各種のコラム --  3ー160 Project Digits は何者だ?!

                                      2025年2月15日  

    3ー160 Project Digits は何者だ?!	
    
   「Project Digits は何者だ?」有名なテレビ番組「プロジェクトX」とは無関係です。
  CES 2025のオープニング基調講演の際、エヌビディアのジェンスン・ファンCEOが持っていた、
  デスクトップ型のミニAIコンピューターです。
  IT業界で時代の変革をもたらす画期的な製品は、往々にして静かに登場することがあります。
  日本では、iPhoneより3Dテレビを大々的に宣伝していました。アメリカでは大騒ぎしていると聞いていましたが、
  それまでのアメリカの携帯電話がボロだったからだと思っていました。
  2−3年経って、スマートフォーンも画期的だし、クラウドでアプリや音楽の配信をする仕組みも画期的だと理解できました。
  Project Digits の出荷は2025年前半なので、まだ詳細はわかりませんが、AIの推論に
  特に重点を置いた製品で、RTX5090などのGPUを使ってローカルLLMを行っているのとは
  少し狙いが異なるようです。Project Digitsに続いて、ノートPCやモバイル・デバイスも
  企画されているのかもしれません。昨年来ノートPCでAIサポートの製品が出荷されていますが、
  これらに搭載されているNPUよりはかなり高性能なものになりそうです。
  
  手のひらサイズのスーパーコンピューターと聞くと、20年ほど前のソニーのPlay Station 3
  を思い出します。20年経っているのでProject Digitsと具体的に共通する部分はありません。
  Play Station 3は、米IBM、東芝と共同開発した32ビットのControl Processing Element
  と8個の128ビットのSynagetic Processing Elementsから構成される
  Cell Broadband Engine(Cell)を使ったゲーム機でした。
  後に副社長になった久夛良木(くたらぎ)健さんが率いたプロジェクトで、普通の発想ならライバルは家電業界のパナソニックや
  ゲーム業界の任天堂と考える中で、自前主義に陥らず他社とアライアンスを組んで、大真面目に米インテル(Intel)に
  チャレンジしたプロジェクトでした。しかし、プレーできるゲームの数が少なくビジネスとしては失敗でした。
  明らかに成果が現れたと感じられたのは、ゲームソフトではなく、東芝レグザの8番組同時録画でした。
  日本のプログラマーが、ゲームのストーリーやグラフックの仕上りについては、ハリウッドのVFXと互角に
  争えるかと思う業績を上げる一方で、通常のCPUのカーネルモードを呼び出すためのスーパーバイザーコール
  に加えて、8個のルーズリーカップルドマルチプロセッサーを制御するためのハイパーバイザーコールの
  扱いなどに興味を示さなかったことで、PS3の特性を活かすゲームはほとんど作られませんでした。
  
  また、20年ほど前に、IT業界の技術革新の象徴は、インターネットでした。
  検索サイトで情報の一部を表示することが、著作権法に触れるのではないかという課題に対して、
  アメリカの著作権法がいち早く対応しました。アメリカの法律なので、アメリカの連邦議会で議決すれば
  手続き上何の問題もありませんでした。インターネットの技術基準になった、RFCも含めて
  アメリカが関税などの手段で脅迫したからではなく、ソ連邦が消滅して東西冷戦が無い時代だったことも
  関連して、ほとんどの国が、世界的に共通のルールの必要性が認識されていたインターネットのルールとして取り入れました。
  現在ではマグニフィセント7などの企業の株式時価総額が巨大になっているので、
  インターネットのルールについて、優越的地位の乱用が問題になりますが、規定が出来た当初の流れは
  きわめて自然でした。
  現在、AIの世界では、DeepSeek(ディープシーク)に見られるように、
  ISA(Instruction Set Architecture)のレベルから、AIのモデルを作るための
  コーディングが出来るまでの段階がオープンソ−スになっていることが既定の考え方になりつつあります。
  このレベルでは、ディープシークは、OpenAIやArmなどより徹底しています。後発の利点を活かしているとも
  言えます。しかし、AIの世界で本当に競争の中心になっているのは、トレーニングのための正確な雑音のないデーターをいかに
  収集するかです。トレーニングのシステムを開発するための技術開発には、自由に利用できるというのが、
  一応の国際ルールですが、このルールを自分に都合よく解釈することが、AIの開発競争の本質とも言える状態です。
  知識蒸留(Distillation)と呼ばれる事前学習済みAIモデル(教師モデル)の知識を、
  別のモデル(生徒モデル)に移転させる学習プロセスも注目されています。
  そして、アメリカが何かのルールを決め、世界にメッセージを発するために毎日署名し続けたとしても、
  世界中が従うような状況ではありません。アメリカの国際的地位は20年前より低下しています。
  AIアクションサミットの場、あるいは国連の機関を新設して検討する必要があります。
  事態の重要性は、国連の安保理事会に相当するとも言える状況です。
  車が自動運転になると、技術的には、誰がいつ、どこからどこへ移動したかの記録が残り、
  ドライブレコーダーの記録から街にどんな建物があるか、誰がどこの建物に立ち寄るか、
  また顔認証で誰が街を歩いているかの分析が可能です。日本政府であれば、マイナポータルに
  顔写真が登録されていても、絶対に町中の監視に使われることはないし、建物の画像が、
  無人機に攻撃目標を設定するために使われることはないという信頼がありますが、
  これからのAIのルール策定には安全保障の問題を避けて通ることが出来ません。  
  
