各種のコラム -- 3ー157 日本の自動車産業は大丈夫か?
2025年1月15日
3ー157 日本の自動車産業は大丈夫か?
日本の自動車産業は大丈夫か?というのは、昨年、検査データーの不正などの問題があったが、安全性は
大丈夫かという意味では、ありません。日本の車の品質、安全性はトップクラスで、これからも
変わらないと思っています。エヌビディアがトヨタなどと共同で、次世代の車両を開発するという発表がありました。
あわせて、生成物理(ジェネレイティブ・フィジカル)AIの発表もありました。
また、情報系の車載OSのシェアではグーグルがおよそ7割というニュースもありました。
このようななかで、日本の自動車産業が今後も、主要な輸出産業としての地位を保っていくことに
死角はないのか、大丈夫なのかという意味です。
現在の車は、ECU (Electronic Control Unit、エレクトロニックコントロールユニット)
というブレーキ、エンジン、ステアリングなどの制御を行うための、独立したマイコンによるシステムが
100個近く搭載されています。一つが故障しても、他のシステムには影響が及ばないという利点がありますが、
システム間の連携に課題があり、ケーブル類も沢山必要になります。
システム間の連携の課題というのは、カーナビの時計と、車のメーターパネルの時計が秒単位で微妙にずれているとか、
ドライブ・レコーダーの速度と、スピードメーターの速度が微妙にずれていて、
特に交通事故の時いつ止まったかの解析が複雑になるなど、素人でも気づくような領域の課題もあります。
これらを車載OSで統一して制御するようになると、ブレーキ、エンジン、ステアリングなどの制御システム間の
連携が容易になります。情報系の車載OSも、グーグル製になると、グーグルマップとの連携は
よりズムーズになります。OSの重要な機能の一つが、HAL(Hardware Absorption Layer)
とよばれるハードウェアーの違いを吸収して、アプリから統一のコマンドで制御できるようにする機能です。
あるOSが広まると、サポートの対象になると、販売数が増えるので、ハードウェア・デバイスも
アプリもそのOSに対応するようになります。
そして、どのようなOSが広まるかは、やってみるまでわかりません。技術的に優れていれば広まるというものでは
ありません。Windows95が人気になった頃、OS/2というPC用のOSがあり、OS自体の機能は
優れていたのですが、サポートするアプリが少なかったためにまったく人気がでず、しばらくすると
販売されなくなりました。そして、OSとともに、重要なのがIDEと呼ばれる、統合開発環境です。
グーグルのAndroidであれば、Android Studioと呼ばれる、無償で提供される、
統合開発環境を使います。アプリの開発者にとっては、無償でつかえるというメリットがあります。
そして、グーグルには、皆がどのようなアプリを作っているかの統計情報が集まってきます。
日本の自動車メーカーが、半導体、AI、OS、ソフトウェアー開発環境、モーター、パワー半導体、車の完成車の組み立て、
車の走行状況の把握などの、各種の分野のなかでどのような位置づけになるかを考える時、
将来も日本の自動車産業は大丈夫かという懸念があります。
ガラケーがスマートフォーンになったように、機能的に問題があったわけではなくても、突然に
新しい製品に置き換わることがあります。日本の携帯電話機の端末の製造メーカーは、
独自のOSで動く端末を製造し、似たような機能でも各社ごとに専用のアプリが導入されていました。
そして、SIMロックがかかった、各携帯電話会社専用の端末として販売していました。
Android携帯のように、アーキテクチャーを決める企業があり、SoCを作る企業があり、
端末を作る企業があるという水平分業と規模の経済性が支配する新しい世界と比べて、製品製造コストが
高くかかるようになりました。製品そのものより、ガラケーの端末の製造メーカーが、携帯電話会社の下請けの
ような位置づけだったことが、衰退の原因だったかもしれません。
IT関連では、20世紀の終わり頃から、日本では的外れの対応がいくつかありました。
ワープロソフトのメーカーが異なると、まったく文書が読めない状況だったので、社内のワープロソフトを
統一するとか、社外の情報交換をどう行うか、多くの企業でまじめに考えていました。
しかし、インターネットが普及し、htmlのタグ付けで一気に解決しました。
