各種のコラム --  3ー146 営業利益について考える

                                      2024年9月1日  

    3ー146 営業利益について考える	
    
     国際会計基準の「営業利益」ルールが統一されます。
  国際財務報告基準 (IFRS)で 本業のもうけを示す「営業利益」の計算ルールが2027年度から統一されます。
  IAS1号がIFRS18号に置き換えられることになります。そもそも、IFRSは収益と費用を、
  資産及び負債の増加・減少に関連する将来の経済的便益の増減ととらえており、自社の事業内容に照らして財務諸表の利用者に
  理解しやすいように検討した結果、「定義の異なる「営業利益」が少なくとも9つ」存在する状況になっており、
  企業間の比較可能性に疑問があったり、私のように、「何のことやら、わからん」という人がいました。
  IFRS18号では、損益フォーマットを再定義し、具体的には、純損益を「営業」「投資」「財務」の3つに区分します。
  IFRSが20年以上前に導入されて以来の企業業績の表示に関する最も重要な変更と言われています。
  そこで、この「営業利益」ルールの統一について、考察しようとしたのですが、やはり、「私には、わからん」ということに
  なりました。そこで何も考えなかったかというと、そうではありません。
  日本基準のような売上総利益、営業利益、経常利益といった利益区分を設けるのも、けっこうわかりやすい面があります。
  国際会計基準に日本の考え方を反映する努力を最大限行うかわりに、日本もユーロ加盟国や、オーストラリア、ニュージーランド
  南アフリカのように、会計基準をIFRSに統一するのが良いのではないでしょうか。
  実際に行うとなると健康保険証のマイナンバーカードへの統一のように色々な問題がでてくるかもしれません。
  しかし、海外に子会社を持つ企業を中心に、親会社と日本国内の子会社の個別の財務諸表は、日本基準で作成して
  連結財務諸表は、IFRSで作成し、日本基準の個別財務諸表をもとに、法人税の連結納税の確定申告書をつくり、
  IFRSで作成した連結財務諸表に、連結税効果会計の法人税等調整額を計上するという経理の手続きには
  何か、もってまわったような印象があります。会計基準の統一について議論する価値はあると思います。
  
  日本で会計、簿記を勉強すると、たいてい最初に、商品販売での売上と売上原価の計算を勉強します。
  商品販売の場合は、仕入価格などから、売上原価の計算ができます。しかし、業種によっては、売上と売上原価の
  対応が明らかにならないものもあります。例えば、鉄道の旅客輸送であれば、満席でも空でも、
  発生する費用の額はあまりかわりません。一枚一枚の切符の売上と売上原価の対応はあまり明確ではありません。
  
  売上の計算のもとになる、商品の販売価格も、セール期間中は値引きされたりします。
  ホテルや飛行機などで、利用者の多少によって、販売価格を変化させるダイナミックプライシングが広まっています。
  これも業種により、例えば鉄道では、遠くのほうが運賃が高くなるという原則の範囲でおこなう必要があります。
  遠くまで買って、途中下車するほうが安くなると、ルールが複雑になり、わかりづらくなります。
  また、遠くまで買うほうが距離あたりの単位運賃が安くなるのが自然です。100kmまでの特急料金は、
  50kmまでの特急料金の2倍より少し安いのが原則で、50kmまでの区間にわけて買うほうが安くなると、
  ルールが複雑になり、わかりづらくなります。さらに長距離の切符には有効期間があるので、
  日付によって価格がかわると、いつ乗りたいのなら、いつから有効の切符を買うのが良いとなると、混乱します。
  