  モーターは、19世紀初頭に電磁誘導の法則が発見され、19世紀終わりに、交流誘導モーターが製造され、
  広く使われるようになりました。そして、モーターの製品の改良に要したおよそ50年間より、
  モーターが広く使われるようになって、蒸気機関を置き換えることで、工場の配置が変わることによる
  その後の50年間の産業全体に与えた影響のほうがはるかに重要だったといわれます。
  AIの研究は20世紀から行われていましたが、20世紀の終わりにチェスで人間に勝利しました。
  そして、AlphaGOが人間の王者にはじめて勝利したのが2015年です。
  それからの10年間、AIの技術が急速に進歩しました。
  生成AIの実用化で、AIの技術の進歩に一区切りついたとも言えます。
  大規模言語モデルや車の自動運転が広まるこれからの10年間は、いままでの10年間より、
  はるかに広い範囲で、生活全般にAIが浸透します。実験が困難なことがある、医療分野にも
  AI技術の浸透が予想されます。これまでの10年間が最先端の半導体が、
  重要な技術開発の鍵だったのに対し、これからは、AIのトレーニングのためのデーター使用に関する
  ルール作りや、各種の産業分野の連携、そして開発者を広く世界的に取り込むことなどが競争の中心になります。
  大規模言語モデルは出来上がって終わりではありません。ドラマ「不適切にもほどがある!」で象徴的に
  現れたように、同じ日本語でも時代の流れとともに何を話しているのかわからないほど、変化します。
  日々の言語の変化を学習済モデルに、なるべく人手をかけずAI自らが学習を続けるAIの開発が必要です。
  また最先端の半導体というだけでなく、各種の産業分野別に最適の半導体の開発も必要になります。
    
