列車ダイヤについて --  3−33 VRSと、QRコードの話

                                      2021年4月30日  

    3−33 VRSと、QRコードの話 

  まず、タイトルの、VRSと、QRコードですが、
  VRSは、ワクチン接種記録システム (VRS:Vaccination Record System)
  で、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室が中心となって開発したシステムです。
  
  QRコード(Quick Responseコード)は、デンソーの開発部門(現在は分社化してデンソーウェーブ)が発明した
  マトリックス型二次元コードで、二次元バーコードと呼ばれることも有ります。
  
  新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種会場で、タブレット端末による、QRコードの読み込みができないという
  問題が起きているそうです。
  
  日本で開発された技術を、使いこなすことができないという稚拙な問題がなぜ起きるのだろう?というのが、今回のコラムです。
  
  QRコードはいろいろなところで利用されています。バーコードより情報の量が多いのが特徴です。
  その中でも少し変わった使い方で、さすが日本の技術はすごいという例をひとつあげます。
  
  都営浅草線で使われている、列車によってホームドアの開け方を変えるための仕組みです。
  例えば、京急の快速特急に使われている、車両の片側に、ふたつしかドアのない車両がきても、
  車両にあわせて、ドアのあるところだけ、ホームドアが開きます。
  最初、ホームドアの開け方を変えるためにQRコードを使うという話を聞いた時、
  ホームドアの戸袋の部分の列車側に、QRコードリーダーがついたような仕組みを想像したのですが、
  実際に大門駅に見に行ったところ、想像していたものとは異なりました。
  
  読み取りは、天井から吊るした2台のカメラのようなスキャナーで行っています。
  かなり斜め上方向から読むし、駅によって天井の高さや、明るさなどの条件が異なるので、駅ごとの調整が必要になりそうですが、
  いろいろ試してこの方法が一番良いということになったのだと思います。
  さらに、車両のドアにQRコードを貼っておくと、ドアの開閉も検出することができます。
  その、車両のドアのガラスの部分に張ってあるQRコードも、アラインメントパターンが無いものでした。
  アラインメントパターンは、通常、白抜きの3つある四角が無い角の近くの模様のなかにあります。
  QRコードにも情報量の違いで、「モデル1」と「モデル2」があり、小さなところに貼ることができる「マイクロQR」
  もあります。それなら、「マクロQR」と言いたくなるような、大きなQRコードですが、情報量はそれほど多くなさそうです。
  
  大門駅では、6号車と8号車のあたりに読み取り装置がありました。各々の場所に
  天井から吊るした2台のカメラのようなスキャナーが設置されています。
  列車のドアが開いたのに、ホームドアが開かなかったら、降りてきた人がぶつかりますし、ホームから落ちる事故になる恐れも有ります。
  列車がいないときにホームドアだけが開くのも、同様に危険です。
  
  一般には、電車が止まると、まずホームドアが開いて続いて電車のドアが開くのですが、このシステムでは、
  まず電車のドアが開いて、すぐに続いてホームドアが開きます。ドアに貼ったQRコードにより、電車が止まったことと、
  ドアが開いたことを検出して、ホームドアは自動で開きます。扉が閉まる時は、電車の扉が閉まって、すぐに続いて
  ホームドアが閉まります。人間が操作するのは、電車のドアの開閉だけです。回送電車は、電車のドアが開かないので
  ホームドアも開きません。電車を降りてきた人が、ホームドアにぶつかったり、発車間際、電車に乗ろうとした人が、
  ホームドアと電車の間に取り残されるのではないかと思いますが、見ていてそのようなことはありませんでした。
  人間がホームドアを開け締めする必要がないので、ドアの数が異なる車両が来る駅だけでなく、
  広くいろいろな線区で使われるのではないかと思います。
  
  タブレット端末で、QRコードを読むのなら、時には読み直しが必要でも構いませんが、
  ホームドアの場合は、絶対に確実に読み取らなければなりません。
  しかも、読み取り精度だけでなく、人間のドアの操作の簡略化や、回送電車に対する対応など、
  実際に業務中に起きることを、詳細に検討して、システムが作られているのは、さすがです。
  
  QRコードの特許は誰でも無料で使うことができるそうですが、そのなかでも技術がすぐれていることで、
  最初に開発したメーカーが優位を保つことができるという、理想的な形態です。
  
  
  それに比べると、VRSの事例は、あまりにお粗末です。
  タブレット端末のカメラは、携帯端末のカメラほど利用されることが少ないので、解像度が低いものがあることは
  ほとんどの人が知っています。IT技術が不足していたというより、誰でもわかっていることが、なぜか開発組織のなかで、
  改められず、結果的に問題を起こすことになったという組織の問題のように感じられます。
  昨年の、中小企業庁による、持続化給付金の支給の業務も、業務発注の過程に不明な点があり、支給もなかなかスムーズにいきませんでした。
  
  
  一部の市町村で、QRコードリーダーをUSB接続して使うシステムを独自に開発し、ワクチン接種会場で使っていて、
  順調に稼働しているそうです。中央省庁の人は、法律の原案を作ったりするのは得意でも、ワクチン接種会場などの運営は
  一度も経験したことが無いので、システム開発に向いていないのかもしれません。
  IT技術、アプリ開発の知識・経験がないことも良いことではありませんが、一度も経験したことが無い業務をおこなう
  ためのアプリを開発するのは無理です。
  IT企業の人は、どのプラットフォームが得意とか、どのプログラミング言語が得意とかで、人選が決まることが多いので、
  例えば会計システム作るからといって、必ずしも、財務諸表を自分で作ることができるような人が、担当するわけではありません。
  開発を発注する側に、業務に関する知識・経験が必要です。
  
  業務の実態がよくわかった、地方自治体が発注の主体となり、デジタル庁のデジタル技術に詳しい人が、ITの専門家として
  アドバイスするという形態のほうが良いのかもしれません。
  
  民間企業でも、ビジネスの遂行に、デジタル技術に関する考察が必要になる場面が増えそうです。
  オンライン飲み会は、今ではほとんど聞かれなくなりましたが、オンライン会議は、アフターコロナになっても
  広まりそうです。最近のことですが、わざわざワシントンD.C.まで行って、製薬会社の社長に電話しなくても、
  日本からどんどん電話すればよいのにと思ったことが有ります。
  
  リモート会議の場合、中国では、ネットワークが遮断されたり、リモート会議システムのツールが異なる場合があります。
  使用する、デジタル技術に関する考察が必要になります。
    
    
  予防接種台帳に係る事項については、各自治体と、厚生労働省健康局健康課予防接種室で管理されているので、
  組織の縦割りの問題があるのかもしれません。厚労省は、新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」に不具合に関して、
  厚労省側にアプリ開発の知識・経験、人員体制が不足していたことが原因とする、報告書が出されました。
  内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室についても、VRSの不具合について反省すると、
  もしかすると、次からは良いシステムができるようになるかもしれません。
  
  2022年度から高校の情報科でプログラミング学習が必修化されます。
  高等学校情報科「情報Ⅰ」の教科書を一般に販売して、
  希望する人は誰でもオンライン教育が受けられるようにすれば、日本のデジタル化が進むかもしれません。