各種のコラム -- 3ー150 地方創生と防災庁設置
2024年10月15日
3ー150 地方創生と防災庁設置
10月4日に、石破茂首相による、所信表明演説がありました。
「ルールを守る」「日本を守る」「国民を守る」「地方を守る」「若者・女性の機会を守る」
という守りに徹した内容でした。
まず最初に、政治資金問題で失われた政治への信頼を取り戻すというテーマが語られ、相当野次が飛びました。
政治資金規正法違反で起訴されたのは、自民党の関係者です。しかし、共産党以外の野党について、
どれほど透明性を確保した政治資金収支報告が行われているのかについて疑問を持っています。立憲民主党の議員も
政治資金パーティーを開催し、寄付金を受け取っているが、正確で適正な収支報告が行われているということでしょうが、
公開基準も含めて、我々が検証可能な形で、透明性を確保した収支報告がおこなわれているわけではありません。
野党の事情については、所信表明演説で言及することではありませんが、今月中に行われる、衆議院議員の総選挙では、
政治資金問題について、一方的な追求や、紋切り型の説明ではなく、各候補者が、有権者が納得できるような
所信を表明してもらいたいです。
地方創生については、 デジタル田園都市国家構想実現会議を発展させ、「新しい地方経済・生活環境創生本部」を創設し、
地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増することを目指すそうです。デジタル田園都市というのはどんな都市なのか
よくわからないうちに、実現会議は発展的に解散するということのようです。
ふるさと納税6年連続関東地方1位の茨城県堺町では、PFI(Private Finance Initiative)という、
公共事業を実施するための手法を用いて、公共事業等の建設や維持管理、運営などを、民間企業の持つノウハウや資金を活用することで、
低廉かつ優れた品質の公共サービスの提供をめざしています。その一環としての、地域優良賃貸住宅整備事業は、
マンションタイプだけでなく、一戸建て住宅も加わり、6万8,000円の家賃を払って、25年間住み続けると、
土地と建物が境町から無償譲渡されるという支援です。破格の支援のように聞こえますが、
25年家賃を払い続けると、総額は、2,040万円になります。東京都心と比べると、土地が安いので、
宝くじなみというような内容ではありません。頭金なし金利なしで住宅を購入するような感じです。
この事業は、ふるさと納税や、国の交付金、それからPFIによる民間企業の資金調達で行われています。
そして、堺町には、25年間以上、住民税が入ります。
地方創生は、このように地方自治体自身がよほど強い思い入れとリーダーシップを発揮してはじめて可能になります。
デジタル田園都市というのは、東急、田園都市線とは無関係です。東急、田園都市線は鉄道会社が、デベロッパーとなって、
鉄道建設と住宅の建設販売を行いました。東急、東横線の田園調布も同じような形態で開発されました。
鉄道会社が、都市のデベロッパーになるというのは、どの会社もやっているようなイメージですが、そうではありません。
例えば、多摩ニュータウンは、宅地開発は公的機関によって行われ、小田急や京王は、鉄道を建設して運用しているだけです。
小田急も、過去には、中央林間都市という、江ノ島線の南林間や中央林間の駅付近で、大規模宅地開発を
行ったことがありますが、第2次世界大戦以前で、新宿から遠すぎることもあって、事業はあまり軌道に乗りませんでした。
それ以来、大規模な宅地の開発には手をつけていません。
地方創生とか、ベッドタウン開発には、開発者側に長期間関与し続ける覚悟がないと、上手いこといきません。
国からの交付金ありきで、事業を進めると、地元負担もあって、冷静に考えると、ほとんどメリットがない、
プロジェクトにも、地方の政治家が負けるわけにはいかないという雰囲気のなかで、応募することがあります。
住民税の所得割の税率は10%です。所得税の税率が5%のような所得が低い人には重税ですが、所得税の税率が45%の
高額所得者には、負担率が低くなります。 これを所得税のように超過累進税率にするなど、地方の財源も含めて、
地方自治の役割を見直す必要があります。千年単位で見ても類を見ない人口減少、生成AI等の登場による急激なデジタルの進化
というなら、地方創生の交付金を倍増するが、首相がかわればまた名称や方針が変わるというような政策ではなく、
