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                                      2024年8月15日  

    3ー145 ベーシックインカムについて考える
    
     ベーシックインカムとは、年齢・性別・所得などに関わらず、すべての国民に一定の金額を支給する制度です。
  海外で試験的に導入している国はありますが、全面的に導入している国はありません。
  コロナ禍で失業が増えたことや、ワーキングプアーといわれる  相対的貧困率が日本でも高まっていることから、
  近年、ベーシックインカムが話題になる機会は増えています。
  すべての人に 仮に月に7万円のベーシックインカムを保証すると、年間100兆円近い予算が必要です。
  また、既存の年金や生活保障との関連をどうするかなど、実際に導入するとなると、課題が多くあります。
  すぐに導入することは不可能でしょうが、マイナンバーカードを使った所得税の確定申告が広まっているので、
  給付金付き税額控除であれば、いくらか導入の可能性が増えます。
  未成年のうちは、親にベーシックインカム相当額を給付し、成人すると、本人が確定申告し、
  高額所得者以外にベーシックインカム相当額を税額控除し、低所得者には、給付します。
  マイナンバーカードが普及し、行政のディジタル化が進めば、導入の手続き的ハードルは下がるので、
  検討の価値があります。失業した時に、最低限の生活保障がある事は大きな安心になります。
  また、高齢者も何歳まで生きるかはだれにもわからないので、確定給付型の年金に相当するものになります。
  所得税、保険料、生活保護、年金などを整理統合することは、行政の事務コストの削減につながります。
  
  行政のディジタル化と、現在行われている、所得税・住民税の4万円控除のような、一年限りの、思いつきの
  政策は、相性が悪いです。給付金付き税額控除のような、将来も一貫する政策を、ディジタル・システムとの
  相性を考慮して進めていく必要があります。
     
  システムを導入するとき、業務のベスト・プラクティスを合わせて導入するのが良いといわれますが、
  海外のソフトウェアーを導入して、業務のやり方も変えてしまうという意味ではありません。
  システムを導入するにあたって、将来も一貫する合理的な業務の進め方をまず始めに考えてみるということです。
  海外のソフトウェアーを導入して、表向きは、合わせてベスト・プラクティスを導入したことにして、
  実際の業務を従来からの表計算ソフトで行い、必要なデーターだけを新しいソフトウェアーに入力すると、
  業務コストが増大します。
  
  みどりの窓口の廃止が問題になっていますが、これは、きっぷを持っている人が電車に乗ることができる
  仕組みから、誰であるかを特定して、電車に乗るスタイルに変わっていく過程で発生している問題ということもできます。
  長いこと、きっぷを持っている人が電車に乗ることができるという業務手順であったなかで、途中下車など、いろいろな
  規定ができました。例えば、東京から角館に行く時、乗車券の料金だけで考えると、
  東京〜角館の片道が、9、460円 で 往復が 18,920円 です。 そこで少し先の大曲まで買うと、
  東京〜大曲の片道が、9,790円 ですが、往復は、17,620円になります。これは、片道の距離が
  600kmを超える区間の往復切符は、1割引きになるという規定があるからです。
  さらに暇だから旅行しようという人は、東京〜秋田〜新潟〜大宮 の切符を買って 大宮〜東京間乗越し精算にすれば、
  乗車券の料金は、15,000円になります。これは、JR東日本 旅客営業規則 第77条の5 の規定で
  273kmまでは、1キロ 17円80銭 273kmを超え、546km以下は、1キロ 14円10銭
  546kmを超える区間は、 1キロ 7円70銭 だからです。
  Suicaのカードを持っている人が、電車に乗ることができるという仕組みでは、途中下車の規定を
  取り入れることはできません。携帯電話にアプリが入っていて、誰がどこを利用したかわかるようにすることは可能です。
  JR東日本のグリーン車や特急電車のように、座席の上のセンサーにタッチして着席するようにすれば、
  誰がどこをどの列車で移動したかを記録することは可能です。携帯電話のアプリで予約して、座席でタッチするならば、
  きっぷは必要ないので、みどりの窓口も不要になります。
  このように業務をディジタル化する時は、将来的にベスト・プラクティスと思われる業務手順を定め、
  移行途中に、どのような課題が発生するか、インバウンドの観光客のように携帯電話のJR東日本のアプリを
  使っていない人はどのような規定にするかなどを総合的に考えて、トラブルが発生しないように
  業務手順や規定を変更していく必要があります。
  
