列車ダイヤについて --  3ー55 トップダウンが良いか、ボトムアップが良いか?

                                      2021年10月20日  

    3ー55 トップダウンが良いか、ボトムアップが良いか?

  
  トップダウンが良いか、ボトムアップが良いか? 正解は簡単だと思います。
  一概にどちらが良いとは言えないが正解だと思います。
  
  欧米はトップダウンで、日本はボトムアップ、と言われることがありますが、
  一概にそうとは言えないと、思います。
  
  日本や欧米のビジネス・スクールなどでも、
  共創社会が話題になっています。
  co creative society 、共同創造の社会です。競争社会ではありません。
  
  トップダウンか、ボトムアップかに関連して、共創社会について考えてみるというのが、今回のコラムです。
  
  まず鉄道のダイヤについて考えてみます。
  相当トップダウンです。その日の気分で、勝手に停車駅を増やしたり、行き先を変えると全体が混乱します。
  東北新幹線の運行管理は、JR東日本のCOSMOSのシステムで行なっています。
  北海道新幹線は、JR北海道のCYGNUSのシステム、秋田新幹線や貨物列車は、
  PRC(Programable Route Control)のシステムで運行管理を行なっています。
  
  何かの支障で全体のダイヤが混乱した時、まず、JR東日本のCOSMOSのセンターで、ダイヤ回復の大枠を決め、
  各司令センターは、それに基づいて、ダイヤを調整し回復します。
  
  COSMOSのセンターにジャイアンのような人が居るからではなく、皆がこの方法が合理的だと考えているからです。
  
  東京近郊に住んでいる人なら、湘南新宿ラインはよく止まると思っている人が多くいます。色々な線区をまたいで
  走っているので、ダイヤが混乱した時、まず直通列車を止めることがあります。
  
  東京メトロ副都心線のように、東急、東武、西武の各社と相互直通運転を行なっている場合、
  ダイヤが混乱した時、どこかの会社が全体像を勝手に決めれば良いというものではありません。
  実際は、相互直通運転を中止し、各社毎にダイヤの回復処理をすることになります。
  利用者から見ると、会社の境目の駅で乗り換える手間が発生するので、列車遅延による混雑に拍車がかかります。
  運行管理の面から見ると、翌日、通常ダイヤで動いていても、通常とは異なる会社の電車で運転されていて、
  どこかで本来の状態に戻さなければならないということがあります。
  
  もし、全体を見渡して、即座に最適な解を見つけるようなシステムがあれば状態は変わるでしょうが、
  現在そのようなシステムは存在しません。近い将来状況が一変するかもしれません。
  量子コンピューター(量子アニーリング方式)を使って、列車ダイヤ作成を高速化する試みが話題になっています。
  列車ダイヤを基に、車両の運用のダイヤを作成したり、乗務員の仕業のダイヤを作成しているようですが、
  ダイヤが混乱した時の回復ダイヤについてもいずれ応用され、超高速で回復ダイヤの候補を作成できるようになるかもしれません。
  また、ダイヤが混乱した時、いくらでも列車を車庫に収容できるわけではありません。近くの空き地に臨時に置いておくこともできないので、
  列車の運行管理は、現在、列車がどこにいるかという在線情報を常に把握することが基本中の基本になります。
  現状では、本線を運転する列車と、車両基地に留めてある列車の在線情報は別々に管理している会社のほうが多いです。
  統一してすべての列車の在線情報をリアルタイムで管理するという、現在のシステムでも出来そうなことを
  実行することが、将来の運行管理に繋がります。
  超電導量子回路が必要な量子コンピューターは、10年20年先に現れる、現在のクラシック・コンピューターを置き換える、
  次元が異なる物のようなイメージでしたが、常温・常圧で動作する量子アニーリング方式に近い動作をするシステムも作られ、
  プログラミングのためのライブラリーも備わってきて、2−3年の内に、現行のコンピューターと併存するかたちで
  量子コンピューターが産業の色々な分野で幅広く使用されるようになりそうです。  
  
  共創社会を考える時、日本国内の状況と合わせて、世界の各国の共創を考えなければなりません。
  日本のクルマが世界中で走っていますから、日本は輸出立国で技術や製品を世界中に広めているというように
  語られた時代がありました。
  しかし、実際はクルマを除いてはそれほど広まっていません。
  