もっと長期的に見てだれもが納得できるような政策が必要です。
防災庁設置については、国民を守るのなかの(防災、東日本大震災からの復興)のなかで表明されました。
防災に力をいれることに異存はありません。しかも、民間資本だけではなかなか取り組みが困難な事項です。
能登半島地震と豪雨災害について補正予算についての具体的言及が無かったのは残念でした。
予備費による復旧工事と補正予算によるものでは、入札プロセスや工事単価に違いがあります。
防災については、国の予算でなければ出来ないことが多くあります。
一方コロナ禍については、乗り越えた事という位置づけでした。コロナ感染症は今も無くなったわけではなく、
他の感染症がいつ流行するかわかりません。一時話題になった、米国CDC(疾病対策予防センター)のような組織
をつくるという話は聞かれなくなりました。これは国の予算で事業を行う場合に問題になることであり、
行政機関の予算は基本的に単年度主義なので、事業が継続的に行われる保証がありません。
コロナ感染症の時整備された、HER−SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)や
VRS(ワクチン接種記録システム)やワクチン接種予約システムがいずれも2024年に運用を停止しました。
ワクチン接種予約システムはいろいろな予防接種に拡大して継続すると医療のデジタル化に資するものです。
感染者の報告は、一部の医療機関の紙による報告に戻り、ワクチン接種については、個別に医療機関に
電話する形にもどり、かかりつけの医療機関でないとワクチン接種が受けられない状況の地域があります。
医療と業務のデジタル化はよほど相性が悪いという印象です。デジタルシステムは、バージョンアップしながら
継続して使用していないと、感染症が流行してから、もう一度稼働させようとしてもトラブルが起きます。
マイナ保険証の実質的強要より、HER−SYSのシステムでどのような運用上の問題があったのかを分析し、
継続して運用することのほうが重要です。ワクチン接種については、個別に医療機関に電話がかかってくることに対し、
医療機関側が仕事が増えて大変だ程度の反応なのをみると、医療機関はずいぶんお金の無駄遣いがあるという
印象です。一般の民間会社なら、かかりつけの人でないとワクチン接種は出来ませんと言って断るだけの、
付加価値を生まない業務に、人件費をかける余裕は無いのが一般的です。
随分と評判が悪かった、COCOA(新型コロナウイルス接触確認アプリ)ですが、どの場所で、どんな行動が
感染症拡大の要因になっているということの記録をとることにまったく価値が無かったということでは
ありません。何が良かったか何が悪かったかを詳細に検討する必要があります。そうしないと、
次に感染症が流行した時、同じ間違いをします。
防災に関しても、2019年の台風15号の際、多くの携帯基地局でバッテリーが切れて、携帯電話が
使えなくなったことが問題になりましたが、携帯電話会社がバッテリーを補充するなどの対策をとって
いる他、国として統一した対策をとる動きはありません。今年の能登半島地域の災害でも、問題になりました。
携帯基地局にペロブスカイト太陽電池を貼り付けるとか、人工衛星による携帯電話網の構築などを国全体で進める必要があります。
10月2日に、午前8時20分頃から、午後6時45分頃まで、マイナポータル全般が利用しづらい状況が発生するという
システム障害が発生しました。同じように、新幹線が止まったり、携帯電話が不通になれば、マスコミで
頻繁に状況が発表されますが、私は障害が発生したことを、お昼ごろになってはじめて、X(旧Twitter)で
知りました。これは非常にまずい対応です。クラウドのシステムに障害が発生したら、いち早く
システムに障害が発生したことを公表しなければなりません。そうしないと、利用者は、システムの障害か
自分だけの不具合かわからないので、繰り返しアクセスを試みます。これがシステムに対する
いつも以上の負荷になり状況をさらに悪化させます。マイナポータルに時々障害が発生しても、
災害時には問題が起きないだろうというのは、安易で間違えた考え方です。
防災は防災庁の仕事、マイナポータルは、総務省の仕事という縦割りの発想をやめて、
防災と行政のデジタル化を一体の事としてとらえなければなりません。
公表されていませんが、マイナポータルにアクセスできなくなった時、マイナ保険証の受付には問題なかった
のかどうか非常に気になります。マイナ保険証には災害などの際に広範囲に、一斉に病院の受付ができなく
