列車ダイヤについて -- 3ー77 モバイル・エコシステムに関する競争評価 中間報告について考える
2022年6月10日
3ー77 モバイル・エコシステムに関する競争評価 中間報告について考える
4月26日に内閣官房デジタル市場競争本部事務局から、
「モバイル・エコシステムに関する競争評価 中間報告」が発表されました。
6月5日の朝日新聞の社説でもとりあげられてます。
スマートフォンの基本ソフトは、米アップルとグーグルの手に握られており、両社の寡占で
公正な競争が妨げられているおそれがあるとの評価を政府の有識者会議がまとめています。
今回のコラムは、これらを読んで、OS(オペレーティング・システム)について考えてみました。
参照するふたつの文書の要約ではありません。これらを読んで、個人的に考えてみたことです。
ほとんどのスマートフォンの基本ソフトは、米アップルの、iOSとグーグルのAndroidです。
マイクロソフトの、Surfaceなどは、異なるOSを使っています。
HUAWEI MatePad 11などのタブレットやスマートフォンは、HarmoneyOS 2という
独自のOSを使っています。Android用のかなり多くのアプリが稼働し、HUAWEIが
それまで使っていた、AndroidベースのEMUI OSのUIを引き継いだ形ですが、
OS自体はかなり異なります。
マイクロカーネルの部分を持つ、Zirconのカーネルをコアとして作られており、
グーグルのFuchsiaのOSと似たところがあります。
iOSや、AndroidのOSは、Linux,Unixベースの
モノリシックなカーネルをコアとして作られてます。
マイクロカーネルのOSとして、最初に販売されたのは、IBMのOS/2というPC用の
OSですが、稼働するアプリが少なくて、マイクロソフトの、Windowsに敗北しました。
Windows95などは、モノリシックなOSですが、WindowsNT以降の
Windows OSが、マイクロカーネルベースのOSです。
HUAWEIは、しばらくEMUIを使う予定だったらしいのですが、
米中貿易戦争で、AndroidベースのEMUIが使えなくなることを恐れて、
HarmoneyOS 2の開発を加速化させたそうです。
PC、スマートフォン、テレビ、自動車用のシステムの連携などが良く考えられているそうです。
中国製のスマートフォンなどは、iPhoneより安いので、今後、開発途上国などに、
開発援助と並行して広まっていくかもしれません。
現在は、ITの分野での分断というと、中国などで、
グーグルのネットワークの遮断などが話題になりますが、2030年頃には、
アメリカ系の、Windows、iOS、AndroidなどのOSを使う陣営と
HarmoneyOS 2を使う陣営との分断という形になるかもしれません。
中国は、自国内に数多くの利用者がいるという特殊な状況の国で、
世界的にも、人口でいえば、HarmoneyOS 2を使う陣営のほうが多くなるかもしれません。
HUAWEIのHarmoneyOS 2も、グーグルのFuchsiaも、
Zirconのカーネルをコアとして作られているように、たとえ対立する陣営となったとしても、
両者が技術的に深く関わっているのも面白い点です。
日本でもOSを開発するかというと、技術的に出来ないわけではありません。
PC用のDOSというOSを日本語化したこともあるし、スマートフォン以前の
携帯電話で使われていた、LinuxやSymbianベースのOSも独自開発でした。
しかしこれから新しいOSを開発してビジネス的に成り立つかというと、難しいと思います。
Windowsは非常に多く使われているOSですが、あまり好みではありません。
年賀状を書く時と確定申告の時しか使わない(動画編集とか、テレビ番組の保存にも使います)
からかもしれませんが、ほとんどの時間をソフトウェアのアップデートに使います。
Linuxのほうが、はるかにシンプルです。ただ、Linuxも毎年バージョンが上がるたびに
画期的だといわれますが、私が使うぶんには大差ありません??
