各種のコラム -- 3ー165 現金給付はなし?減税もなし??
2025年4月25日
3ー165 現金給付はなし?減税もなし??
物価高対策としての現金給付が一時話題になりましたが、補正予算案を編成しての現金給付はなしということになりそうです。
所得税の減税については、基礎控除額の引き上げが、一時期ほど話題になっていませんが、なくなったわけではなさそうです。
また消費税の減税が最近話題になっています。
昨年は、増税クソメガネが話題になり、急遽、所得税の税額控除が決まりました。その時は、一律現金給付のほうが良いという
意見が出たのですが、今年は、街頭インタビューなどでも、現金給付は貯金になってしまい、物価高対策としての経済対策
としては有効でないという意見が多くでています。私としては、現金給付大歓迎で、有効でないという意見の人は、私に
くれれば良いと思っています。仮にひとりあたり4万円の現金給付をすると、全体でおよそ5兆円の予算が必要です。
消費税の減税が物価高対策の特効薬であるという意見をよく聞きますが、私は、期限付きの消費税率の引き下げには
反対です。地方消費税を含む消費税等の税率(以降、消費税の税率と記述します)は、5%にするのが良いと思いますが、
軽減税率なしの10%でも良いので、将来的に変更しないのが良いと思います。
軽減税率は、それまでの物品税にかわって、広く浅くすべての商品の譲渡に際して課税するという、
消費税の基本的な考え方に反します。北米のような売上税なら、食料品の税率をゼロ%にしても、
小売業者は、最終消費者から預かった金額をすべて納税・納付するので、問題ありませんが、
日本やヨーロッパのように付加価値税方式の場合、課税売上のための課税仕入れを消費税の税額から控除できるので、
現在でも、小売業の場合、レジ袋を仕入れた際も、商品を並べるための棚を仕入れた際もそれが食料品の売上に関連する仕入れなのか、
それ以外の売上に関連する仕入れなのかを、区分するか、売上高に基づく按分で、課税仕入れの対価にたいする
税率を計算することが、厳密な租税の公平性の観点からは必要になります。理論的な話しです。消費税法で要求されている
わけではありません。
食料品の消費税率をゼロにするのがよいと言っている人に、
ゼロ%課税にするのが良いと思っているのか、非課税が良いと思っているのかを聞きたいです。
販売対価は同じになるかもしれませんが、店側の扱いはまったく異なります。
ゼロ%課税なら、スーパー側の課税売上割合は変わらないので、仕入れ税額の還付を受けることができます。
店の間の競争が激しいので、還付税額をすべて利益にするのではなく、商品の値下げを行います。
一方食料品を非課税にする場合は、課税売上割合が激減するので、
商品を並べるための棚を仕入れた際も、仕入税額控除をほとんど受けることができなくなります。
スーパーの利益率は低いので、商品を値上げしないと、経営破綻する店がでます。便乗値上げだと言って批判しても、
スーパーが経営破綻して閉店すると、消費者が困ることになります。
調剤薬局は売上が非課税なので、仕入れる薬の税率が上がると経営が厳しくなりますが、
過去の消費税率の引き上げの際は、影響低減のために、薬価基準の引き上げが行われました。
目先の選挙対策で消費税率を変更し、店が混乱し、売上が非課税となる調剤薬局では、厚生労働省も巻き込んで、
対策を講じるのは、事務経費の無駄です。将来を見通した、租税法を決定し、継続的に運用することで、
省庁の事務経費を節約し、民間企業に、租税の予見可能性を確保すべきです。
消費税を減税すると、購入額が多い、高額所得者のほうが、減税額が多くなります。
消費税は、個人消費や設備投資に関連する、譲渡の対価に課税するものなので、GDPが増えれば、税率が一定でも、
徴収税額は増えます。経済が発展して、GDPが増えれば、徴収税額が増えるというのは、自然です。
法人税や所得税は、利益・利潤の額にたいして課税します。
企業は、利益を増やそうとすると、仕入れの額は受け入れざるを得ないのが一般的なので、人件費か設備投資の額
を減らそうとします。従業員は、受取給与が増えず、就業者数も減少しているので、所得税の徴収税額は増えません。
それを補うために、ステルス増税で社会保険料を増やすのはやるべきではありません。
制度が複雑になって租税公課の実態がわからなくなります。年金や健康保険は、社会保険料だけで運営されているのなら、
制度はシンプルですが、実際は、一般会計からの支出があって成り立っています。
ステルス増税のような、一般の人に内情がわからなくなるような運用をすべきではありません。
自民党税制調査会は、財務省の行政職員では決められない、将来の税制の大方針について政治家の立場で議論すべきです。
基礎控除額の変更のような、国会が開かれているなら、所得税法の改正について国会で議論すればよいようなことを、
国会外で野党との話し合いで行うのではなく、もっと将来の税制の大方針について説明責任を果たすべきです。