  あるいは、システムの場合の事例と、一見無関係のようですが、電気自動車などで、どのようなモーター
  を設計するかも、使用環境を考えて計画的に技術開発を行う必要がある分野です。多くの電気自動車では、
  PMSMという回転子に永久磁石を使うタイプの同期モーターが使われます。
  電車では、IMという回転子が普通の金属の誘導モーターが使われます。PMSMのほうが効率が高く
  駅の間隔が短い、東京メトロの電車などでは広く使われているのですが、一つ困ったことがあります。
  例えば中央線の通勤特快の電車で、国分寺を出発して加速して100km/hの速度に達した後は、
  できるだけそのままの速度を維持できるほうが良いです。車のように、アクセルをゆるめるとブレーキが
  かかるのは困ります。永久磁石は電流が流れて無くても磁石なので、外側の固定子に電流を流すのをやめて
  モーターが回転していると発電機になりブレーキがかかります。中央線の通勤特快の電車は、IMなので、
  発電ブレーキがかかることはなく、できるだけ惰行で長いこと走って、速度が下がってきたら再加速します。
  そして新宿に近づいて回生ブレーキをかけるときには、再度外側の固定子に電流を流します。
  加速する時のように、回転子の回転のほうが遅れている時(すべりが発生している時)はモーターになりますが、
  回転子の回転のほうが進んでいる時は、発電機になってブレーキがかかります。
  電気自動車でレアメタルが必要な永久磁石を使うのを避けるために、高回転型のIMを使うこともあります。
  あるいは、リラクタンス(磁気抵抗)モーターという、PMSM並の効率でしかも惰行で走る時、発電機にならない
  タイプのモーターもインバーターの制御の効率化とともに使用可能になりました。
  このように、使用環境を考えて計画的に技術開発を行う必要があります。
  
  繰り返しますが、所得税・住民税の4万円控除のような、一年限りの、思いつきの政策は、ディジタル化の推進と
  相性が悪いです。もっと悪いのは、政治資金規正法の改正のように、本音では変更したくないのに、表向き変更
  したように振る舞うことで、ディジタルシステムは人間のように忖度しないので、計画時の矛盾点がそのまま、
  業務の遂行時に課題になります。
  マイナンバーと健康保険証の紐付けの問題が発生した時も、同姓同名の問題や、
  健康管理組合での事務処理のミスが話題になり、ミスの件数自体は、マスコミによりかなり詳細に報道されましたが、
  紐付けの方法にミスがあるのではないかという、そもそもの事業計画に関する報道はほとんどありませんでした。
  健康管理組合からマイナポータルに問い合わせる際の、ミスを防ぐために、名前、読みがな、生年月日、住所の
  4要件での問い合わせを徹底したと聞きましたが、根本的に紐付けの方法を間違えているのではないかと思いました。
  各市町村の住民基本台帳のデーターは、マイナポータルの上に統合されているので、
  同じように、健康管理組合が管理するデーターも、マイナポータル上の、同じデーターベースのなかに統合しなければ
  なりません。そこまで準備ができれば、1億件のデーターのテーブルの紐付けも、1日でできます。
  4要件すべてが完全に一致の厳格な条件で紐付けても9割以上は、正しく1対1に対応するはずです。
  同時に1対多数で紐付いたものや、紐付かなかったもの、要件の一部を満たさないものを出力することもできます。
  ここまで、総務省で一元的に行って、疑問があるレコードの調査のみを、地方自治体や健康管理組合で行うべきでした。
  健康管理組合で登録を行う人が全般に注意深く業務を行い品質が高いとしても、それだけで
  解決する問題ではありません。業務がディジタル化すると、どこにデーターベースを置き、レコードのフォーマット
  をどうするかを予め考えることのほうが重要になり、計画、設計段階でのミスをオペレーションで補うことができなくなります。
    
