列車ダイヤについて -- 3-24 カーボンニュートラルと鉄道
2020年11月01日
3-24 カーボンニュートラルと鉄道
「2050年温室ガス排出実質ゼロ」が話題になっています。
2020年5月12日のJR東日本ニュースの、~「ゼロカーボン・チャレンジ2050」~ も
話題になりました。
移動するためには、かなりのエネルギーが必要です。
電車1両が1km走行するのに、およそ、1kwhの電力量が必要です。
概算ですが、10両編成の電車が、東京から高尾まで、およそ40km走るために、
400kwhの電力量が必要です。普通の家の1ヶ月分の使用量より多いくらいです。
鉄道会社の節電は重要ですが、節電といっても限度があります。
しかし、温室効果ガスの排出を削減する、あるいは実質ゼロにするということについては、
かなり進んでいるようです。
今回のコラムは、電気(電力)・鉄道会社になると、日本全体の、
温室効果ガスの排出の削減に貢献するのではないかという話です。
アイディアベースの話で、実現可能性は検討していません。
鉄道会社で、京浜急行電鉄のように電鉄という名前のつく会社があります。
電車が走る鉄道と思いがちですが、もともとは、電力会社と鉄道会社だったから、
電鉄という名前がついたところがあります。
電力会社は、明治時代には多数乱立していました。
それが、大正時代に5社に再編される以前の話です。
その後は、戦時中には電力事業が国家管理となったことで、国策会社「日本発送電」が発電と送電を支配し、
電力を供給する配電を9社が担うようになりました。
さらに、1951年、日本発送電が分割・民営化されて9電力会社が誕生し、
発送電一体型の地域独占体制が確立しました。現在は、発電には他の会社も参入できるようになりました。
線路沿いに、太陽光パネルを設置して発電しているなどの例があります。
もし鉄道会社が送電・配電にも参入したら、もっと再生可能エネルギーが
有効に活かせるようになるかもしれません。
電車のパンタグラフが接している電線をトロリー線といい、物理的にトロリー線を
吊るしている線を、吊架線(ちょうがせん)と言います。そして、
変電所から、線路沿いにひかれ、トロリー線に電気を供給している電線を、
饋電線(きでんせん)といいます。
超電導饋電線といって、液体窒素の冷媒で、饋電線を冷却した状態にすることで、
直流1,500Vで抵抗がほぼゼロ、損失が少ない饋電線が実用化されようとしています。
(交流ではうず電流が発生するため、抵抗はゼロにはなりません。)
太陽光発電では、直流の電気が発電されます。風力発電では、交流の電気が
発電されますが、周波数が安定しないので、一旦直流に変換します。
つまり、再生可能エネルギーと直流送配電は相性が良いということです。
鉄道会社が、再生可能エネルギーの発電と直流送配電事業を始めて、
電気(電力)事業と鉄道事業を行えば、
日本全体の、温室効果ガスの排出の削減に貢献するのではないかという、
アイディアです。各戸に配電されているのは交流なので、
どこかで、交流の送配電システムに接続する必要があります。
それが不可能なばあい、鉄道会社は、大量の直流電力を消費しているので、
自社で消費することもできます。また、鉄道会社では、
電気主任技術者の人が働いており、技術的な蓄積もあります。
各戸に配電されているのは交流ですが、これは変圧器(トランスフォーマー)で、
電圧を変換するのが容易なからです。しかし、日本発の技術である、
パワー半導体のおかげで、現在では、直流から、 任意の電圧、任意の周波数の
交流をつくりだすことができます。直流送配電にすれば、現在のように、
周波数のわずかな変化を気にする必要がなくなります。
超電導饋電線の技術を使えば、低い電圧でも損失の少ない送配電が可能になります。
直流送配電は、我々にもメリットがあります。
インバーター・エアコンといっているもののなかには、コンバーターとインバーターが
はいっています。各戸に配電されているのは交流なので、
新幹線や常磐線の電車と同じです。
これが、山手線の電車のように、インバーターだけでよくなれば、
家電製品の価格も安くなります。
第三セクター鉄道のなかには、交流電化してある区間を、
ディーゼルカーが走っている会社があります。
これは、交流の電車は、1両だけで走ることができないからです。
MT(メイントランスフォーマー)と CI(コンバーター・インバーター)を
一つの車両に積むのが難しいからです。
鉄道の地上設備の法定償却年数は60年のものが多く、
これから5−10年程で、取り替え時期を迎えるものがあります。
その際、交流電化を直流電化に変更するというアイディアがあります。
例えば、直流電車が走る区間と、ディーゼルカーが走る区間がある、
えちごトキめき鉄道の場合だと、もとの北陸本線の部分を
直流電化して、すべての車両を直流電車にすると、いろいろメリットがあります。
まず、動力費が安くなります。
軽油の燃料は、電力に比べて、3倍以上するので、
自分で発電して、自分で消費するなど、再生可能エネルギーの補助金がないとしても、
今より、動力費が下がるのではないかと思います。
車両の価格も安くなります。
デーィゼルカーは(特に将来電気式ディーゼルカーになると)
山手線の電車の車両より、2倍から3倍近く高いと思います。
会社で必要とされる技術も統一されます。
さらに、超電導饋電線の技術を使って、発電事業と、直流送配電事業に参入すると、
経営状態も改善するかもしれません。
第三セクター鉄道のなかには、赤字の企業もあります。
そして、地方自治体が資本参加しているため、とりあえず資本増強して、
債務超過を回避する場合があります。利益剰余金はマイナス(累積赤字)なのに、
資本剰余金などを積み増しして、株主資本が毀損しないように体裁を
