各種のコラム --  3ー142 プッチンプリンの出荷、順次再開されます??

                                      2024年7月1日  

    3ー142 プッチンプリンの出荷、順次再開されます??
    
     有名なお菓子メーカーで、4月に発生した基幹システムの障害の影響で「プッチンプリン」「カフェオーレ」などの
  チルド食品の出荷が停止するという問題が発生しました。当初、5月中旬の出荷再開を予定していましたが、5月1日に出荷停止期間を
  延長すると発表し、結局6月25日に出荷が再開されました。
  
  色々な報道の記事を参照すると、今回の問題は、調達、生産、出荷、会計などの業務を一元管理する基幹システム刷新プロジェクトに
  関連して発生しました。2024年4月3日、基幹システムの切り替えを実施したところ、直後から、
  システム上の在庫数と実際の製品の数が一致しないという問題が発生しました。当初、全国の物流センターでは、システムを利用せず
  「在庫管理の機能」のみを使って出荷業務を継続しようとしましたが、受注品目数に対し処理が間に合わない状態になり、
  冷蔵品の再度出荷を停止、常温品や冷凍品にもシステム障害の影響は出ているが、冷蔵品に比べて賞味期限が長いため、
  在庫数の誤差を手作業で修正しながら出荷を継続し、冷蔵品(チルド食品)については、出荷停止を決定したそうです。
  
  安全を優先して、賞味期間の長い冷凍食品の出荷を再開した後も、チルド食品の出荷を延期したことは良いことですが、
  今回の問題は、スーパーの棚に賞味期限まで余裕のあるチルト食品が並んでいるという当たり前と思っている
  ことの裏側で、システムがいかに大きな役割を果たしていて、システムに問題が発生すると、その影響が大きく、
  長期におよぶかをあらためて認識することになりました。
  
  基幹システム刷新プロジェクトは具体的には、旧システムを独SAPのERP(統合基幹業務システム)パッケージ
  「SAP S/4HANA」に刷新するもので、当初の完了予定時期は2022年12月、投資予定額は215億円でしたが、
  目論見通りにはいかなかったようで、2023年12月期の有価報告書によると完了予定時期は2024年3月、
  投資予定額は342億円となっています。また、プロジェクトを担う主幹ベンダーはコンサルティングの会社でした。
  
  基幹システムを刷新して問題が発生したら、元のシステムに戻すのが基本ですが、調達、生産、出荷、会計などの業務を
  一元管理するシステムなので、出荷のシステムのみを古いものにすることができなかったのかもしれません。
  食品自体の安全性に問題があったわけではないので、会社の業績への影響を考えたら、株主には情報公開と再発防止策の説明
  が必要でしょうが、一般に詳細な再発防止策を公表しなければならないというものではありません。
    
  ERP(統合基幹業務システム)パッケージの導入では、日本では会社の業務にあわせてアドオン(追加機能)を多く
  追加するので、バージョンアップへの対応が大変になる、ERPを導入するなら、パッケージが提供する
  ベスト・プラクティスを取り入れるべきだとよく言われます。
  しかし、ERPパッケージがどのように作られているか考えてみると、ERPを作っている会社に、会計のルールに
  くわしい人はいるとしても、食品製造、不動産、建設、機械、航空機の保守、地下鉄の経営、小売など、
  すべての業種の業務フローを周知している人が居るわけではありません。
  各業種のモジュールを追加する際は、導入する会社と共同で開発するのが一般的です。
  独SAPのモジュール開発では、共同開発する会社はヨーロッパの会社になることが多くあります。
  そうすると、日本のやり方にはあわないということがあります。
  会計モジュールでも、税制は各国の法律で定められたもので、例えば日本の連結納税制度に基づいて
  法人税の納付額を計算し、さらに連結財務諸表の法人税等調整額を調整する、連結税効果会計の計算の方法に
  世界共通のベスト・プラクティスがあるわけではなく、日本独自のモジュールが必要です。
  海外で開発されたソフトウェアーを導入する時の課題が、象徴的に現れるのがERPということもできます。
  新しいシステムを開発するには、まずシステムに要求される機能の要件定義が重要になります。
  
  システムの信頼性の向上というのは、よく使われる言葉ですが、具体的に何が求められるかは、業務の内容により異なります。
  新幹線の運行管理システムでは、システムが止まらず動くというのが大前提です。時速300キロで走っている列車は、
  1秒間に80メートル進むので、1秒止まるのも困ります。信号システムが安全を保証するので、大丈夫という
  ことにはなりません。しかし、万が一止まったら、すべての列車を止めるのが大原則です。
  航空管制のシステムなら、システムが止まったので飛行中の航空機をすべて止めるという対応はできないので、
  人がシステムに替わって安全に着陸させることになりますが、新幹線の場合は、まずすべての列車を止めるのが大原則で
  トンネルなどから脱出するにしても、現場で安全を確保した限られた移動になります。
  そして、新幹線の運行管理システムが仮に地震などの自然災害でどうにも稼働できないとなったら、遅くとも
  翌日からはバックアップの指令所を使って、運行が再開されます。そして本来の運行管理システムに復旧するのは、
  システムが動くようになればそれほど困難なことではありません。
  バックアップシステムでの運行を終了した後、翌日から本来の運行管理システムで業務を行います。
  必ず引き継ぐ必要があるのは、どの列車がどこに居るかなど限られた情報です。実際に東海道・山陽新幹線では、
  年に1回、バックアップのシステムで運用する訓練を行います。
  