日本は、1990年頃から失われた30年といわれ、デフレが続いていました。先進国でこれほどデフレが続いたのは、
日本だけだというのは良く聞きますが、なぜデフレになるのかはあまりはっきりしません。
金融緩和策で、政策金利が下がり、あわせて現金の発行残高が増えれば、量が少ない希少価値のものの値段が上がり、
たくさん出回っているものの値段は下がるので、たくさん出回っている現金の価値が下がってインフレになるのでは
ないかと思ったのですが、実際はデフレが続いていました。
2000年ごろまでは、日銀の金融緩和が不十分だからという人が多かったのですが、2008年のリーマンショック後の
世界の中央銀行の量的緩和を含む金融緩和策は、十分すぎるほどでしたが、それでもインフレは起きませんでした。
現金は、金融機関や一部のIT企業に集まりましたが、経済的な分断を招き、多くの人にはそれほど恩恵はありませんでした。
コロナ禍になって、さらに量的緩和を含む金融緩和策がとられましたが、急速にインフレが進んだのは、
コロナ禍で労働者が出勤できなくなり、生産量が減少したからで、金融緩和策のためではないように思えます。
最近のお米の価格の上昇に見られるように、生産量がわずかに減少しただけで、商品の価格は急激に
上昇するということが十分に解析できていないようです。
アメリカの経済発展は、一部のIT企業が世界的に独占したからではないかと思っていましたが、
アメリカの経済の中心は、軍事と医療だという話を聞きました。そうだとすると、コロナ禍と
ロシアによるウクライナ侵攻が、アメリカに好景気をもたらしたのが納得できます。
ITバブルがはじけるかと思いましたが、生成AIブームが起き、さらにアメリカは好景気になりました。
しかし、生産量がわずかに減少しただけで、商品の価格は急激に上昇するように、
世界の中央銀行がインフレ対策で、量的緩和を終了し政策金利を上げたことで、突然に不景気になるかもしれません。
最近は、政策金利を下げているので、実際どうなるかはわかりません。
中国ではデフレが進んでいますが、生産過剰、需要不足の状態だからです。
人民元安なので、アメリカに輸出できなくなったものをさらに低価格で他の国に輸出するかもしれません。
アメリカは中国からの製品には145%の関税を課すと言っていますが、中国で生産するアップルの製品などは、
関税を免除するそうです。あわせて中国で開発し中国で製造するファーウェイの製品も関税を免除するとはいいませんでした。
2019年5月15日、米商務省は、中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)への事実上の輸出規制を決めました。
数あるトランプ1.0の失策のなかでも、トップクラスの失策といわれるようになるかもしれません。
Android OSの使用を禁じることで、大打撃になると思われたのですが、実際は、Harmony OSを
搭載した携帯電話を出荷しました。先端半導体の輸出を禁止することで、ハードウェアー・デバイスの製造でも
大打撃になると思われたのですが、集積度の低い半導体を使って、それなりのかなりの性能のデバイスをつくりました。
Harmony OSの開発は、2012年ですが、その後のトランプ政権のイランへの輸出制限の措置などを
見て開発を加速しました。Android OSがLinuxやUnixと同じモノリシック・カーネルを使っているのに対し
Harmony OSはマイクロ・カーネルを使っています。グーグルもマイクロカーネルを開発しているのですが、
Android OSが広く使われているので、製品の販売にはいたっていません。
ファーウェイは規制がかかったことで、リスクをとって新しい製品をつくる方法を選びました。
中国は、海外企業が資産を所有する民間資本の導入を許していないので、中国のIT企業がこれからも
順調に発展するかどうかはわかりませんが、
Harmony OSは、IoTデバイス、モバイルデバイス、PC、サーバー、自動車用など、
幅広く使うことを想定しているので、グローバルサウスの国も含めて、世界の趨勢がどうなるかはわかりません。
将来を見越した、製品開発の戦略が重要になります。
Android OSでは最近Linuxが使えるようになりましたが、グラフィックアプリがそのまま動くわけではなく、
かなり地味です。ChromeOS Flex並にLinuxが使えるようになって、PCでPythonで作った
グラフィックアプリがそのまま動くようになると、PythonのアプリはGitHubなどで広く配布されているので、
グーグルが、Google Playでソフトウェアーの配布を独占に近い状態にしているということへの
強い反証になります。それだけでなく、ほんとうに独占的地位を失うリスクがありますし、
もしそうなったときのアップルの対応も注目です。またHarmony OSは、モバイルデバイスでもPCでも
使うことを想定しているので、Pythonのアプリは動かす気になれば、簡単にできるかもしれません。
そうなると、アプリ開発者は、アップル用とAndroid用のふたつを作る必要がなくなり、
