各種のコラム -- 3ー154 178万円を目指して引き上げる??
2024年12月14日
3ー154 178万円を目指して引き上げる??
給与所得者に、所得税が課税される「年収103万円の壁」のボーダーラインを178万円に引き上げることで、
特にパートやアルバイトの人の「手取りを増やす」ことを訴え、国民民主党が注目をあびています。
このニュースが注目されたのは、衆議院の総選挙のころからで、11月頃には、
年収103万円の壁だけでなく、100万円、103万円、106万円、130万円、150万円、201万円の、
6つの「年収の壁」があることが、話題になりました。
また、ボーダーラインを178万円に引き上げると、税収の減少額が7兆円から8兆円にまで達することが話題になり、
地方は最大5兆円の税収減(地方交付税交付金の減少、およそ1兆円を含む)になるといわれ、
何人かの県知事の人が大反対を表明しました。
現在、所得税の基礎控除額は48万円で、住民税の基礎控除額は、43万円です。
それなら、年収98万円の壁になるのではないかと思われますが、
住民税(所得割)については、総所得金額等が45万円以下の場合は非課税となるという規定があるので、
給与所得控除額55万円とあわせて、給与の支払い総額が100万円以下なら、非課税になります。
そして、例えば、給与の額が120万円の人の税額は、
他の所得控除の金額や、市町村独自の税金もあるので、目安としての金額ですが、
所得税が、(120ー103)*5% = 8、500円
住民税の所得割 (120ー98)*10% = 22、000円
さらに均等割5、000円が加わって、27,000円になります。
年収103万円の壁については、マスコミでも連日のように取り上げられており、
12月11日に、自民、公明、国民民主3党の幹事長は、国会内で会談し、
来年度税制改正の焦点になっていた所得税がかかる最低ライン「103万円の壁」について、
「国民民主党の主張する178万円を目指して、来年から引き上げる」ことで合意しました。
178万円を目指して引き上げるとは具体的に、どういうことでしょうか?
仮に、高速バスが、大阪を目指して運行すると言ったけれど、翌朝目覚めたら、静岡だったとしたら、
不満が続出します。
現在、臨時国会が開かれているので、所得税法と住民税に関連する地方税法を改定して、
2025年度から、所得控除の基礎控除額を現在の48万円から、123万円に75万円引き上げます
といえば、随分スッキリします。住民税の基礎控除額は現在43万円すが、
どちらも123万円にすると随分スッキリします。
金額の問題だけでなく、今決めることに意味があります。
多くの会社の経理では、12月に行った年末調整の結果に基づいて、2025年1月31日までに、
2024年度の給与所得の源泉徴収票を作成します。2025年1月には、それとあわせて、
2025年1月分の給与所得の源泉徴収の額を計算し、2月10までに、納付します。
ですから、2025年度の処理が、1日でも早く決まることに大きな意味があります。
それに対して、178万円を目指して、2025年度には、まず103万円を123万円に引き上げるなどの
議論を初めて、法改正の決定が遅くなると、多くの業務に支障が発生します。
税法の改正は、自民党の税調の人が検討して、年末に税制改正大綱を定めて、通常国会で決定するというような、
法律で決まっていることではない、慣習にとらわれて立法、行政を行うと、
社会のデジタル化の時代に対応できない、昔ながらの業務のやり方にとらわれることになります。
2025年の所得税、住民税の減税がどのように行われるか、まだ具体的に決まっていませんが、
2025年度の途中から、例えば、参議院議員選挙の直前から、源泉徴収の方法を変更するなどすると、
昨年の定額減税と同じで、1年限りしか使わないシステムのための、多額の無駄な、事務経費が発生します。
現在、5公5民といわれるくらい、税金や保険料の租税公課の負担が高くなっています。
昭和の時代は所得税の税率はもっと高かったといわれますが、これは、高額納税者の名前が税務署から
発表されていた時代で、高額納税者の税率だけが高かったのであって、一般の人の税率はそれほど高くなかったです。
租税公課の負担が高くても、北欧の国のように、高齢者は、給付金で寿命まで経済的不安なく生活できるということなら、
納得できます。しかし、今の日本のように、減税が政治家の宣伝材料として利用され、将来の生活の不安が解消できない
