し記録を残すべきでした。
AIによる審査がどれほどの品質かはわかりませんが、人間による審査の補助として使い、すべての審査を通じて、
どのような基準で承認したかの記録を残して公開すべきだと思います。
「AI契約書審査」以外の各種の分野でも、デジタル技術を業務の品質、生産性の向上に有効に活かす方法
について考えたことを述べます。
Google PlayでAndroidのアプリをリリースする場合、ベーターリリースを公開すると、
無料で自動のテストをしてくれます。アプリをバージョンアップした場合、人間はどうしても
変更した部分を中心にテストします。自動テストは、関係なく自動的にテストしてくれ、
予期せぬバグを見つけてくれることがあります。場合によっては、アプリがクラッシュするバグの場合も
あり、リリース前に修正します。人間と、IT技術、AIが協力すると、
業務の品質や生産性が上がる分野が多くあると思います。
公認会計士の財務諸表の監査でも、以前は、書面を郵送して売掛金の残高を確認するなど、
昭和の時代かというような方法をとっていましたが、数年前から、関係する企業の了解をえて、
帳簿の複製を監査法人が共有し、サンプリングではなく、全数検査するとか、異常な取引の
可能性があるものをAIで選び出すなど、業務がデジタル化しました。
大手の監査法人は、海外の監査法人と提携しているので、業務がデジタル化したのではないかと
思います。海外の会社の子会社の日本法人を監査したりすることがあるので、業務の進め方も
海外の方法を取り入れざるを得ないという面があったのではないかと思います。
日本公認会計士協会の委員会報告書というのがあって、会計基準の解釈や実務指針を提示しています。
これについては、発表されるのが遅いと感じます。会計基準の草案が出来た時点で、
システムを作る人などが参照できる、解釈をいち早く発表するか、あるいは、誰が考えても
当然と思うような基本的な事だけに限って発表するのが良いと思います。
会計基準の解釈の原則的な事象を発表すると、必ず例外があります。
例えば、商品の売上に関して、販売する側の責任で、消費者が使用する場所まで輸送し、
引き渡した時点で、売上の業務が完了するというのは、一般的には正しいでしょうが、
商品が鉄道車両の場合、車両製造メーカーがJR貨物に委託して、使用者が使用する場所まで、車両を
輸送した上で引き渡すという原則な方法もあります。一方で、使用する鉄道会社が大きな会社の場合、
車両製造メーカーから一番近い駅で受け取るという例もあります。例えば、JR西日本が山陰地方で使う車両を
新潟県のメーカーで製造した場合、過去には新潟県の駅で受け取って自分で山陰地方の車両基地まで運んだ
ことがあります。JR貨物が輸送する場合、甲種鉄道車両輸送という形態になり、事前の届けなどを含めて、
新しい車両の輸送は大変ですが、使用者であるJR西日本が自社線内を輸送する時は、配給輸送という
簡便な手続きで輸送することができます。
他の業種でも、業務の手順が委員会報告書と異なる場合、新しい会計士の人が来るたびに説明の必要があるという
ことがあります。
法律家、公認会計士、医師などの専門家の人数が少ないことがおよそ20年前、課題になりました。
司法試験や公認会計士試験の制度を変えて、専門家の数を増やす取り組みがありましたが、
結果的にあまり人数は増えませんでした。
公認会計士が税理士業務を行う場合の手続きも、むしろ規制が強まって、公認会計士事務所の人が、
知り合いの税務申告を業務として小規模で行うことはほとんどなくなりました。
一般の人が、専門家のサービスを気軽に利用できることが重要ですが、日本では、最近むしろ
不便になっているようです。「AI契約書審査」などのサービスを積極的に広めて、
専門家の増員が進まないのなら、デジタル技術を活用して、専門家の業務の効率を高めるのが
良いと思いますが、日本の政府はむしろこれらの取り組みを規制しているような印象を受けます。
自由に事業活動を行い、問題となったら裁判を行い、それに基づいて法律を決めるのでもなく、
あらかじめすべてをカバーするように体系的に法律を決めるのでもなく、
行政機関の基準や、業界団体のガイドラインをあたかも法律のように皆が守るというやり方は、
いろいろな部門の生産性を下げているように思います。
20世紀末、行政はデジタル技術と無縁でしたが、民間は、デジタル技術でかなり世界をリードしていました。
1990年代は、カーナビや携帯電話で、世界最新の製品を作っていました。
2000年代になって、あまり世界最新の製品が出なくなりました。
ソニーのPS/3に用いられたCPU、セル・ブロードバンド・エンジンは画期的なものでした。
ソニー、IBM、東芝が共同で開発したもので、PS/3のゲーム機だけでなく、
東芝の録画器で8番組同時録画などの機能を提供しました。
しかし、ゲームソフトのコーディングで、8つの画像処理プロセッサーを並行して使用して、
性能を上げるための処理などが高度で、あまりソフトが充実しませんでした。
また、消費電力の点で、モバイル機器に搭載できなかったこともあり、あまり広まりませんでした。
研究・開発を続けて、後継の製品をだすアプローチはとらず、PS/4では、AMDのCPUが使われました。
SuicaのIC乗車券も、それまでの磁気カード乗車券と比べて画期的でした。
オートチャージの機能もあり、券売機の使い方を忘れてしまうほど便利になりました。
最近、スマートフォンのモバイルスイカや、ウェアラブル端末のモバイルスイカも使えるようになり、