Windows95がでたり、RedHat Linuxがでた頃は、PCのOSがすごく話題になっていましたが、
現在は、コンテナなどの技術のほうが、話題の中心なのかもしれません。
スマートフォンのOSが、iOSとAndroidで独占されているから、日本での
デジタル化が遅れたかというと、クラウドシステムで遅れたことのほうが影響が大きいように思います。
ITバブルが弾けた頃、アメリカの人が、蛇口をひねれば水が出る、コンセントにプラグを差し込めば
電気が来る、同じように、通信線をつなげば、だれでもコンピューターの能力を好きなだけ
使えるようになるといいました。「まさか」と思ったのですが、それほど広まるわけが無い
と思っていたインターネットが爆発的に広まったので、ひょっとしたら実現するかもしれないと
思いました。
世界で最初に販売されたノートパソコンは、
1989年に東芝が発売したDynabook J-3100SSです。1990年代は、
そのうち、ITの分野でも日本が世界一になるかもしれないと思ったこともありました。
その頃アップルは経営破綻するかもしれない状況でした。
iPhoneの静電容量方式タッチパネルの操作感が良かったというのもあるでしょうが、
クラウドシステムを使ったビジネスの進め方が上手かったように思います。
最近の日本のデジタル化の状況をみると、帯に短し、たすきに長し、という感覚のものがあります。
例えば、2011年に地上波のテレビがデジタル化されました。北関東に住んでいるのですが、
それまでは、関東広域のアナログ放送を受信することができました。
ところが、地上波のテレビがデジタル化されるとき、北関東は県域放送になりました。
運悪く県堺近くに住んでいるので、難視地域になりました。総務省の難視地域解消プロジェクトで
かなり良く受信できるようになったのですが、それほど良くなったわけではありません。
結局、台風でアンテナが壊れたので、光ファイバーのインターネット回線を使った
映像配信サービスと契約しました。月額、2,000円位です。
技術的に放送にノイズがはいるというような状況では、現状ではこの位だろうと思うことができます。
しかし、「なぜ、県域放送にするのだろう?」というような状況が満足できません。
難視地域解消プロジェクトでアンテナを立てるのなら、お金をくれればよかったと思います。
最初から、映像配信サービスと契約しました。
そして、映像配信サービスで最終的に満足できたかというと、そうではありません。
画像が途切れることがあって、受信機器をリセットすると直ります。
通常の電源のオン・オフではなく、リセットボタンを押して、Android TVのOSを
立ち上げなおすと直ります。2〜3週間するとまた、問題が発生します。
サポートセンターに問い合わせると、ルーターから、受信機器までのLANの接続を
確認してくださいと言います。他のアマゾンプライムビデオなどではまったく問題ないので、
そんなことはないというと、他のサービスの問い合わせには回答できないと言います。
受信機器は、電源のオンにすると、地上波などのテレビを受信するための
アプリが立ち上がります。Android TVのOSが立ち上がった状態で、
アプリを立ち上げる前の状態の画面にできません。ネットワークの設定などは、
Android TVについて検索するほうが、はるかに多くの情報がえられるのですが、
アプリの設定に関する情報は、検索してもあまりでてきません。
番組の録画についても不満があります。(不満が多いのは、個人の性格の問題かもしれません??)
HDDを接続して録画できるのですが、大きなHDDでも必ず一杯になります。
ディスクアレーは接続できません。保存したいものは、HDDから、PCのHDDにコピーします。
アプリの画面で、録画した番組の一覧はでてきますが、
これは保存しようと思うなどのマークをすることはできません。
フォールダーを作成して、自分がやりたいように区分して保存することもできません。
テレビの画面に、Android TVのOSがついた機器は販売されています。
受信機器と一体のサービスでなく、アプリだけを利用するサービスがあれば、便利です。
サービスの提供方法を限定して、各種の自社以外が関連する問い合わせが来るのを防ごうとしているのでしょうが、
使う者からみると不便です。
この「帯に短し、たすきに長し」というのが、行政・民間共に、現在の日本のITサービスに
共通する課題のように思います。
アメリカは、世界的にIT分野で大きなシェアを持っています。そして、自社や自国の利益が上がるように
ビジネスを進めます。開発途上国は、あるがままにサービスをとりいれます。
日本では、独自のサービスも数多くあるのですが、アメリカのサービスとの連携が悪くて、
場合によっては、開発途上国より不便な点があるという状況になっています。
行政のデジタル化を推進するにあたり、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」を
進めるそうですが、疑問があります。
誰一人取り残されない、デジタル・システムを作ろうとしたら、いくらお金があっても不可能です。
