列車ダイヤについて -- 3−30 モビリティー・エコシステムと鉄道の話
2021年2月7日
3−30 モビリティー・エコシステムと鉄道の話
Suicaのような、ICカード乗車券は、広く使われており、切符を買う必要がないので、便利です。
一方、不便な点として、よく取り上げられるのが、会社をまたいで使用できないことです。
JR鹿島線でも2020年3月から、Suicaが使えるようになりました。
さらに、2020年7月からは、鹿島サッカースタジアム駅でも、利用可能になりました。
しかし、ここで、鹿島臨海鉄道(第三セクター鉄道)が、Suicaに対応していないことが
問題になります。
鹿島サッカースタジアム駅は、JR東日本の駅です。
鹿島サッカースタジアム駅の荒野台駅側の地点が、JR東日本と鹿島臨海鉄道の管理境界点になります。
JR千葉、成田、鹿島神宮方面からの利用者は、Suicaをタッチして出場できます。
しかし、水戸方面からの場合は使用できません。
仮に、常磐線の勝田の駅から入場して、水戸で鹿島臨海鉄道に乗り換えた人が、
Suicaをタッチして出場した場合、常磐線〜鹿島線(我孫子・成田・佐原)経由での運賃計算となり、
本来の運賃、1、589円のところを、3、080円引き落とされてしまいます。
Suicaのシステムから、誰が、どのルートを利用したかの情報を得ることは、
乗り換え改札口が無い限りできません。
しかし、誰がどこを移動しているかの記録は、ナビゲーションのアプリなどで簡単に
記録することができます。
エコシステムとは、もともと「生態系」の意味で、ビジネスでは、業界や製品がお互いに連携することで、
大きな収益構造を構成するさまを表現します。
人や物の移動(モビリティー)の分野でも、いろいろな業種やサービスが連携することで、
利用者にとって便利になり、事業者にも大きな収益がえられます。
この、モビリティー・エコシステムのなかでの鉄道や、鉄道事業者の位置づけはどのようなものなのだろうか
というのが、今回のコラムです。
人の移動に関して、旅行予約業者、ナビゲーションアプリなどの携帯アプリの提供事業者、
鉄道会社、レンターカー業者、宿泊事業者が、ひとつのエコシステムを形成すれば、
乗り換え改札口がなくても、運賃の計算が正確にできる、ICカード乗車券の利用範囲が広がるに始まって、
駅を降りた時点で、ナビゲーションが始まって、方向音痴の人が旅行する時、道に迷わなくなるなどの
利点があります。さらに、旅行地が気に入って、滞在時間を伸ばした時や、列車が遅延した時などに、
先の予約を変更する、宿泊事業者に到着時刻の変更を通知するなどが、スムーズに行われるようになります。
エコシステムのなかで、中心となる、これがないとエコシステムが成立しないというようなものを、
「キーストーン種」と呼びます。一般に、ビジネスのエコシステムでは、GAFAのような巨大な
企業をさすことが多くあります。
モビリティー・エコシステムにおいて、鉄道事業者の、座席予約システムの情報や、
運行管理システムの情報が重要になります。
ところで、鉄道会社の強みは、何かと言うと、あくまで個人的意見ですが、
ブランド力だと思います。
一般に言われる、ファッションのブランドなどとは、イメージが異なります。
なぜ、鉄道会社の強みは、ブランド力だと思うかというと、それは、
皆が会社の名前を知っているからです。
例えば、JR四国は、高松市に本社があって、連結売上高は、およそ500億円です。
日本に住んでいる人なら、ほとんどの人が会社の名前も何をしている会社かも知っています。
プラント設計の会社などでは、連結売上高が、1兆円程ある会社で、業界では超一流の会社でも、
一般の人の知名度はあまり高くない会社があります。
名前が知れていることは、良い評判も、悪い評判も増幅されますから、
リスクもリターンもありますが、エコシステムのなかで中心的な役割を得る可能性はあります。
さらに、どのエコシステムに参加するか、エコシステムのなかで、いかに利益を確保するかも考えなければなりません。
鉄道車両の輸出の例でも、台湾で、T700系という日本の新幹線のような車両が走っています。