同じ頃、ホストコンピューターのメーカー専用の通信プロトコールの機器とインターネット機器との接続
でトラブルが続出しました。接続テストを行うなどのビジネスが盛んでした。ホストコンピューター用の、
インターネット接続のためのTCP/IPのソフトの開発は主に海外のメーカーで行われました。
トラブルが出ている状況だとテストを行うと必ずビジネスになるので、
接続マニュアルを作るなど、数年後には不要になるようなビジネスに多くのエンジニアを投入しました。
また、銀行で言えば情報系と勘定系、医療系ではレセプトのシステムと電子カルテを厳重に区別して
ミッションクリティカルなシステムには、特別なエンジニアを投入するというのも、
日本のIT業界の慣例でした。しかし、現在医療のIT化は遅れ電子カルテの情報は有効利用されていません。
Android Automotiveのように携帯と変わらないようで、じわりと広まる
ソフトウェアーの動向を注視すべきです。
日本製の自動車の輸出がアメリカで貿易問題になっていたので、通産省(経産省)が、
IT技術ではアメリカと競争しないという方針だったことも大きく影響しました。
それから20年経って、車もSDVの時代になって、後がなくなっています。
海外の技術をとりいれて製造業を国際化すること自体は良いことですが、
何がエコシステムでキーストーン種は何かを見誤らないようにする必要があります。
一時期、内燃機関はなくなってバッテリー電気自動車に置き換わるといわれたことがありましたが、
昨年あたりに突然風向きがかわって、トヨタのような全方位の開発が正解だったといわれています。
中国のBYDでも、実際は、プラグインハイブリッドの生産台数を伸ばしています。
自動運転の際の制御の容易性を考えると、エンジンで走行して、バッテリーでアシストするタイプより、
エンジンは発電専用で、駆動は、パワー半導体とモーターで行うタイプが主流になるかもしれません。
JR東海の高山線を走っているハイブリッドの特急列車も、このようなシリーズ・ハイブリッド
といわれる方法を採用しています。そして、ハイブリッドのバッテリーを使って、回生ブレーキをかけますが、
バッテリーにはそれと並ぶ重要な役割があります。以前の特急列車は一両に2台のエンジンを積んでいましたが、
ハイブリッドの特急列車は1台しか積んでいません。それで発電機を回してモーターを回しても、
上り坂で同じ速度を出すことができません。そこでバッテリーからも電気を供給してモーターを回して
同じ速度を出すようにしています。ですから、上り坂の前では、バッテリーが十分に充電された状態に
する必要があります。鉄道はダイヤに従って、決まった場所を走っているので可能ですが、
上り坂の先が下り坂という場合は、あまり充電しすぎると、下り坂で回生ブレーキが十分に使えないので、
微妙な調整が必要です。どれくらいの人が乗っているか、さらに鉄道のエアコンは、家庭用のものの、
20倍位のパワーなので、その日の温度によっても、バッテリーの充電率の調整が必要です。
車では、どこを走るかわからないのでこの方法は使えませんが、車載OSが走行状況を把握して、
メーカーにデーターが蓄積されるので、高速バスや長距離トラックなどのように、相当決まったルートを
走っている場合はデーターを分析すれば可能になります。
電車は、10両編成1編成で1年間で5,000万円から1億円位の電気代を払っているので、
営業車両は少しでも電気代や燃料代を節約する効果は大きいです。
日立は、エヌビディアと協力して、鉄道の保守などに、AIの技術を使っています。
自家用車でも自動運転になると、目的地を決めて運転するので、詳細な地図をつかって、
電気代や燃料代を節約する走り方を車載OSが選択して走行するようになります。
さらに走行データーの分析から、小さなエンジンや小さなバッテリーでも運行できるとわかれば、
車両の設計にも大きな影響があります。誰がどのように移動するかの統計情報が集まると、
電気代や燃料代を節約をはるかに超える、いろいろなビジネスに繋がる情報が得られます。
1990年代に、新幹線の車両などの空力設計が、風洞実験などを中心としたものから、それ以前の
設計段階での、CFD(Computational Fluid Dynamics)による分析で
相当詳細なことがわかるようになり、設計の業務効率が上がり、あわせて製品の性能も向上しました。