  金融機関のシステムでは、バックアップのデーターセンターでのシステムに切り替えるには、切り替わるまでの
  時間よりも、すべてのトランザクションを引き継ぐことが重要になります。例えば振り込みの手続きでは、
  引き落としたけれども、相手方に入金されないことなどが絶対に起きないようにします。
  人が確認できる数ではないので、どのようにシステムを引き継ぐかの技術が重要です。
  一度バックアップのデーターセンターのシステムで運用をはじめると、本来のシステムに戻す時にも
  同じ課題があります。都市銀行では、本来のデーターセンターと離れた場所にバックアップのデーターセンターを
  持っていますが、めったに全面的にバックアップのシステムに切り替える訓練は行いません。
  
  通販のシステムでは、1秒止まったからといってそれほど困るものではありません。 しかし、24時間運用が基本なので、
  いつどのようにシステムをバージョンアップするかは、新幹線の運行管理システムや金融機関のシステムより、
  条件が厳しいことがあります。
  
  鉄道の信号では、長い間、車両の車輪車軸で両側のレールを短絡することで、車両の存在を確認する方法でしたが、
  地上設備が少ないほうが、保線作業もスムーズにできるので、列車が自分の位置を無線で送る方式が
  広まってきています。その際の無線設備として、列車の本数が少ないところでは、LTEによる通信を
  使う場合があります。通信が途絶えたらどうするのかと心配になりますが、通信が途絶えたらすべての列車を
  止めるで対応するようです。LTEによる通信が途絶えることはめったに無いし、すべての列車を止めれば
  安全は確保されるので問題ありません。
  一方、列車が自分の位置を検知するにあったって、地上設備で列車位置が確認できる地点から、列車が移動した距離
  は、速度計の速度を積分して得ます。この方法では、列車は駅のどのホームにいるかはわかりません。
  高精度の衛星測位システムも併用しますが、基本は、列車が通過する時間にポイントの設定がどうなっていたかの
  情報で、システムで判断します。この判断は、絶対に間違えてはいけません。
  駅に複数のホームがあるとして、後続の列車に先行の列車は駅のどのホーム居るかと、現在のポイントの設定を伝えて
  信号(速度パターン)を発生させる時、どのホームに居るかの判断にはフェイルセーフになる
  判断はありません。絶対に正しい判断か、システム障害で判断不能しかありません。
  このようにシステムの要件定義にあったては、システムの機能だけでなく、動作の信頼性についても、
  絶対に誤った判断が許されない箇所と、判断が中断しても許容される部分を明快に区別しなければなりません。
  
  行政のシステムのシステムでも、同じ事が言えます。システムの機能と共に信頼性の要件も
  十分に見極めて開発、運用する必要があります。新しい住民基本台帳のシステムをテストしていた
  市町村で、テストデーターで行うテストを本当のデータで行ってしまい、本当の住民を
  勝手に転出扱いにしてしまったいうニュースがありました。この件では、事務処理上のミスなので、
  今後は注意してテストを行うという対策では不十分です。
  本番運用で、間違えた人を転出扱いにするリスクなども総合的に考えてシステムの信頼性の要件定義を
  やり直す必要があります。
  新幹線のN700の車両では、1号車と16号車の運転席の後ろの客室用のドアだけが、
  プラグドアという閉まったらボディーと同じ平面になるドアが採用されています。他のドアは閉まった状態で
  ボディーから少しへこんでいます。価格や保守性、故障率などを総合的に判断してこのようになっていますが、
  このような細かなことを気にするかどうかが、全体の性能に大きく影響するのは、
  システム設計も同じです。
  日本では、情報漏洩が相次ぎ、サイバー防衛の強化が課題です。有名動画配信サイトでの、ランサムウェアの
  被害がニュースになっています。しかし、システムがランサムウェアーの被害にあう件数自体は少ないそうです。  
  地震などの自然災害が多いので、データーのバックアップをとる習慣が浸透しています。 
  ランサムウェアーに対しては、最新のバックアップがあれば、復旧することができます。 
  日頃の地道な運用が、サイバー防衛にも役立っています。けっして疎かにできません。 
   