  20年程前、あるプロジェクトで、IT技術は、体を動かす肉体労働を、指先の技術に置き換えるものだと言った
  人がいました。IT技術は、指先の技術ではなくて頭を使って考える技術だと言いましたが、話が通じませんでした。
  今でも、速くタイプできることや、フリック入力が上手なこと、あるいはゲームで高得点をだすことを
  IT技術だと考える人が多くいます。かなり日本独特の現象です。実際のシステムが存在しない段階で、業務手順を
  まず概念的に考え、それを具体化していくのが不得意なのかもしれません。
  日本はIT技術で世界に遅れを取っているというと、それはITを使っていない人の誤解だという人がいました。
  ゲーム機やアニメでは日本が世界をリードしていると思っている人がいました。アニメのキャラクターでは、
  日本が世界をリードしていますが、ゲーム機のグラフィックを実現する、Unityのソフトはサン・フランシスコ
  の会社が開発したものですし、キャラクターの回転運動を実現するために、オイラー角や回転ベクトルではなく、
  四元数を使うと、システムの計算量が減るというようなことに関しては、アメリカや中国で研究されています。
  四元数であれば、回転の始まりと終わりの角度を計算して、途中の画像は、数値の10等分などで作っても
  それなりに使えるものができます。回転ベクトルではそれはできません。四元数を使うというのは、ドローンの
  姿勢制御にも使われるので、ひらがなのキーワードで検索しても、中国語のサイトが表示されるくらい
  中国でいろいろ研究されています。
  
  どんどん上昇してきた、GAFAMなどのIT企業の株価に、少し変化が見られるようになりました。
  コロナ禍のなかの半導体不足と、生成AIブームで、本来の価値以上に過剰に評価されてきたのかもしれません。
  特にインテルの株価が、年初に比べて半分以下になるなど変調がみられます。MPUに製造不良が発生したことが
  ひびいています。x86_64のアーキテクチャーは、内部は変わっていますが、1978年に登場した、16ビット
  マイコンからの伝統を引き継いでいます。命令数は1500位あるそうです。この複雑さと上位互換性に本質的な
  問題があるのかもしれません。スマートフォーンなどでは、Armのアーキテクチャーが注目されますが、
  カリフォルニア大学バークレー校の先生が考案したRISC−Vのアーキテクチャーも最近注目されています。
  アーキテクチャーは公開されています。基本命令は47個でユーザーが追加することができます。
  追加命令をアセンブルしたり、追加命令を使用するためのコンパイラーの設定変更も可能です。
  ユーザー側は、自社の業務を考えて、追加命令も含めてカスタムMPUを設計製造することが出来ます。
  