生成物理AIを取り込んだ、設計開発環境が普及すると、統合開発環境がアプリの開発に欠くことができないように、
車の設計の際に、試作などの回数を減らしても、悪天候などの異常な状態を含む実際の走行状態のシミュレーションが、
可能になり、車の設計の時間が短縮され、しかも品質が向上します。
今まで、試作ラインやテストコースを持った、車の完成車の組み立てを行う会社が独占していた、
詳細な設計方法や、走行時のシミュレーションのデーターが、設計開発環境を提供するメーカーも共有するものになります。
以前、アンチロックブレーキを他のメーカーが類似のものを作成できないように、チップ化しない時代がありましたが、
車全体の設計データーが、システム上に設計開発環境を作るメーカーも共有するものになろうとしています。
ロジック半導体のチップの設計に、統合開発環境と、波形のシミュレーション環境や、
ILA(Integrated Logic Analyzer)が欠かせないように、車の
設計に、システム上の設計開発環境が必須のものになっています。
自動運転の車を設計する時にも、実地走行の前に、3D点群マップの地図の中を、
シミュレーションの車が走行し、トラブルの状況も含めて、再現検証する必要があります。
車が自動運転になると、自動運転のタクシーなどの利用が中心になり、今ほど車が売れなくなる恐れもあります。
一方で、これまではわからなかった、車の使用者の詳細な使用状況を、車の完成車の組み立てを行う会社が入手
できるようになり、MaaSの事業分野に進出する可能性もあります。
新しい事業への参入も含めて、日本の自動車産業は、どのように事業を継続し、収益を得るかを
考える必要があります。
CES 2025では、NVIDIA Project DIGITSというカステラが2本ほど入るくらいの箱
も発表されました。1つ目の注目点は、Grace Blackwellという最新のテクノロジーを採用している点です。
現在のH100のGPUは、500万円から1,000万円以上しますが、最新テクノロジーが安いマシーンに
搭載されました。最新の技術をPCに搭載して、実績を積んだ技術を高負荷・高信頼性が要求される、
クラウドマシーンに搭載するという通常のスタイルに近づいてきました。AIが普通に普及する技術になってきた
と感じます。2つ目の注目点は、Ubuntu Linux 22.04をベースとした「NVIDIA DGX OS」
が動作している点です。ここでもOSが鍵になります。そして、Ubuntuが最新の24.04などではなく、
22.04だということです。安定版をリリースするために、NVIDIAのOSの開発期間が
一定期間かかるということだと思いますが、30年前は、一人の学生の着想で開発された、Linuxも、
開発者の高齢化が話題になることがあります。これからのOSがどのようなものになるか注目です。
そして、このような個人でも購入可能なマシーンで、AIが開発されるようになると、ほとんどの制作物が、
ガラクタであるにもかかわらず、全体の技術レベルが急速に向上します。
自動車産業に限らず、ドクター・イエローは10日に一回ほど検測して、不良があった場合は、その日の夜に
保全しますが、これからは営業列車で毎日検測するようになります。
分野は異なりますが、GDPの1次速報値、2次速報値という行政の統計情報の公表方法も、リアルタイム性を
考慮したまったく違った方法にすると、社会的にどのような影響があるのかを考える必要があります。
毎朝、昨日の、1日のGDPを発表し、4月1日には、1〜3月期のAIが推定した、限りなく
確定値に近い数字を発表することも可能になるかもしれません。(ならないかもしれません。)
NTTのフレッツポイントが終了します。実質値上げなので、大歓迎ではありませんが、
公共料金に近いものでは、ポイントを管理するシステムや会計システムに投資するより、少しでも
料金を安くして欲しいと思うので、将来の値上げが抑止されるのであれば歓迎です。
公共料金で付与されるポイントが料金の支払いには使うことができず、自動変換の登録もできず、
ECサイトで使えるポイントに変換しようとすると、2段回の変換が必要で、リアルタイムにはできない
サイトをみると、このシステムを設計した人は、自分でポイント変換をやったことがないのかと思います。
自動車産業に限らず、あらゆる業界で、これまでの慣習にとらわれない利用者の利便性の向上を
めざした新しいビジネスのあり方を考える必要があります。