日台共同制作ドラマでも有名になったから、更新する車両も日本から輸出するかというと、そうでもないようです。
日本の企業連合の応札価格が高かったため、台湾側が立腹し、入札をやり直すそうです。
一方、日本の企業がイギリスなどのヨーロッパ向けの車両を、数多く輸出している例があります。
どのように利益を確保するかは、よく検討する必要があります。
GAFAのような巨大企業が運用するクラウドシステムでも、すべてが利益を生んでいるようではないようです。
一番のなかの一番だけが、巨大な利益を生むとか、クラウドシステムが利益を生まなくても、
巨大な広告収入を得るためのプラットフォームになっているなど、企業毎に様子は異なります。
世界的な、エコシステムを考える時、GAFAのような巨大企業を目標にするだけが
ゴールではないように思います。あくまで、個人的な直感ですが、
中国にはアメリカのGAFAを連想するような、巨大なIT企業があります。
何か、四角な形をした大きな国に住んでいる人の、考え方のように思います。
(それぞれの国の人に、確認したわけではありません。)
細長い、それほど大きくない国は、GAFAを大いに参考にしても、そのまま真似るのではなく、
自分の国の発展のために活かす方法を考えるのが良いと思います。
20世紀後半、日本は高度経済成長の時代でした。
1、969年、GDP(当時のGNPが)西ドイツを抜いて世界第二位になりました。
しかし、話を聞いてみると、誰もアメリカを抜いて、一位になるとは思っていなかったようで、
世界第二位であることが重要だったようです。
そして、1、980年台に、”Japan as No.1” と言った後、
バブルがはじけました。
20世紀の高度経済成長時代に戻そう、というような話もありますが、
世界第一位はめざさず、世界第二位をめざし、第一位の国の言うことは聞くというのではなく、
「世界に一つだけの花」をめざすほうが、実現可能性があり、かつ我々自身満足度が高まるのではないかと思います。
(追伸)
今月、新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」に不具合があり、
一部の濃厚接触の可能性の有る者に対して通知が行われていなかったことが明らかになりました。
非常に重大な、インシデントです。
ソフトウェアに不具合があるのは防げないことです。
しかし、9月頃から、不具合があったのに、なぜ2月まで気づかなかったのでしょうか、
陽性者からの報告と、それに付随した、濃厚接触の可能性がある者への通知が、毎日何件行われているかを
監視していれば、不具合発生後すぐに気づいたはずです。
予算を使い切って、アプリをリリースしたら、後は、誰も使っていなくても、アプリが機能していなくても、
誰も、現状把握をしないという、公共システムの悪い見本といえるほどです。
例えば、鉄道会社でいえば、開業して電車が走っていると思っていたけど、
指摘があってはじめて調べたら、半年前から電車は走っていませんでしたというほど、良くないことです。
今回のインシデントで、不具合に気づかなかったのではなく、仮に発表する必要がないと思っていたとしたら、
さらに、問題は深刻です。行政のデジタル化を進めようとしていて、住民の生活や健康への影響が大きくなっている時、
不具合の情報の利用者への通知を、合理的期間内に行わなかったら、
行政の不作為に該当するのではないかということを検討する必要があると思います。
電車が止まっていたら、皆すぐに気づきます。システム内部で起こっていること、
あるいはシステムに関連して起こっていることは、それ程すぐには気づきません。
だからこそ、正確な情報の発信にいっそう努めなければなりません。
ソフトウェアの不具合を修正するのは、もちろんですが、徹底的な原因究明と再発防止策をとらなければなりません。
「COCOA」稼働開始あと、正常に稼働していることの監視と、予算使用の有効性の確認は、
誰がどのように行っていたのか、調べる必要があります。
何がきっかけで不具合が見つかったかも、調べる必要があります。SNSで話題になって、はじめて気づいたとしたら、
大きな問題です。もし、SNSで話題になって、これはごまかしきれない、となったとしたら、さらに悪質です。
