列車ダイヤについて -- 3-3 AIと鉄道
2018年3月17日
3-3 AIと鉄道
人工知能、AI(artificial intelligence 一部では、他の単語を当てる会社もあります)が話題になっています。
このAIの技術が鉄道にどのように活かせるかという内容です。
まずAIの特徴について、あくまで可能性のひとつ、あるいは数ある見解のひとつとして、私の見方をまとめてみます。
1) 進歩が早い
AIはまだ人間の頭脳のごく一部の機能を実現しているだけかもしれません。実際AIを一般に人工知能と呼びます。
人工頭脳とは呼びません。しかし、その進歩が早いというのは大きな特徴です。
人間の場合、どんなサラブレッドの家系に生まれて、すぐれた素質を持った人でも、ある年数人並みはずれた訓練をしないと、
世界レベルの人間にはなれません。しかし、AIはシステム丸ごとコピペすれば、クローンを作ることができます。しかも学習済みの状態の
元とまったく同じクローンを作ることができます。囲碁ソフトのAIでは、数多くのクローン同士が対戦することで、
さらにAIの知能レベルを上げることができました。
AIは、進歩が早いと言えます。
2) 考えるのが速い
AIと人間の知能レベルを比較すると、人間のほうが優れているということは多くあります。
しかし、処理や判断の速度だけに注目すれば、ほとんどの場合AIのほうが速いと思います。
例えば、指紋の判定であれば、難しい指紋を判定する能力は人間のほうが優れているでしょうが、
比較すべき指紋が1万点ある時、どちらが比較の作業を速く終えることができるかといえば、
明らかにAIのほうが速いと思います。
3) 忖度しない
AIは、繰り返し作業など定型的作業が得意で、予測不能な異常事態には対応できないという見方もあります。
それも間違いではないと思いますが、人間のように忖度しないので、”まさか”という考えをもたず、
人間では考え得ないような予測をする面もあると思います。
まず、「AIは、繰り返し作業など定型的作業が得意」という見方では、例えば株価や為替の予測で、
比較的順当な状況で予測精度が良い反面、予期せぬ事態には対応できないという話を聞いたことがあります。
また、鉄道では、JR東日本のATOS(Autonomous decentralized Transport Operation control System)が導入されている区間の駅では、
電車が2分遅れますなどの情報が表示されます。もちろん人間でもできない作業ではありませんが、毎回行うのは面倒です。
遅れが発生している時にこのような定型的作業を機械に置き換えることができれば、人間はダイヤの回復など他の作業を行うことができます。
あるいは、運行管理システムで、到着列車が遅れた時、順番を替えて出発列車を定時で出発させるなどの作業を、
人間に替わっておこなうことができれば、人間は他の作業を行うことができます。
しかし一方で、「AIは人間のように忖度しないので、”まさか”という考えをもたず、人間では考え得ないような予測をする」面もあります。
例えば、台風の進路予測で、1990年11月30日に台風第28号が日本に上陸した時、
人間はまさか11月の終わりに台風が日本に上陸することはないと考えたのにたいし、
コンピューターは可能性のひとつとして、日本に上陸することを予測したという話を聞いたことがあります。
ここでは、あくまで可能性のひとつとして、「AIは考えるのが速い」という面からひとつ、「AIは忖度しない」という面からひとつ
鉄道にAIが応用できるのではないかという面を述べます。
「AIは考えるのが速い」という面では、事故などで、列車が止まった時の回復ダイヤをつくるのに活用できるのではないかと思います。
あくまで、ニュースなどを聞いて感じたことですが、列車が止まった原因が鉄道会社側にある時は、回復の見通しが比較的正確で、
ダイヤの回復も比較的順調に行われます。
一方、沿線火災や自然災害など、鉄道会社側以外の原因で列車が止まった場合で、回復の見通しが狂った時、ダイヤがなかなか回復しない
ことがあります。
人間の場合、まず回復の見通しを立て、それに基づいてダイヤの変更作業をすることになります。
しかし、「AIは考えるのが速い」ので、それ程精度の良いダイヤでなくてもよいので、とにかく
1時間で回復する時のダイヤ、2時間で回復する時のダイヤ、ーーー 6時間で回復する時のダイヤ、というようにたくさん作ります。
そして、実際に運転再開できた時点で、そのなかから一番良さそうなダイヤをベースにして、人間が回復ダイヤを作成する
というようなことができるかもしれません。
「AIは忖度しない」という面では、災害復旧訓練のシナリオを作る時に利用できるかもしれません。
災害復旧訓練のシナリオはマンネリでも困るし、あまり現実離れしていても困るということで、計画する人が困ってしまいます。
しかし、実際の事故は、飛行機でいえば車輪がでないなど、訓練してなかったという事故が起こることがあります。
過去の運転障害のビッグデーターからAIで起こる可能性のある障害を分析すれば、
人間では思いもつかないような災害復旧訓練のシナリオを作ることができるかもしれません。
実際AIがどのように鉄道に応用できるかはよくわかりませんが、基本的にAIと鉄道は相性が良いと思います。
それは、鉄道では多くのデーターが蓄積されているからです。
例えば、私のように碁を打つAIを作ろうとするとまず無理です。
どうしても細かなことが重要なので、あえて申しあげますが、
決して「私より強い碁を打つAI」とは言っていません。とにかく「私そっくりに碁を打つAI」を作ることは
多分不可能だと思います。
AIは多くの場合、事前学習が必要です。 プロの碁の場合、棋譜が残っているので、正確な学習材料が多く残っています。
しかし、私は碁がとにかく下手なので、自分がどう打ったなどまったく記憶していません。私が打った棋譜を記録してみようという
殊勝な人もまずあらわれないと思います。 こういう視点でみてみると、鉄道は毎日の運行の記録やどれくらいの人が利用したかなど、
多くのビッグデーターが蓄積されています。
正確な学習材料が多く残っているので、学習の機会に恵まれている鉄道とAIの相性は良いのではないでしょうか。
それから最後にもうひとつ、AIが応用できるのではないかという面を述べます。
地震の時建物の揺れを抑える、制振装置があります。そして、パッシブ制振、アクティブ制振、AI制振と発展しています。
実際の地震の時の建物の揺れを記録すると、学習して次からの地震にはより適切に対応するそうです。
最近の鉄道車両には、アクティブサスペンションが搭載されています。通常の油圧ダンパーのように、
加わった揺れを減衰させるだけでなく、揺れを予想して、あらかじめダンパーを制御するそうです。
AI制御にすると、さらに揺れの少ないサスペンションを作ることができるかもしれません。
鉄道は全く同じルートを走るので、再現性が高いから、AI制御に適している面もあるでしょう。
ただ、制振装置は制御を誤ると加振装置にもなり得ます。突風が吹くなど、予期せぬ事態にも対応できるよう
慎重に導入する必要があるでしょう。