状況だと、多くの人に不満が蓄積します。
イギリスにおける大憲章(マグナ・カルタ)の承認に見られるように、、西暦1215年、英国の貴族たちが、
当時のジョン国王に対して、大憲章を承認させたことで、国王は、租税を勝手に課することはできなくなり、
租税を課するには、国民の代表に、その承諾を求めねばならないことになったのです。
代表なくして課税なしといわれるように、国王の権利を制限し、人権思想の起源と考えられています。
このように、国王の権限で租税を勝手に課することはできなくなり、租税を課するには、国民の代表に、
その承諾を求めねばならないというのは、人権思想の起源と考えられています。
現在の日本は租税法律主義はもちろん憲法で保証されているのですが、現実的に
減税が政治家の宣伝材料として利用され、将来の生活の不安が解消できない状況は、
国の滅亡につながるかもしれないといわれるほどの危機的状況です。
ケインズは、人口の爆発的増加が終焉を迎え、政策金利がゼロ%程度になる時、資本主義は終焉を迎えると言いました。
(直接聞いた訳ではありません。それ以上に経済学を勉強したことがないので、間違いかもしれません。)
デフレ経済は設備投資が抑制されるなど、決定的に良くないので、
インフレ率は2%位が良いと言われます。しかし、インフレ率が7%だと10年で物価が2倍になると言われるように、
インフレ率2%は決して無視できる数字ではありません。社会がデジタル化され、正確な測定が簡単に行われるように
なると、インフレ率は0%位がよくなるかもしれません。
政策金利がゼロ%程度だった日本は、時代の最先端を進んでいたのかもしれません。そんな中で、
新しい資本主義といいながら、50年位昔の新自由主義経済をめざし、政策金利を引き上げようとしているのは、
根本的な間違えた政策かもしれません。本来の意味で、現在の資本主義が終焉を迎えた後の
新しい資本主義とは何かを考える必要があります。
世界の株価について思うことがあります。
現在アメリカや日本など世界各地で、株式市場が活況で株価が上昇しています。
一方で、日本の経済アナリストの人で、日経平均株価が、3,000円まで暴落するという人がいます。
株式の公開市場があることは、企業が事業資金を集めるために必須といわれます。
しかし、OpenAI社に見られるように、非上場でも十分に資金を集めることが出来る企業があります。
OpenAI社は特殊な例ですが、日本の企業でもMBOを行う企業がいくつかあります。
また、利益剰余金は積み上がっていて、現預金はたくさんあるので、ROEをあげるために、
自社株買いを行う企業もいくつかあります。
このような状況のなかで、上場株式の株式市場は、企業が事業資金を集めるための場所というより、
投機的な投資家が、株式の転売益を得るための場所になっています。
投機的な投資家による市場は、両津勘吉と中川圭一が争うと必ず中川圭一が勝つ市場だと、私は思っています。
実際のマンガにそのような話は無いし、両津勘吉なら超法規的手段を使うかもしれないので、結果はわかりませんが、
投機的な投資家による市場は、リスクをとることができる超富裕層がかならず勝者になります。
企業から見て、返済期限がある銀行からの借入金より、株式のほうを好みます。引き換えに、平均して金利より
高い配当をおこなう必要があり、資本コストは高くなります。投資家から見て、事業活動で得られる、
将来キャッシュインフローから得られる配当金が目的なら、株価が高すぎれば投資しません。
しかし、転売が目的の投機的な投資家は、株価が上がっているうちは転売目的なので、いくらでも投資します。
チュウリップの球根も、花を育てるのが目的の人は、花が売れる値段や、趣味にかけることができる費用など、
ある値段以上ならかわないという限度があります。しかし、転売が目的の人は、今より高く売れれば良いので、
値段に制限はありません。最終的に価格のバブルがはじけるまで買い続けます。
20年ほど前に「年収300万円時代を生き抜く経済学」という本が出版された時、
年収300万円というのは、超富裕層とその他多くの低所得者に分断された社会を象徴する言葉であって、
実際に年収300万円以下になるという意味ではないと思いました。
しかし、実際に、フルタイム勤務で年収300万円以下の人がたくさんいる社会になりました。
日経平均株価が、3,000円まで暴落するというのも、象徴的な話ではなくて、
実際に起こるかもしれないと思うようになりました。