米国製携帯電話の独占状態を奪う新たな囲い込みが始まる可能性があります。私のAndroidタブレットは
購入してから7年経っているので、バージョンアップの対象ではありません。すぐにではありませんが、2〜3年後には
最新のLinuxが使えるAndroid OSが動く機種に買い換えようかという動機になるかもしれません。
日本は、国債の累積発行残高が、GDP比では2倍を超え、主要先進国の中で最も高い水準です。
大問題だという人もいれば、国債の債権者がほとんど日本国内の人なので問題ないという人もいます。
多くの人が、赤字国債は問題だが、建設国債は大丈夫だといいます。
しかし、これからしばらくは人口減少社会です。国債を使う新規の設備投資が本当に必要か
厳密に精査する必要があります。
北陸新幹線の延伸には、小浜ルートを選択すると、およそ5兆円必要です。
4万円の現金給付に要する金額とほぼ同じなので、高いと思うか安いと思うかは人それぞれでしょうが、
正しい事実に基づいて議論する必要があります。
2016年12月、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームが、「小浜・京都ルート」が適切とする中間報告をまとめましたが
その際の敦賀〜新大阪間の所要時間が、小浜ルートで43分、米原ルートで67分です。
米原ルートは、米原〜新大阪間が34分、敦賀〜米原間は、在来線で、45.9kmなので、米原〜京都間68km位を
19分で走っているので、敦賀〜米原間は、13分位です。乗り換え時間を15分で計算しているそうですが、
それでも、62分です。もし乗り換えなしにすれば、米原1分停車で、48分です。
どうしても小浜を通したいのなら、「どうしても小浜を通したい」と報告書に書くべきで、
決定は事実に基づいて行わなければなりません。北陸新幹線の列車が混雑する東海道新幹線に乗り入れることは
不可能と言われますが、現状でも、名古屋〜新大阪間は、東京〜名古屋間より、一時間あたり一本列車の
本数が少ないです。具体的に北陸新幹線から、東海道新幹線に乗り入れる列車を一時間に一本
東京〜名古屋間の「こだま」を延長した時刻で設定することは、本当に不可能なのでしょうか。
新大阪駅の引上線が塞がっているから不可能ということなら、その列車を岡山まで延長したらどうでしょうか。
現在、新大阪〜岡山間は「こだま」が朝夕のみ走っていて、昼間は各駅に停まる列車は、岡山行の「ひかり」だけですが、
一日を通して、一時間に二本走ることになります。あるいは、鳥飼車両基地に回送する列車があるから不可能
かもしれませんが、東京駅も回送列車が設定できているので、何とかなるのではないでしょうか。
設備投資に必要なお金が、5兆円か1兆円かと言っても、5万円か1万円かというほど実感はわきませんが、
将来負担の額には桁違いに大きな違いがあります。
はじめに結論ありきの議論ではなく、公開された事実に基づいて議論をする必要があります。
同じことは、政府が出資しているラピダスについても言えます。現在有価証券報告書のEDINETでの公開はありませんが、
上場企業でなくても、税金を使って政府が出資している以上、すべての国民が株主であるともいえます。
各自の出資の妥当性の判断に資するために、有価証券報告書をEDINETで公開すべきです。
NEDO( 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の特定半導体勘定が、
ラピダスに関するものだとすると、総資産額はおよそ1.3兆円ですが、勘定科目に特殊なものがあり、
よく実態がわかりません。他の民間企業と同じ有価証券報告書のフォーマットで開示することで、
比較可能性を確保し、出資の妥当性の判断に資するものになります。多くの企業が、TSMCに半導体の製造を
依頼するのは、TSMCが独占状態だからですが、それだけでなく、論理合成が完了した設計書を持ち込むと、
回路のクリティカルタイミングや、使われるフリップ・フロップの数を最適になるようにし、製品の歩留まりが高く
安定稼働して、経営的に成功に導くようなアドバイスをしてくれたり、アドバイスをしてくれる企業を紹介
してくれるなどのサービスがいたれりつくせりだからです。財務報告書の開示が特別なフォーマット
を使っているなどの企業の体質が、製造技術は高いけれども、付帯サービスは行わないなど、
ユーザー側の視点でのサービスができない唯我独尊の企業体質につながる懸念があります。
consistentでかつflexibleであるというのは、英語がそれほど得意でないので、良くわかりませんが、
頑固で朝令暮改であるという意味のようです。
日本はまったく無関係であるとも言えません。税制など、本来は将来を見通した一貫した制度であるべきものが、
目先の選挙対策として利用されている現状は、朝令暮改ともいえます。情報公開と説明責任を徹底して、
朝令暮改による無駄な事務経費の発生を防いで、行政機関の活動を将来の発展に資することに集中する必要があります。