  デジタル機器へのデーターの入力や、マニュアルに従ったシステムの運用など、
  ではなく、IT技術に関わるルールを決めたり、アルゴリズムを考えることの重要性が高まっています。
  しかし、これに反する例もみられます。
  例えば、マイナ健康保険証の利用に関して、投薬の記録を参照できることがメリットと言われます。   
  しかし、マイナ健康保険証の利用率の向上がしばしば話題になるのに対して、電子処方箋の利用率の
  向上はほとんど話題になりません。翌月集計のレセプトのデータに基づいて投薬の記録を参照するより、
  電子処方箋のデーターに基づいて、投薬の記録を参照するほうが、リアルタイム性において優れているのではないか
  などが検証対象になりません。医療関係者のなかには電子カルテのシステムが導入された当初、レセプトのシステムと
  電子カルテのシステムは全く別物で人の命がかかっているからIT関係者は口を出すな言う話もありました。
  投薬の記録も命にかかわるものではないか、なぜレセプトのデータに基づく処理で良いのかが、いまだに
  釈然としません。データー処理のアルゴリズムを考えることなく、厚生労働省にいわれれば、
  従うという考え方が、行政のデジタル化の効果を得られなくしています。
  投薬の記録は医療行為に関わるデーターで電子カルテや電子処方箋のデーターに基づいて表示すべきで、
  レセプトのシステムは会計処理に集中して、必要な部分は両者のシステムを連携すべきではないかというような議論が、
  利用者に示されないことが問題です。薬の需要と供給の正確な把握ができず、薬局での在庫不足が問題になっていますが、
  電子処方箋の利用を促進して、薬の需要と供給の把握にも利用できないか検討する必要があります。
  ひょっとするとシステム間の連携処理の考察不足で無駄なシステム投資
  が行われているかもしれません。
  マイナ健康保険証の利用率の向上のために健康保険証を廃止するというのも、利用の事態を考慮した
  取り扱いとはいえません。鉄道でICカードの利用を開始したので、切符の発売を停止しますということはありません。
  利用者が、ICカードの利便性に注目して自然に移行するのを待ちます。  
  資格確認書の新規発行という無駄な事務処理を行うことはありません。
  ドクターイエローに替わって、営業列車による検測が始まります。山陽新幹線の「こだま」は8両編成なので、
  検測装置を搭載した8両編成の列車をつくるのでしょうか。それとも、検測装置を積んだJR東海の16両編成
  の列車による「こだま」を1往復設定するのでしょうか。あるいは回送列車で検測するのでしょうか。
  いずれ山陽新幹線の駅にもホームドアが設置されるでしょうから、16両編成の営業列車を1往復設定
  するかもしれません。新大阪駅の20番線は、通常8両編成の列車が使いますが、以前から、16両編成の
  回送列車が入線していましたが、ホームドアが設置されて以来、16両編成の「ひかり591号」が使用します。
  医療分野と鉄道は無関係のようですが、どのようなデーターベースを作成してどの業務と関連付けるかの発想は、
  どの列車で何を検測するかを計画するのと類似します。現在のドクターイエローの「こだま検測」は
  月に1回程度なので、ドクターイエローが検測しないホームは夜中に人間が必要な検測をおこなうことがあります。
  営業列車のホームを日によって替えることはめったにないので、どのようなダイヤになるか注目です。
  業務をアナログからデジタル化する際、窓口で人間が行う必要が残るのは何かを検討する必要が
  あるのと共通する発想です。そして、能登半島地震の際、避難所でマイナンバーカードによる本人確認
  に問題があったので、運用に不具合があったら原因を究明して次は問題ないようにしなければならないことも共通です。
  アマゾンが電子処方箋の分野に静かに参入しましたが、次の感染症の大流行の時は、医療に必要な
  物はアマゾンで翌日配送という時代になるかもしれません。この20年間に書店に起きたことは、
  他の業種でも起こる可能性があります。
  そして、4万円の定額減税も去年だけの話として扱われていますが、すべての手続きが完了しているわけではありません。
  2023年は通常の課税所得があり、2024年5月の住民税の納税通知書でひとりあたり1万円の定額減税の
  扱いを受けたが、その後、バイトが雇止めになったり、雑損控除に該当するような事象が発生し、
  2024年度の課税総所得金額がゼロだった場合、所得税の確定申告書を提出しても、
  定額減税調整給付金が支払われるわけではありません。
  源泉徴収所得税額の還付金は、確定申告書を提出すれば、指定した口座に振り込まれますが、調整給付金は、
  国税庁・税務署の管轄ではなく、総務省・市町村の納税課あるいは定額減税調整給付金プロジェクトから
  支払われます。税務署で市町村の納税課に問い合わせるように言われ、実際に問い合わせたところ、
  現状では何も決まっていないということでした。まず2025年5月に2024年分の住民税の均等割の金額を払い、
  8月ごろに何らかの通知をするかもしれないということでした。逆の人がどうなるかも課題です。
  2023年は課税所得がなく、2024年8月に市町村からの通知に従い、ひとりあたり4万円の給付を受けた
  人が、2024年12月に高額の勝馬投票券の払い戻しを受け、一時所得の確定申告をする際、
  各人が注意して、定額減税の申告の項目を外さなければいけないようです。市町村から連絡が来ているのか
  どうかはわかりませんが、不注意で、給付金を受け取った人が、定額減税を受けた場合、修正申告の依頼が
  来るのでしょうか。定額減税は2024年の衆議院選挙のためで、所得控除額の引き上げは、
  2025年の参議院選挙のためという政治家には期待できません。税務署と市町村の納税課というように
  物理的に別の窓口であっても、バーチャルの世界で、住民ひとりひとりの徴収額・給付額を合算できるのが、
  デジタルシステムの利点です。これこそ、事務処理の人件費を節約し、同時に給付金を早く支払うことで、
  住民サービスの品質を向上する典型例なのですが、「一位じゃないとダメですか」というような、
  パーフォーマンスのために、無駄な会議を開き無駄な資料の作成を要求して、開発者の時間を奪うだけで、
  政治家から具体的な行政コストの削減のための議論を聞くことができません。
      
  政治資金改革も、改革したくない人達が集まって議論しているようでまったく進みません。
  2月2日の朝日新聞の社説には、”94年の政治改革には、政治家が複数もつ「財布」を一つにする狙いもあった。
  現実は、政党支部などを通じた不透明な資金移動が続いている。
  わざわざ突合しなくて済むよう、受け皿を一本化する方が透明化に資する。” と書かれています。
  30年前の政治資金改革では、もっと本気の議論が行われたことがわかります。しかし1994年の時点の技術では、
  「財布」を一つにするためには物理的にひとつにする必要があり、困難な点があります。
  経理の大原則で、領収書などの証憑書類は原本でなくてはなりません。コピーをもとに仕訳をすることはできません。
  しかし、現在のIT技術を使えば、いろいろな集計方法・公開方法が有ります。
  政治資金管理団体が、寄付金などを受領する場合、必ずデジタル・インボイスを発行することにします。
  政治資金管理団体間や派閥との資金移動もすべて、デジタル・インボイスを発行することにします。
  デジタル・インボイスの実態はXMLのファイルなので、政治資金管理団体と政党で情報を共有することができます。
  政治資金管理団体が作成した個別財務諸表を合算して、政治資金管理団体間の取引を相殺消去して、
  政党の連結財務諸表を作成し、デジタル・インボイスをもとに政党をひとつの帳簿組織として作成した、財務諸表の
  数字が項目ごとに数値が一致すれば、相当会計処理の網羅性・正確性が担保されます。
  さらに連結財務諸表・個別財務諸表をXML、XBRLまたはJSONのファイルで公開し、外部の第三者機関が、
  財務諸表と会計帳簿の監査をおこなう必要があります。
  