なるリスクがありますが、どのような対策がとられているのか公表されていません。
サイバーテロを仕掛ける側から見ると、災害発生時に、ネットワークやマイナポータルの機能を抑止して、
マイナ保険証を使えなくするというのは相当可能性が高いと思いますが、省庁横断の十分な対策が
必要な項目です。
所信表明演説では、日本を守るのなかの、(外交・安全保障)のなかで、日米同盟をはじめとする防衛政策が
いろいろ語られましたが、非常時にも携帯電話網を確保して、すべての人に情報が伝わるようにするとか、
行政のデジタルシステムの可用性の確保のような、日常の生活の継続に関して、行政データーの複製を海外に
保存して、非常時でも行政の業務の継続をめざすエストニアなどのやり方を十分に検討し、
日本にも取り入れなければなりません。
不良在庫一掃など、あまり評判が良くない、石破内閣の人事ですが、私は、加藤勝信財務大臣に注目しています。
自民党総裁選挙では、カレーライスを食い逃げされたなどあまり風采があがりませんでしたが、元大蔵省の官僚で、
政治家としては、「アベノミクスを推進した精神が私に染みついている」という金融緩和派です。
元大蔵省の官僚だから、財務省の仕事のやり方を周知しています。そして、金融引き締め、増税という
財務省の伝統とは異なる考え方を持っっているというのは貴重です。石破総理が、財務官僚と直接話すより、
その件は省内で加藤財相と詰めるようにと指示するほうが、石破総理は黙っていても思い通りに事が運ぶかもしれません。
シルクハットの財務大臣は、マスコミに対しては強がっていましたが、省内で、官僚とどのような話をして、
結果的に誰の考え方で行政が行われていたのか、興味があります。
2000年頃、省庁改変が行われた時、原因を作ったのは、大蔵省と金融関係者との癒着とも言われましたが、
大蔵省は財務省に名前が変わっただけで、組織的には、大蔵省金融企画局が金融庁に統合された以外あまり
大きな変化はありませんでした。今の政治資金問題は、政治資金規正法を改正して終わりというようなものでなく、
財務省を改変して歳入庁に変えるような大改革が必要なことかもしれません。その時主計局はどうするかが
問題になります。各省庁が好きなだけ予算を使うことにすると、いくら積極財政派の高市さんでもまずいというような
混乱になります。そこで、国会の予算委員会で1から予算をつくるというのも一案です。3権分立といいますが、
予算案をつくるのは財務省でも、最終的に予算を可決するのは国会なので、法律的には問題ないような気がします。
埋蔵金が無限にあるような質問をして、総理が答弁書や白紙のノートや、びっしり書き込まれたノートを
一字一句まちがえないようにたどって読み、最終的に、数の原理で予算が決まるというようなやり方ではなく、
1から予算をつくるための議論をすれば、国会議員の人が誰がポンコツで誰がどのような考えを持っているかが
明らかになります。
金融機関のアナリストや対面営業する人は、100万円のお金を分析するのも、100億円のお金を
分析するのも、基本的な分析する内容は共通で、売上原価が1万倍違うということはありません。
そうすると各人の性格は別として、超富裕層のために仕事をするようになります。
ネット銀行は、ITシステムに投資した後は、利用者数を増やす必要があるので、業務の方針が異なりますが、
やはり多額のお金が動く機会に興味があります。売上と売上原価が個別に対応するような商品を扱う業種とは、
根本的に業務方針が異なります。財務省や日本銀行の人が、天下り先を考慮して、金融機関の側を向いて
仕事をするのは大きな問題があります。国民の代表である政治家は、これらを抑える能力を
持つ人である必要があります。都市銀行が新設する会社が、メインフレームを調達・保有し、地銀向けに提供する
時代になると、都市銀行と地方銀行の間に、ガバメントクラウドを提供する中央省庁と、地方自治体
のような関係が生まれます。国会議員の人は自分の選挙区の状況を熟知して、地方銀行や地方自治体が
住民の方を向いて仕事をしていることを確認できる能力が必要になります。
政治資金規正法の改正で正常化するような単純な問題でないくらい、政治や世界が混沌としています。
今回の総選挙では、有権者の側はポンコツでもかまわないので、皆が、どのように考え、
だれに「納得と共感できて」だれに投票して、選挙結果がどうなって、政治や経済がどうなったかを
記憶しておく価値があるくらい、歴史的な瞬間に我々はいるのかもしれません。