1億回使うプログラムも、1回しか使わないプログラムも開発に要する時間はそれほど変わりません。
あらゆる状況に対応するプログラムを作るのは、効率的な方法ではありません。
デジタル化を推進する時、誰一人取り残されない、行政システムにするために、
組織の体制、システムの構成をどのようにするかを、
利用者の視点で考える必要があります。
総務省の視点で、地上波のテレビのデジタル化を進める、自社から受信機器を配布して、
利用料の他に機器の料金も得られるようにして、かつ問い合わせの内容が限定されるようにするという
サービスを提供する側の視点で事業を進めると、
結局利用者の不満がたまり、効率的な事業を推進できないことになります。
2007年から2008年にかけて、本命の家電は3Dテレビでした。しかし、実際、
爆発的に売れるようになったのは、iPhoneでした。
テレビこそが家電の王様という過去の発想で作ったか、どのような製品とサービスを
組み合わせれば利用者に便利かという発想で作ったかの差だと思います。
経営破綻するかもしれない状況だった、アップルが大復活したように、
10年20年のうちに、日本のIT企業が大復活する可能性はあります。
しかし、例えば通信販売でも、地道な努力が大きな違いを生みます。
自前の倉庫を持つかどうかのような大きな設備投資も大事ですが、
どの時点で商品の引当をするかも大きな問題です。カートに入れた時点にするか、
決済を終えた時点にするかです。カートに入れていたのに在庫切れで決済できなかったというのも
困りますが、悪意が無い人でもカートに入れたまま他の仕事を始めて、在庫があるのに
販売できないというのも困ります。多くのデーターを集めて商品ごとの在庫数などにより最適な
バランスを図るというような、一見日本の企業のお家芸と思われるような事を、
アメリカの企業が日本から学んで地道に行っています。日本の企業のなかに学ぶことをやめて、
自社の都合のみを考えた、費用の削減や設備投資の抑制をおこなっている例があります。
どうすれば、日本のデジタル化が推進されるかは、なかなかわかりません。(私が簡単にわかることなら
すでに出来ています)
地上波のテレビがデジタル化されるとき、北関東は県域放送になった時、私は長崎新幹線のことを
思い出しました。くわしくは知りませんが、長崎新幹線は、全国新幹線鉄道整備法に基づく順位でいえば、
それほど上位の建設順位ではありませんでした。原子力船「むつ」が放射能漏れ事故をおこし、
青森県の港を母港とすることができなくなり、急遽探していた時、佐世保が受け入れました。
その引き受けの条件が長崎新幹線で、最初は佐世保を経由するルートだったけれど、
その後、「むつ」が廃船になり、福岡(博多)と長崎を最短ルートで結ぶ形になったそうです。
計画の始まりが、利用者の視点で需要があるということでなく、原子力船の問題を解決したいという
行政側の視点であったことが、問題の始まりだと思います。
地上波テレビのデジタル化をこれほどお金をかけて行う必要があるのかと問題になった時、
北関東で県域放送が始まるなどの、地域に根ざしたサービスによる利便性の向上があるということで、
北関東での県域放送がはじまりました。
実際テレビを見ていると、広域放送でも県域放送でもどっちでも良いように思います。
むしろ、インターネットが広まった時代では、自分が見たい放送が選べないということを不便に感じます。
ラジコプレミアムのようなサービスは、有料でも良いからあって当然のサービスのように感じます。
どうすれば、日本のデジタル化が推進されるかですが、
観光地としての魅力 で日本が初の世界1位になったので、OSやクラウドサービスは諦めて、
「翻訳こんにゃく」を使って、いかに質の高いサービスが提供できるかを考えてみるのが
良いかもしれません。(本当かどうか知りません??)
日本は安全な国で、不当に身柄を拘束されたり、銃撃事件にあったりすることはほとんど無いだろう
というのは重要な点です。他の国が簡単に真似できることではありません。
自由にスパイ活動ができるというのは、何とかして防がなければなりません。
海外の人が日本語の案内を見ても、理解できない人がほとんどです。
しかし、現在は、携帯端末で写せば、翻訳してくれるツールがあります。
QRコードを読んで、外国語のサイトが表示できるのと、日本語の手書きのポップを
自動翻訳するのと、正確性、内容をアップデートした時の更新の迅速性などの観点から
最適な方法を考えてみる必要があります。会話も自動翻訳でかなりのレベルですが万能ではありません。
了解を得た上で、サービスと引き換えに、どこでどのような問い合わせをしたかのどの情報を
個人情報は保護した上で収集し、観光施設のサービス提供向上のための分析に
使うなどが可能です。AIがいろいろな分野で利用されるようになっています。
多言語翻訳は、観光で使えば、今まではどうしても不可能だったことが、
翌日から可能になるような可能性のある分野です。
IT技術をいかに上手に利用するかを考えると、
利用者視点に立った、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」が推進できるかもしれません。