  ところが消費税の仕入れ税額控除に関連して、インボイスに反対する政党があります。
  インボイスが、中小事業者を消費税課税事業者にするための手段として使われ、多くの事業者が
  事業者番号のはんこをつくって対応している状況なので、そのようなことになっていますが、
  本来なら、輸出免税(ゼロ%課税)の事務処理にデジタル・インボイスをつかって、効率性と正確性の向上
  を目指すなど、インボイス制度をやめるのではなく、デジタル・インボイスの利便性が得られるような
  仕組みを考えるべきでした。そして、政治家自身が会計処理の透明性の向上のために
  デジタル・インボイスを積極的に利用すべきです。
    
  最近の道路陥没事故に関連して、水道・下水道などの公共設備の保守・管理が課題になっています。
  公共設備は、新設に重点が置かれて、保守・管理の仕組みが確立されていないということは20世紀から
  問題になっていました。1970年代に、一部の鉄道の幹線で、保守の不備から事故が起きたりするいっぽうで、
  ほとんど利用される見込みのない新線が建設されていることが問題になりました。
  10年ほど前の高速道路の天井板崩落事故でも保守の不備が問題になりました。
  民間の会計と異なり、減価償却の仕組みがないことが適切な修繕費の予算計上の妨げになっているとか、
  いろいろ言われますが改善されません。公共設備の保守・管理にも会計の面も含めた情報の保管と分析が
  必要になります。システムにも同じ事がいえます。一度開発したシステムをいかに継続して、保守・更新するかを
  考えないと、新規開発を前提とした事業推進ではお金がかかるだけで、システムの恩恵が得られません。
  AIが必要な情報を収集してシステムのバージョンアップを行うのも、
  AIの強化学習やSDVなどと同様重要な技術です。
  
  このような行政のデジタル化に関連する問題を解決するのに、意外と効果があるのが、皆が、
  AIやIT技術の知見を深めることです。そんな高度なことをする必要はなくて、
  例えば、Project Digitsを購入して使ってみるというのも選択肢のひとつです。
  今はまだ50万円位になりそうなので、高価ですが、いずれ20万円くらいになると思われるので、
  自分で購入して、AIモデルを動かしてみると、皆が行うことで界隈がにぎわい、専門家の話を
  聞いてみようという人が増えてきます。国全体のAIやIT技術の向上につながる可能性があります。
  それではこれから10年間何をするべきでしょうか?考えても分りませんが例えば天気予報について考えてみます。
  天気予報の的中率が90%といっても、実際は、ほぼ完璧に的中する状態とまったく予期せぬことが起きる
  状態とも言えます。流体力学の解析では、偏西風が一様に吹いているような層流の状態の解析は完璧に出来るが、
  何かの理由で突然に渦ができて乱流の状態になると予想が外れるとも言われます。
  突然の渦の典型例は竜巻です。誰が見ても晴れてると思うような日の15分先の気象予想と、
  いつ竜巻が起きるかわからないような状態での15分先の気象予想に必要な計算量がほとんど変わらないという
  可能性もあります。そして天候以外の分野でも突然に渦ができて乱流の状態になると、場合によっては、飛行機の主翼の揚力を
  奪い取るというようなことが起きました。突然に渦ができて制御できない乱流の状態
  になることを防ぐために、機械装置の円柱の部品に、トリッピングワイヤという針金を貼り付けて、
  制御された流れの剥離をあらかじめ起こすというような設計も行われます。
  FEMで偏微分方程式を解くには、層流と乱流を区別するレイノルズ数の違いが
  大きく影響するかもしれませんが、LLMのように、すぐ次の単語や、すぐ隣の状態を予測するという
  考え方なら、関係なく突然発生する乱流の状態の解析が可能になるかもしれません。
  このようにAIが得意な分野と、それが、日々の生活にどのように役立つかを結びつけることが、期待されます。
  そして、竜巻は日本でも大問題ですが、アメリカ中部でも深刻な問題です。
  このような世界共通の課題の解決にAIの技術を活用する時代になるということが出来るかもしれません。