整えているケースがあります。結局は、赤字の補填を、税金でおこなっている
ことになり、本来の姿ではありません。
電力事業は地元にとって、絶対に必要な事業であり、電気自動車が増えるなどで、
ますます重要になります。
「2050年温室ガス排出実質ゼロ」を実現するためには、
地元の第三セクター企業が、発電、送配電事業と鉄道事業を行うなど、社会の仕組みを
大きく変えることも必要になるかもしれません。
各地に住んでいる人が、各自、カーボンフリーな電力として、再生可能エネルギーを選ぶ、
カーボンフリーな移動手段を利用したいと思うなど、どのような生活をしたいのかを基本として、
法律や行政のしくみを考えるべきです。
20世紀に、運輸省と建設省があったころ、鉄道会社は、
鉄道事業(運輸省)をおこなうか、軌道事業(建設省)をおこなうか、悩むことがありました。
電力事業は経産省、鉄道事業は国交省といっているようでは、
排除すべき縦割りの考え方ということになります。
(最近は、チョコレートも横に割らなければならないほど、縦割りは不人気です。)
xx事業法に基づいて、事業をおこない、事業団体連合会を東京に設置し、
関連省庁の指導を受けるという考え方を変える必要があります。
各地で家で電気を使っている人が、鉄道などを利用して、街に買い物に行きます。
そういう各地の人の生活を基盤に、法体系を見直す必要もあるかもしれません。
最近は、デジタル化の推進が話題になります。
(アナログ式の時計を使ってはいけないということではありません。)
「2050年温室ガス排出実質ゼロ」を実現するためには、
各人の生活を中心に考えて、社会の仕組みを大きく変えることも必要になると言いましたが、
デジタル化の推進にあったても、各人の生活を中心に考え、何のためのデジタル化かということ
を考える必要があります。
20年程前にも、デジタル化が話題になり、e-japan が推進されたことがあります。
e-japanの政策はなぜ失敗したのかと考えているとしたら、
それこそ、排除すべき縦割りの考え方ということになります。
法体系や行政の仕組み全体に、e-japan の推進を妨げる、
どのような課題があったのかと、考えなければなりません。
1990年代に、自動車の対米輸出の問題を恐れて、ITでは、米国と揉めない戦略をとったことや、
著作権法のインターネットの検索サイトに対応した整備が遅れたことが、
日本のIT化の推進の妨げになったと思うなら、
それは20年以上昔の問題だと思ってはだめです。
現在の行政機構にも類似の課題はないのか、見直さなければなりません。
民間のIT推進についても同じことがいえます。
電子カルテの、フォーマットが統一されていないことに課題があるとしたら、
電子カルテのシステムにどのような課題があるかだけを考えてはいけません。
そのようなシステムが出来上がった、病院の体制や、医療行政全体に
どのような課題があるかを考えなければいけません。
ここで、ITシステムに起きた問題への対応として、すぐれていたと思うものを取り上げます。
10年程前、JR東日本の新幹線の運行管理システムに問題が起きて、
年末の混雑のなかで、JR東日本のすべての新幹線が半日以上止まったことがあります。
原因は、前日に降雪でダイヤが混乱したため、どの車両をどの列車に割り当てるかの
作業の手順に手違いが生じて、ダイヤが作成できなかったからです。
電車が止まったのは良いことではありません。
しかし、その問題に対する対策はすばらしいものでした。
これを運行管理システムだけの問題とはとらえず、
JR東日本の新幹線の運行すべてにかかわる課題ととらえました。
そして、数多くあった車両のタイプを統一するという対策をとりました。
ただちにできることではありませんでしたが、その後何年もかけて、
現在の、東北新幹線は、E5系 E6系 と E8系
上越新幹線と北陸新幹線は、E7系(W7系)への統一にむけたスタイルになりました。
最近、東京証券取引所のシステムに異常があり、取引が停止しました。
その原因として、NASデバイスのスイッチの設定を変更するのを失念したと報告されています。
再発防止対策の第一歩として好ましいことです。
もし、「複合的な、予測困難な原因により異常が発生した」というような報告がでてきたら、
「調べても、何もわからなかった。」と読み替えて理解すべきです。
一方、ITシステムに起きた問題への対応として、好ましくないのではないかと思うものを取り上げます
一律給付金の支給に際して、マイナンバーカードを使った申請が行われました。
あまり、順調ではありませんでした。マイナンバーポータルのシステムと自治体のシステム
の連携に問題があり、マイナンバーポータルシステムに申請が入力された段階では、自治体側では
申請者が世帯主なのかどうかすら確認できなかったといわれています。
しばらくして、マイナンバーポータルサイトで、金融機関の口座情報を紐付けるという対策がでてきました。
原因究明の前に、対策がでてきた場合には、
「担当者は、事前に課題に気付いていたが、指示された人に忖度して、システムを稼働させた」
というようなことを、疑ってみるようなITリテラシーを利用者が身につけるべきです。
現在、行政手続きには、税務署の青色申告申請書のように、何も通知がこなかったら、受理されたと
いう手続きがあります。デジタル化しても、申請の処理状況が明らかにならない、従来どうりの
処理方法を継続するにはどのようにすればよいかなどが考えられているとしたら、
まさに愚の骨頂というべきです。
デジタル化を推進するに際しては、
デジタル化が、我々の生活にもたらす利便性の向上は何かを明確にし、
法体系や行政機構全体の課題を明らかにして、どのようなITシステム
が必要なのかなどを考えていく必要があると思います。