機能としては充実してます。しかし、これらを見て、画期的に便利になったとは感じません。
JR東日本で言えば、モバイルスイカ、えきねっと、JREポイントのシステム毎に、
ユーザーIDとパスワードを登録する必要があります。
Android携帯の場合、ウェアラブル端末のモバイルスイカでは、Suicaグリーン券が
購入できないなど、出来るかどうかよく調べなければなりません。
東京メトロと都営地下鉄の間には改札があって、バカの壁と呼ばれたことがあります。
モバイルIC乗車券が出てきた時、問題は解決するのではないかと思いました。
IT機器のネットワークカードには、MACアドレスという世界で唯一のアドレスがつけられています。
このような仕組みを利用して、ホームにつながる階段の入口などに、誰が通ったかを記録する仕組みを作れば、
運賃を計算することができ、入口と出口の改札機だけで判断するより、簡単で正確になるのではないかと思います。
売上の按分もITシステムで解決できそうな気がします。会社の資本関係は直接利用者には関係なく、
両社をひと駅づつ利用した時、運賃が高くなるなどの不便がなくなれば良いので、
IT技術で解決されるかと思いましたが、そうはなりませんでした。
デフレの時代に、全般に設備投資を抑制したことが、デジタル化の遅れを招いたのかもしれません。
中南米の人から、ハイパー・インフレで非常に困ったという話を聞いていたので、
1990年代、バブルがはじけて日本がデフレになった時、初めはそれほど大きな問題と思いませんでした。
しかし、30年にわたってデフレが続くというのは、世界史上、今の日本が始めてだそうです。
地球温暖化が問題になっています。大気の温度は、少しでも上昇するとまずいそうです。
貨幣の価値も、一定で変わらないのが良いかと思うのですが、実際はそうではなく、
2%程度のインフレで、少しづつ貨幣の価値が減少するのが良いそうです。
しかし、輸入する資源価格が上昇したり生鮮食料品の価格が上昇して、インフレ率が2%になっても、
良くないそうです。インフレで貨幣の価値が減少するのなら、政策金利を上げて安全資産の利子率を上げてくれても
良いような気がしますが、それも良くないそうです。投資するのが良いという人もいますが、
さらに資産が減少するリスクがあります。世の中悪いことばかりです。
インボイス制度・電子帳簿保存法が2023年から開始されます。これも手間が増えて良くないという
人がいます。消費税率を上げたのが良くない、一時的に5%に戻すべきだという人もいます。
実際、事業を営んでいる人には、そのような考えの人も多いようですが、私は、
一時的に消費税率を5%に戻すことには反対です。
中小の工場で、機械加工などをしている企業で、消費税率10%で購入した材料を加工して、
消費税率5%になった時点で、製品として販売すると、企業内のキャッシュが減ります。
消費税を納付する時点では、適正に処理すれば、キャッシュが増えるでしょうが、
中小事業者では、消費税の納付は、年1回のところや年2回のところが多くあります。
6ヶ月の間に、事業を継続するためのキャッシュがなくなってしまうかもしれません。
インボイス制度・電子帳簿保存法が開始されると、インボイスがないと、仕入税額控除できなくなるので、
免税事業者からは仕入れなくなる業者がでるので、
今まで免税事業者だった人も消費税課税事業者として届けなければなるといわれています。
利益が減るので大変です。一方で、新しく法人を設立した時は、免税事業者になることができることを
利用して、外形的に消費税を払うべきと思う事業者が、消費税を納税・納付していない例があります。
全体的にみると、インボイス制度・電子帳簿保存法を開始するのが妥当ではないかと思います。
免税事業者の問題が強調されていますが、居住用住宅の賃貸をする人のように、
非課税売上になるので、住宅の建築の時に払った仕入税額をいっさい控除できない人がいます。
輸出免税事業者のような0%課税売上との違いが、説明を聞いても釈然としません。
電子帳簿保存法については、デジタル化を進めて、必要な帳簿を簡単に保存できるようにしたり、
納付税額の計算が簡単にできるようにするのが良いと思います。
学校のコンピューター端末を悪用して、いじめに使われるという問題が発生しました。
情報機器の使い方を正しく指導する必要があります。ハサミも危険な使い方は可能なので、
正しく使うように指導する必要があります。情報機器も基本の考え方は同じです。
IT技術の匿名性という言葉がひとり歩きしている感じがしますが、
基本的に情報機器を使って操作したことはすべて記録されるという事を、まず教えるべきです。
その時誰が操作したかの記録が残らないのが問題だといわれましたが、
携帯端末は基本的に他人は操作しないことと、生体認証を組みあわせることで、
誰が、何処で、どういう操作をしたかが、すべて記録される状況にすることは可能です。
そのなかで個人情報を保護するためには、どのように運用するのが良いかを考えるべきです。
このようなデジタル技術の特性を、まず教える必要があります。
誰に教えるかというと、小学生に教えることも、将来のために重要です。
しかし、まず教えるべきは、帳票書類や行政機関が送信したメールを消去すれば、
永久に証拠を隠滅できると考えている、政治家や行政機関の人達です。
このようなIT技術を理解していない人、あるいは行政のデジタル化を望んでなくて、
行政がデジタル化されても、旧来の紙の書類を改ざんしたり破棄して、業務を行おうと
している人たちです。そうしなければ、行政のデジタル化により、サービスの
品質を向上することは不可能です。