  鉄道の地上設備の減価償却年数は60年のものが多くあります。人口が増えて、全体の輸送量が増えそうだという時
  と比べて、現在のように人口が減少して、全体の輸送量も減少しそうだという時は、予測がさらに困難になります。
  中央線の快速電車は、現在グリーン車を組み込もうとしています。もし、中央線の快速電車の利用者数が減少するのなら、
  10両編成のまま、普通車を抜き出してグリーン車に置き換えるというやり方もあります。ホームの延長が必要ないので、
  設備投資額は相当減少します。しかし高尾より先では、中央線の輸送量は現在でも以前より減少しているのに対し、
  新宿に近い区間では、今後もかなり増加が続くといわれています。
  現在、休止されていた大汐線を利用して、羽田空港アクセス線の建設が進んでいます。大汐線のように、建設時の
  将来どのように利用されるかの予測に大きな変化が起きることがあります。20世紀には、横須賀線の電車は
  現在の東海道線を走っていました。川崎駅は、同じホームに、東海道線の電車も横須賀線の電車も来るので、
  電車もホームも、インドの鉄道かというレベルの混雑でした。汐留駅(旧新橋駅)は貨物駅として使われており、
  東海道線の電車も横須賀線の電車も走る中を、さらに貨物列車が走るというのは流石に無理なので、
  品鶴貨物線という貨物列車専用の線路がありました。東海道線、横須賀線の混雑緩和のため、横須賀線は
  トンネルを建設して総武線と連絡し、品川からは品鶴貨物線を通すことにしました。1970年代のことです。
  そして貨物列車のために、大汐線という大井貨物ターミナルと汐留駅を結ぶ線路を建設しました。汐留駅からは
  大井貨物ターミナルを経由して、東海道線下り方面に向かいます。ところが国鉄改革で、汐留貨物駅は廃止され、
  1980年代から、大汐線の使用は休止になりました。大汐線は東海道新幹線の東側にあります。
  新橋あたりから田町駅付近までなので、一等地にあり、土地の面積は相当ですが、幅5メートルほどの
  細長い土地で、東海道新幹線と学校の土地などに挟まれているので、誰かが買い取っても、利用に大きな
  制限があります。新幹線から大汐線を見るたびにこの土地の固定資産税はいくらなのだろうと考えていました。
  いくらか知りません。居住用の家屋が建っていると最近まで、かりに空き家でも、固定資産税は減免されていました。
  鉄道用地の固定資産税の規則は知りませんが、有効に活用するほうが事業経営に資することは確かです。
    
  西九州新幹線は、武雄温泉駅と長崎駅の間が開業しています。この先、新鳥栖経由で博多につなぐ部分は、
  フリーゲージトレインの構想が実現しなかったことや、佐賀県があまり乗り気でないこともあって、話し合いが難航しています。
  これから人口が減少して、全体の輸送量も減少するのではないかという時代に、フル規格の新幹線を
  新しく建設するという考え方だけでなく、既存の、武雄温泉駅〜長崎駅を在来線の軌道間隔の線路に変えることも
  含めて、多角的に考えるほうが良いと思います。70km足らずの区間を30分ほどで走っているので、在来線の電車でも
  所要時間は、それほどかわりません。乗り換えの手間が無くなります。技術的な問題や、工事期間、運休になる
  ことについて、専門家でないので、何も検討していませんが、新しい新幹線を整備するという50年前の発想ではなく、
  現在の考え方で関係者が話し合う必要があります。
  
  売上収益という観点では、アルファベット(Google)や SNSの運用事業者の多くは、CM収入が
  大半です。SNSのサービスの提供は、売上収益に直接貢献するわけではなく、多くの利用者がいることで、
  CMを掲載したい人が多くいることが、売上収益の源泉になっています。
  生成AIについても、どのように売上収益に結びつけるかということについては、まだビジネスモデルが確立していません。
  NVIDIAの場合は、生成AIのサービスを提供しているのではなく、BtoBのビジネスでGPUの売上が
  収益源です。
  1990年代に、インターネットの商用サービスが始まった当時は、ルーターなどのネットワーク機器を販売する、
  シスコが時代の寵児でした。しかしある時、売上が前年同期比で50%増だったにもかかわらず、アナリスト予測に
  少し届かなかったことをきっかけに株価が大きく下がりました。ドットコムバブル(ITバブル)がはじけて、
  シスコのルーターをリースで使用していた通信業者が支払い不能になり、機器が返却されるなどが重なり、
  シスコの業績も一時落ち込みました。シスコは、現在も主要なネットワーク機器メーカーであることに変わりないのですが、
  今回の半導体とAIブームではあまり話題になりません。1990年代はIPv4の時代で、IPアドレスの枯渇の恐れが
  あるなど、連日のように、ネットワーク機器の高機能化が話題になっていましたが、21世紀になり、
  IPv6の時代になり、とりあえず十分なネットワーク環境が整い、以前ほど、ネットワーク機器の更新の必要性が高く
  なくなったことも影響しています。EVブームも一部には経営不振に陥るメーカーがあるように、生成AIブームも
  今のように多くの業者が新しいサービスを争う時代はいずれ一段落します。AIは幼稚園レベルの、言葉を理解するにも、
  大量のデーターを大量の電力を使って学習しなければならないと言われていましたが、小学生になって、教科書を読んで、
  効率よくまとまった知識を学習できるようになるかもしれません。そうなれば、NVIDIAのGPUの需要も
  一段落する時があるかもしれません。
  MPUが8ビットから16ビットになり32ビットになりと、目まぐるしく高性能化が求められていましたが、
  アドレス空間については、64ビットで十分だということで落ち着いたり、高解像度を競ってきたディスプレーが
  4kあるいは8kでとりあえず十分だということになったように、生成AIも持続的に発展するにしても、
  今のような前年比50%増のような状況は、割と近いうちに一段落します。
 