担当者の故意や、発言できない忖度があったのではないかも調べる必要があります。
「COCOA」の機能仕様書は適切に決められていたのかも、調べる必要があります。
陽性者にならず、濃厚接触の可能性がなければ、ユーザーは、「COCOA」が機能しているのかどうかわかりません。
もし、アプリの使い方の練習メニューがあって、職場などで、通勤者数や部屋の中の配置を変えることで、
誰かを、訓練のための疑似の陽性者役にして、一日で濃厚接触に該当する接触回数がどのように変化するかを
検証できる機能があれば、ユーザーの使い方の練習にもなるし、不具合に気づくきっかけになったかもしれません。
個人情報の保護はもちろん絶対に必要なことですが、システムの稼働状況をユーザーに知らせないことの言い訳にしては
いけません。
さらに、「COCOA」の機能仕様書には、疑問があります。
「COCOA」がリリースされたころ、各地の自治体からも、QRコードなどを使った、感染通知のアプリがリリースされました。
なぜ、「COCOA」とこれらのアプリを連携させることを考えなかったのでしょうか。
運用主体が異なるとか、アプリの機能・仕組みが異なるは、全く理由になりません。
利用している人は同じで、同じ目的で利用しているという、ユーザーの立場に立って健康を守ろうという、
行政の役割の理解が根本的に欠如しているように見えます。
弊害の有る縦割りの例として、行政アプリはいかにあるべきかのテキストに載せてほしいと思います。
BLE(Bluetooth Low Energy)のハードウェアーや、ファームウェアーの
違いにより、携帯端末のメーカー毎の違いがあったのか、
Exposure Notification System のAPIに欠陥があったのではないかも、
調査しなければなりません。Androidの携帯端末は、いろいろなメーカーから発売されています。
今後、利用するアプリでも、類似の不具合がでる恐れがあります。
その際、日本側は、どのようにして知って、対策をとることができるのかもはっきりさせなければなりません。
今後、アプリをリリースする際の、検証テストの項目について考慮すべき点も、はっきりさせなければなりません。
開発部門と運用部門の協業が適切に行われていたのかも検証しなければなりません。
一部に、急ごしらえで開発したアプリから不具合が発生したというような発言がありました。
アプリのリリースを急いだから、インテグレーションテストの時間を十分確保できなかった。
リリース直後に、エラーが発生したなら理解できます。
しかし、急ごしらえで開発したアプリだから、不具合の修正や、バージョンアップも急ごしらえで
適当にやって、十分な検証を行わない理由にはなりません。
職務分掌(Segrigation of Duties)と部門間の協力をどのように両立させるか、
いかに縦割りを排除するか、真剣に検討しなければなりません。
米国製の技術だから、なんとなく信用できるでは、信頼あるシステムは構築できません。
安全性の検証をどのように行うか、他の業種の例も参考にして、検討する必要があります。
ソフトウェアの不具合を修正した後、何ヶ月かかるとしても、これらの原因を詳細に調査し、
再発防止策を作り、それを報告書にまとめて公開しなければなりません。
失敗に学ぶの立場で、今回の「COCOA」のインシデントを将来に活かさなければなりません。
関係者の、法的責任や処分と完全に独立した、純粋に再発防止を目的とした、
組織的な調査がおこなわれ、その過程と結果を、公衆の閲覧(縦覧)に供するかどうかが、
行政のデジタル化を利用者のために本気で進めようとしているのかどうかの、
リトマス試験紙かもしれません。
従来の、ローカルな行政システムでは、窓口の人と開発者の現場力で、柔軟に例外処理などにも
対応してきたことが、全国統一システムになって、内部がブラックボックスになったり、
縦割りの弊害で、現場の人も対応できなくなる懸念があります。
今回のインシデントを、詳細に調査し、再発防止策を作らなければ、
現在進めている行政のデジタル化によって、行政サービスのレベルが下がるのではないかという
重大な懸念があります。