列車ダイヤについて -- 3ー48 何のために緊急事態宣言を出すのか
2021年9月10日
3ー48 何のために緊急事態宣言を出すのか
9月12日に解除の予定だった、コロナ感染症の緊急事態宣言が延長されることが決まりました。
「何のために緊急事態宣言を出すのか」というタイトルですが、決して、緊急事態宣言を出すなとは言っていません。
緊急事態宣言を出すのなら、現状がどうなっていて、それをどのようにするために緊急事態宣言を出すのかを
はっきりした上で、緊急事態宣言を出すべきだというのが、今回のコラムです。
今回の、緊急事態宣言の延長では、医療体制が逼迫していることが、理由になっています。
それなら、自然災害の後、激甚災害に指定して、通常なら地方自体が行う活動について、国が支出して行うように、
医療体制の拡充を国の予算で行うような具体的な活動の内容を明らかにすべきです。
緊急事態宣言を延長するので、マスクの着用と人流の削減に努めてくださいでは、対策になっていません。
まず、守る人はすでに守っているし、守っていない人の行動は変わりません。
また、仮にマスクの着用と人流の削減が進んだとしても、それにより新規感染者の数が減るまでに2週間近くかかります。
重傷者の数が減少するのは、それからさらに2週間近く経ってからです。
緊急事態宣言をさらに1ヶ月以上延長しようとしているのか、いつまでに何をしようとしているのかが、明らかになりません。
コロナ感染症は、最初中国で感染が広まり、2020年1月23日に、武漢でロックダウンが行われました。
それまでの状況を説明します。
中国では、感染状況の分析をふたつの方法で行いました。
ひとつは、SEIRモデル(Susceptible−exposed−infected−removal epidemical model)
による分析です。感染症の分析でよく用いられるモデルで、
全人口を、免疫を持っていない人(Susceptible)、感染が潜伏期間中の人(exposed)、発症した人(Infectious)、
回復した人(recovered)に分類する,感染症が順番に人に伝染していく過程を数式にしたものです。
潜伏期間中の人を考慮しない、SIRモデルは、SNSでの情報の拡散のモデルとしても使われます。
中国では、SEIRモデルに地域をまたぐ人の移動を加味した、Modified dynamic SEIRモデルを用いて、各地の
感染状況の予測を行いました。その時点ではワクチンはまだ無かったので、ワクチンの影響は考慮していません。
ふたつめは、AIのLSTM(Long−Short−Term−Memory)モデルを用いた解析で、時系列データーを予測するための、
Regressionモデルとして一般的に用いられる手法です。
訓練用のデーターとして、2003年のSARS感染の時のデーターを用いました。
適用にあたって、訓練用のデーターがそれほど多くなかったので、オーバートレーニングを防止するためにモデルのサイズがそれ程大きく
ないものを使い、Gradient Vanishing「勾配消滅」が起きていないことの確認などを行いました。
さらに、計算はTensorFlowを用いKerasのモデルを使用しました。 optimizerとして、
SDG(Stochastic Gradient Descent)やRMS(Root Mean Square)、
Adam(RMSPropとMomentumを合わせたイメージのもの)なども実際の計算を行なった上で、比較し、
Adam optimizerを用いた最も良いモデルの結果が、SEIRモデルの結果と十分に一致することを確認しました。
さらに、ロックダウンを開始する日付を5日ごとにずらして、その後の感染状況を予測しました。
実際にロックダウンをおこなうための準備状況を合わせて検討し、1月23日にロックダウンを開始しました。
その時点で、感染が2月末にピークアウトし、4月末に一旦収束することを予測していました。
これらの過程を英語で記載したレポートが、2月末には、インターネット上で誰でも閲覧できる状態になっていました。
4月に、日本でも緊急事態を発出することになった時、専門家は、感染のピークを後ろにずらすイメージ図や、
人の接触を8割削減するイメージ図などを発表しました。ずいぶんあいまいな表現で、予測がはずれることを
恐れているのかと思いました。突然2020年4月15日に、重篤患者が約85万人に上り、半数が亡くなる恐れがあるとの試算
が発表されました。政治家の圧力がかかっているのかと思いました。
それから、1年半経って、日本では誰も正確な現状把握や予測をしていないのではないかと思うようになりました。
本当に誰ひとり行なっていないということはないと思いますが、
各都道府県の、新規感染者数の予測を、4週間先まで、毎日公表しているのは、
Googleの都道府県別コロナ予測「COVID−19感染予測(日本版)」だけです。
やろうと思えば誰でも出来ることだというのと、実際に行なっているというのでは、雲泥の差があります。
例えば、天気予報は、たとえ外れることがあっても、毎日予報が出されることに大きな意味があります。
(あくまで個人的見解で、気象庁などの公式な見解ではありません)
過去に、日本が戦争を行なった期間、天気予報が発表されないことがありました。その時、
毎日発表するものだったので、発表しなくなったことを隠す手段がありませんでした。
もし、天気予報が、台風が来た時などに限定して発表されるものだったら、
翌年に実際に台風が来た時、何も情報が提供されず、被害がさらに大きくなったと思います。
7月20日頃、緊急事態宣言の発出の前に、色々な人が、東京都のコロナ感染者の予測を発表しました。
それは良いことなのですが、何かあった時だけでなく、
各都道府県の、新規感染者数の予測を、4週間先まで、毎日公表することには、大きな意味があります。
実際に患者の治療をおこなっている医療関係者のレベルは高いと思います。
一般の人の公衆衛生についても、緊急事態宣言下に、音楽フェスを行なって、アルコール飲料を販売
したり、金メダルをかじったりする、極一部の人を除けば世界的にはレベルが高いと思います。
しかし、全国的な現状を把握したり、将来の感染状況を予測をした上で、政策を決める能力は、
デジタル化の遅れもあり、先進国のなかではレベルが低い部類だと思います。
緊急事態宣言下であっても、都道府県堺をまたぐ移動の承認を検討する一方で、
全国的に不要不急の外出の自粛を求めるというのでは、何をしようとしているのか理解できません。
緊急事態宣言下に、音楽フェスを行なって、アルコール飲料を販売するような、
誰が考えても不適切な行為を強制的に防ぐ手段もなければ、刑事罰を与える手段も、
売上を没収するような手段もありません。
十分な対策をおこなって、音楽フェスを実施しようとしている他の業者が、迷惑を受けます。
Zeroコロナの時代から、Withコロナの時代に移行するに従って、
感染状況を正確に分析・予測し、どのような経済活動が、どのような理由で許容されるのかを
誰もが納得できるかたちで説明することがますます重要になります。
仮にワクチン接種を終えた人は、都道府県堺をまたぐ移動やアルコールの飲酒が認められるとします。
現状で、12歳未満の人は、ワクチン接種を受けることができません。
ビジネスで出張する人は、自由に移動できて、アルコールの飲酒も認められるが、
子供づれの旅行は自粛しなければならないとして、社会的な理解が得られるでしょうか?
デジタル化の推進と合わせて、感染収束までの予測と対策を考え、
必要な立法措置と予算措置を急ぐ必要があります。そして、方針を本当に丁寧に説明して、議論をつくして、
すべての人が納得したうえで、対策に参加できる環境を作る必要があります。
繰り返し緊急事態宣言を出しているだけでは、救えるはずの命が救えないという最悪の事態も想定され、
経済再開の見通しも立たないことになります。