  量子センサーも随分話題になっています。 最近米国のサンディア研究所が、 実用レベルの量子センサーの可能性を
  発表しました。 MEMSのセンサーは、加速度センサーが比較的実用レベルのセンサーが多数あるのに対し、
  ジャイロセンサーや磁気センサーは、なかなか要求を満たすレベルのセンサーがありません。
  例えばジャイロセンサーであれば、MEMSのセンサーは、リングレーザージャイロに対して、性能的にかなり見劣りします。
  しかし、民間航空機などに搭載されるリングレーザージャイロは、価格が、5,000万円あるいは億単位です。
  数万円のMEMSのセンサーは、性能的に、まったく追いつくことができなかったのですが、
  状況が変わるかもしれません。常温で作動する量子センサーが出来れば、画期的な技術であることに変わりはないのですが、 
  生成AI並のブームになるか、とりあえず十分なレベルの技術ということで、ビジネス的にはむしろ落ち着くのかは
  その時にならないとわかりません。
  
  日本は、失われた30年ともいわれる停滞した状況ですが、台風が進路を変えた後は速度が上がるように、
  これからどのような分野をめざして進み、営業利益を獲得していくかについて考える必要があります。
  その時、日本は「たけやり」でも戦えるというような発想はぜったいにダメです。
  cudaはNVIDIAの技術であり、tenserflowは、Googleの技術であり、pytorchは
  Meta(旧Facebook)の技術だという事実は認めなければなりません。
   
  およそ20年前に、Googleの検索のトップページを見た時の驚きは、今も覚えています。
  一般に、ポータルサイトといわれるサイトのトップページは、新聞の一面記事のような、見出しと
  主要記事の要約がでているようなページで、検索のウィンドウもあるというのが一般的でした。
  CMが全くなしの、検索のウィンドウだけというのはかなり驚きでした。
  これは、新しい事業を始める時のやり方を示しているとも言えます。
  「世界中の物を検索する」という経営者のビジョンを、非常に明快に表現するサイトのトップページと言えます。
  
  このような考え方で事業を始めるのであれば、民間のパワーこそ重要です。
  しかし、自然災害に備えるというのは、民間だけではなかなか困難です。事業投資に対して、何が、売上収益であるかについて
  直接的に対応付けることはできません。損失を軽減できるという効果を定量的に測定することはできません。
  自然災害への対応こそ、公共投資を集中すべき分野です。国土強靭化は、ずっと政策の基本です、しかし、
  目立った効果が見られません。例えば台風への対応であれば、20世紀は、国土強靭化が進んだ時代でした。
  以前は、頭の上に台風の目がある時に出かけて、大変な目にあったが、最近は、前の日から、いつ台風がくるかわかるようになった
  という話を、よく聞きました。そして、1990年代に台風により命を奪われるという災害は無くなったと思えるような
  時代があったのですが、21世紀になって、台風のほうが激甚化しています。SNSが広まって、
  被害の映像を目にする機会が増えたともいえますが、それだけではないようです。
  流体力学のシミュレーションで台風の進路を予測するのは有名ですが、予想する時間が長くなるほど、予想の精度は下がります。
  過去の気象衛星の多数の画像を、AIで分析して、この台風はこのような結果をもたらしたというデーターから
  学習するような、新しい台風の進路や被害の予測ができるかもしれません。私が考える程度のことはすでに
  専門家によって考察済だと思いますが、地球温暖化への対策として、石炭火力発電所のCO2の排出量を減らす
  というのは、あまり評判が良くありません。地球温暖化に伴う自然災害の激甚化に対応するため、
  日本は、まったく新しい予測手段と、対応の手順を定めたというほうが、広く世界に受け入れられるような気がします。
  
  生成AIの技術自体が、話題になる時代はそれほど長く続くことはなく、生成AIの技術を何に使うかが
  重要になる時代に移行するように思います。地震や台風など、自然災害も被害を受けるいうことは、困ったことではあるのですが、
  世界を見た時、まったく自然災害も被害を受けない地域はほとんどなく、自然災害による被害の軽減は、
  世界共通の課題といえます。その対応で、日本がいかに先進的、革新的な事を行っているかを
  示すことは重要な事です。