  住宅地図や乗り換え案内ソフトや宅配便など、日本人は日本が最高だと思っていて、それが事実かも
  しれない物も、日本の製品が世界に広まっているものはわずかです。
  Googleマップには、日本のグーグル合同会社の人のアイディアが随分取り入れられていると聞いたことが
  ありますし、日本の携帯電話会社でも、携帯電話の技術部門のリーダーが外国人という会社もあります。
  ですから、共創社会を世界レベルで考える時、日本の企業の製品を海外に輸出するかたちにこだわる必要はありません。
  一方で、日本人の特徴が世界レベルの技術の発展に有効に活かされていない面もあると思います。
  過去に、電卓と電話の数字のキーの配置を統一しようという動きがありました。
  日本人が超高速で電卓を打つのを見たことで、統一は無理という方向に傾きました。
  当時は、日本人の技術の象徴のように語られる場合もありましたが、
  現在まで含めた長い目でみると、配置を統一したほうが良かったのではないかと思います。
  
  アメリカがメートル法ではなく、現在でもヤード・ポンド法を用いていることを実は後悔しているかもしれないので、
  日本の電卓の例も世界のどこでもあることかもしれません。しかし、過去にはキーボード入力の速度を競い、
  現在はスマホのフリック入力の速度を競っている人を見ると、やはり技術の進歩を妨げているのではないかと思います。
  「誰一人取り残さない」をスローガンにすると言って、超高速で入力できることを自慢している人をみると、
  素人でも使いやすい携帯端末や、老眼の人にも使いやすい携帯端末がなかなか出来ない原因になっているように思います。 
  
  
  さらに、デジタル技術との共創を考えます。
  天気予報の精度の高さや、気象予報士の人のレベルの高さをみると、日本の天気予報は世界最高だと思います。
  一方で、真鍋淑郎博士は、日本では十分に気象現象の数値解析ができる環境が得られず、アメリカに行かれたそうです。
  
  BDE(偏微分方程式)を、有限要素法や有限差分法で解く方法にかわって、AIで解く方法の一つとして、
  FNO(Fouries Neural Operator)を利用する方法が
  カリフォルニア工科大学から発表され話題になりました。
  フーリエ変換は昔から行われている方法で、カリフォルニア工科大学の研究成果も基本的な部分が
  オープン・ソースで開示されているので、日本でも同じようなことをしている人は多くいるのだと
  思いますが、日本でもアメリカの研究のほうがよく話題になるようです。
  
  デジタル技術との共創について、日本国内での状況を見てみます。
  
  過去に、工事途中の戸建て住宅を完成したようにごまかして、会計の期間帰属に関わる不正を行なった企業がありました。
  すでに居住している家の居住者に頼み込んで、公認会計士の監査がある期間だけ、表札を付け替えてもらったりしたそうです。
  会計の期間帰属に関わる不正の場合、最初の年は、来年になれば問題なくなることだからと思うのですが、
  多くの場合、翌年度はマイナスからのスタートになるので、さらに大規模の不正が必要になります。
  この時、もし親会社がこの会社の工事の進捗状況を把握できるシステムがあったら、この不正は起きなかった
  といわれました。公認会計士は、会計の専門家ですが、戸建住宅を建てたことはありません。
  親会社の人も戸建て住宅建設のプロですから、建築の進行状況を見ることができれば、
  現地に行かなくてもすぐにわかったはずだと言われました。
  いろいろな立場のステークホールダーが、リアルタイムで現状を把握できるようになるのが
  デジタル化の利点です。
  
  その観点では、コロナウィルス感染症の感染状況はなかなか明らかになりません。
  行政検査による新規感染者の数は、毎日発表されます。
  一例として、天気予報が当たったかどうかを判定するには、単純化した例で説明すると、
  晴れと予想して、結果が晴れだったか雨だったかと
  実際に晴れだった時に、予想が晴れだったか雨だったかというように、予想する側と、
  結果の側の両方向からみて、4つの場合の確率を計算しなければならないと言われます。
  感染状況では、自覚症状がある、あるいは濃厚接触者になったなど、
  感染しているかもしれないと予測した人のなかでの実際の感染者だけが発表されます。
  
  仮に、1日の行政検査数が10万件だったとして、陽性率が20%だったとすると、その日の
  全国の新規陽性者数は、2万人になります。
  しかし、検査していない人が1億人以上いますから、仮に陽性率が、0.02%(1万人あたり、2人)
  だとしても、1億人のなかには、2万人の感染者がいます。
  他人に感染させるという面では、どちらの2万人も同じかもしれません。
  PCR検査の充実は、2年間ずっと話題になっていますが、いつまでたっても実現しません。
  検査容量の問題なのか、できれば検査を受けたくないという事情があるのか、なにも明らかになりません。
  濃厚接触者になって、検査を受けたいのに、検査を受けられないという状況は、
  明らかに検査する側の問題なので、ただちに解決しなければなりません。
  しかし、次の波に備えるという観点からは、
  潜伏期間が2週間あることを考えると、何を先行指標とするのか、
  対策が後手に回るのをどうやって防ぐかを考えなければなりません。
  