  蒸気機関車は、製造から60年位経つものも、動態保存されているものがあります。壊れた部品は
  新たに作成しています。1980年頃までの電車も、同じような保存が可能です。しかし、1990年代
  以降の、半導体が沢山使われた電車は、半導体が廃番になると、動かすことはできません。
  部品取り用の車両も保存して、古い電車を使っている会社もあります。
  自動車も同じような状況ですが、半導体が廃番になっても、修理できるように、部品を保存しておくなどの
  対策をとっています。追加命令も含めてカスタムMPUを設計製造することが出来るようになれば、
  図面を保存しておけば、必要になった保守部品を新しく作ることも可能になります。
  基本命令数が少ないので、省電力ということもあり、自動車関連で日本ではデンソーやルネサスなどで、
  研究、開発されています。自動車のことを理解した上で、MPUの設計もできるようなエンジニアが求められています。
  IT技術者といっても、日本の企業に多くいるような、海外製の新しいソフトウェアーを導入し、迅速に
  トラブル解決できるようなエンジニアとは質が違います、グーグルのデーターセンターのサーバーは、
  自社の業務に最適なシステムを自社で設計しています。
  いろいろな業種で、自社の業務を理解した上で、MPUの設計もできるような新しいタイプのITエンジニアが
  必要になります。
  1990年代の、インターネットブーム以来、スマートフォーンなどの新しいIT機器が注目されてきましたが、
  生成AIが最後のブームになるかもしれません。ドットコムバブル(ITバブル)の時にも、株価の変動だけでなく、
  企業の世代交代がみられましたが、もっと大きな変化がみられるかもしれません。
  今までは、IT技術そのものが注目されてきましたが、これからは、当たり前に存在するものになり、
  すべての業種で、IT技術とは無縁という会社は存在できなくなるような大きな変化です。
  例えば、衝突軽減ブレーキの宣伝で、この装置は、Slice数いくつのFPGAが使われています
  ということはありませんが、設計部門には、自社の製品に最適な装置を設計する技術をもったエンジニアが必要です。
  多くの業種で、既製のアプリケーションを導入するだけのレベルのITエンジニアだけでなく、
  自社の業務に合わせた最適なMPUを設計するようなレベルのITエンジニアが必要になります。
  モーターが使われるようになって100年以上経ち、いまではモーターは当たり前に使われています。
  工場の中で、何個のモーターが使われているかは通常話題になりませんが、電気自動車をはじめとして、
  高機能、高品質のモーターの設計が製品の良し悪しに大きく影響します。
  IT技術もしだいに同じようになります。使われていることが当たり前になりますが、
  世界的な規模のデーターベースを持つデーターセンターとか、自動運転の車のように、
  一瞬の処理の遅れも許されない、アナログ的な処理ができるディジタル機器の開発など、今まで以上に
  高度なIT技術の開発が必要になります。
  例えば、現在、台風がいつ頃くるかはほぼ正確に予測できます。100年前と比較すると大きな進歩です。
  しかし、線状降水帯の発生は今でも正確に予測することができません。低気圧も高気圧も渦なので、
  微細な渦の発生をリアルタイムで観測する技術が確率すると状況が変わるかもしれません。
  あるいは、どんな大きな台風も最終的には消滅しますが、極低温では、超電導とともに
  超流動の世界が存在して、液体ヘリウムの流れの渦が消滅しない世界が存在します。摩擦がない世界です。
  このような研究が、古典力学の流体力学の乱流の世界の解析に画期的な変化をもたらすかもしれません。
  これからは、気象の専門家が、IT技術を当然のこととして身につけるか、あるいは
  ITエンジニアが量子力学を当然の前提知識として身につける世界になるかもしれません。
  量子力学の分野で物質の状態を確率の波動で記述するシュレーディンガー方程式を提唱し、1933年に
  ノーベル物理学賞を受賞してから、まもなく100年になります。
  現在、世界の各地で混乱が起きているのは、ITエンジニアが、量子力学を当然の前提知識として身につけるような
  全く新しい世界が、まもなく訪れるという前兆かもしれません。
  
  その時、経営者もそのレベルのIT技術を持っていなければならないということではありません。
  しかし、マイナンバーカードをケースから出して、読み取り機に設定して受付をするのは、あまりにもダサいという
  ITに関するセンスは持っていなければなりません。健康保険証を今年中に廃止しますといって
  利用者をおどすのではなく、定期的に同じ病院に検査に行くような場合は、顔認証で、何も持っていく必要がなくなり、
  診察が終わったらすぐ帰宅して、買い物のついでにドラッグストアで、薬を受け取るようになりますというような、
  未来の医療機関の利便性を語ることができるような能力を持っている必要があります。