  行政検査を受けた人のうち、発熱があったから受けた、濃厚接触者に認定されたから受けたなどの理由別の
  陽性率のように、簡単に統計情報が得られそうな情報すら、2年経っても公表されません。
  行政検査以外の民間検査の情報も明らかになりません。
  東京オリンピック・パラリンピックで行われた、PCR検査は、感染者をほぼすべて見つけるレベルの検査を
  やったという観点で貴重なデーターだと思いますが、誰か分析しているのでしょうか。
  単に統計情報を収集するための技術的な問題なのか、個人情報保護などの法律的な制限なのか、
  誰かが意図的に隠しているのか、マスコミも何も追求しません。
  一時的に不都合な真実を隠蔽できたと考えている人が居たら、完全に間違えた考え方をしています。
  いつか、行政が発表するすべての統計情報を誰も信用しなくなってから、信用をとり戻すことは不可能です。
  世界全体を見れば、政府が発表する統計情報を誰も信用して居ない国はたくさんあります。
  コロナウィルス感染症の感染状況の予測が当たらないことについて、SEIRモデルの予測の精度はこれ位なのか、
  それとも、出入国の検疫なども含めて、予測のための現状の確認ができていないのか、
  専門家も各自の見解を発表する段階にきていると思います。
  地震予知をするための研究が長期間行われましたが、東日本大震災を予知することができなかったことで、
  方針を修正して地震観測活動に重点を移して活動が行われています。
  マスコミも、気象予報士の人は批判できても感染症の専門家は批判できないとしたら、それは問題です。
  不都合な真実を批判的に報道する姿勢をマスコミが失うと、
  玉石混淆の口コミのなかから、自分に都合の良い情報だけを信用する人が増える恐れがあります。
  
  コロナウィルス感染症では、病床の不足も大きな問題になりました。
  「幽霊病床」の実態を調査するそうです。重要なことです。犯人探しが大事なのではなく、
  実態を明らかにすることが大事です。
  例えば、中等症の患者を受け入れるとして、実際に受け入れたとします。
  その患者が重症になって、転院先がなければ、追い出すわけにはいかないので、
  治療を続けますが、必要なスタッフの数が大幅に増えることがあります。
  ベッドが空いていても、中等症の患者の受け入れを中断せざるを得ないかもしれません。
  次の波に備えて、病床の使用状況と、患者の状況をリアルタイムで把握するシステムを
  作る必要があります。
  
  それから、COCOAのアプリがどのように役立ったのかの実績を本当に発表して欲しいと思います。
  携帯のアプリは、OSのメジャーアップデートが毎年ありますから、
  使い続ける限り、毎年新規の機能検証が必要で、お金がかかります。
  COCOAのアプリがとくに良くない(?)からというのではなく、すべてのアプリについて、
  有用性の検証を毎年行い、有用性が確認できなかったアプリは、使用をやめるしくみが必要です。
  行政がデジタル化されることで、従来にはなかった仕組みが必要になります。
 
  共創社会において、デジタル技術が担う役割として、超高速で何かをできることが重要だと思います。
  人の気持ちを理解するとか、外交の駆け引きとか、デジタルでは処理できない事がたくさんあります。
  しかし、人間でもできるけれど、デジタルのほうが、超高速で処理できることもたくさんあります。
  超高速でリアルタイムで処理できると何が良いでしょうか。
   
  何か都合の悪い事でも、目の前でリアルタイムで全体の状況が把握できれば、専門家の人を中心として、
  良心に従って行動する人がたくさん居ます。何ヶ月か経ってから、事実が明らかになり、しかも
  事実の一部が、誰かによって自分に都合が悪い方向に糊塗されているとすると、
  事実を隠蔽したり、自分の責任ではなく他人の責任だと虚偽の発言をすることにつながります。
   
  行政に限らず、デジタルトランスフォーメーションは益々重要になります。
  人間とデジタル機器の役割の分担も大切ですし、
  デジタル化の前提となる法律や種々の規則が、十分な議論に基づいて誰にでも納得できるかたちで制定され、
  内容や解釈が公開されていることが重要になります。