  最近は、大規模言語モデルのクラウドサービスが利用でき、プログラミングも得意です。
  大規模言語モデルが特に多言語翻訳で、人間を上回る能力を示すように、各種のプログラミング言語
  を使いこなす能力では、人間を上回ります。
  プログラミング言語という位なので、言語モデルが得意なのは容易に想像できそうですが、2〜3年前まで、私は
  まったく違うことを考えていました。AIの時代になると、AIのモデルにデーターを入力するだけでよくなって、
  一般の人はプログラミングの能力は必要なくなると思っていました。AIがプログラミングする時代は
  まったく想像できませんでした。
  
  AIがプログラミングするようになっても、プログラミングとはどのようなものかを理解するために、
  学校でのプログラミング教育は必要です。益々重要になります。スマホを使うと認知症のリスクが高まるということに、私は
  同意できません。プログラミングをすれば十分頭を使うはずです。
  小学生には少し難しいかもしれませんが、大学の一般教養で学部を問わず行うプログラミングとして、
  衛星測位システム関連のプログラミングなどは随分頭を使うはずです。  
  通常、衛星測位システムを使って現在地を得るには、APIを利用しますが、Androidの携帯では、
  測定器のように、衛星が送ってくる衛星の軌道のデーター(エフェメリスデーター)を受信することができます。
  衛星から携帯まで電波が到達するのに要する時間と、時刻の正確さを立証するための情報をくわえて、
  最小で4個の衛星からの電波を受信して4元の連立方程式を解いて、地球を中心とする座標上の自分の
  位置を求めて、地球が完全に球体でないのでジオイドのデーターで修正すると、現在地がわかります。
  これを、APIを使って得たデーターと比較したり、使用する衛星の数を増やして、
  測定精度がどのように変化をするかを調べることができます。また人工衛星では、高度と速度によって、
  アインシュタインの一般相対性理論によると、時間の進み方が変わります。GPSの衛星はほぼ円形の
  軌道で、12時間で地球を一周しますが、JAXAの「みちびき」では、楕円形の軌道で、24時間で地球を一周
  します。一周するなかで高度も速度も大きく変動するので、時間の進み方の調整をどのように行うのかを
  考えるきっかけにもなります。
  
  昨年、ファーウェイが発表した携帯では、独自半導体が話題になりましたが、ハーモニーOSという独自の
  OSが使われていることも注目です。iOSやAndroidとは異なりマイクロカーネルが使われています。
  パソコンや携帯、自動車用など色々な用途で使うことができるのも特徴です。
  ガラケイの頃は日本でも独自のOSが使われていました。スマホでもパソコンで動くPythonの
  スクリプトがそのまま動き、携帯専用のプログラムのコーディングが不要なOSを開発すれば
  それなりに人気がでるかもしれません。しかし、ITエンジニアの数の差以上に、OS開発に従事する
  エンジニアがアメリカや中国にくらべて少ないように感じます。
  先端半導体への投資が盛んですが、熊本の工場のように、ソニーのイメージセンサーに使う半導体を
  主軸にするなど、作るものが決まっていれば、日本の工場や工程の管理の技術が活かせるかもしれませんが、
  先端半導体を設計開発するとなると、OSやデバイスドライバーなどを含めたシステムを
  総合的に開発できるエンジニアが必須です。 
  
  最後に、話が変わりますが、最近、フランスなどヨーロッパで極右勢力あるいは、右翼の台頭が話題になっています。
  2016年に大統領になったトランプ前大統領は、2020年の選挙結果も受け入れようとしない、典型的な極右勢力です。
  それほど極端ではなくても、既成政党による政治に対する反対勢力を集めて当選した右翼勢力の政治家もいます。
  政治の流れでは、まずアメリカで始まり、10年たってヨーロッパで広まり、さらに10年たって
  日本に広まることがあります。
    
  今回の政治資金規正法の改正は、既成政党による政治に対する反対勢力の勢いを強めると思います。
  なぜ政治資金収支報告書に正しく記載しなかったのかの動機が明らかになりませんでした。
  以前に国会議員だった人で、東京と地元の政治資金団体の事務所の経費がかさんで大変だったという人がいます。
  しかし、それなら、旅費交通費や水道光熱費を計上すればよい話で、収入も支出も秘匿する理由になりません。
  民間企業の有価証券報告書の虚偽記載では、営業赤字を避けるために、費用を計上しなかったという例があります。
  これは、赤字が連続するなど、事業の継続に問題が生じた場合には、財務諸表等に注記することが義務付けられている
  ので、これを避けようとしたという動機が判明します。
  しかし、今回の政治資金規正法の改正の議論では、不記載の動機が明らかにならず、
  選挙制度の改革などの根本的な議論もありませんでした。
  東京都知事選の選挙ポスターに一部の政党が、候補者とは無関係の人の写真などを掲載し、
  違法ではないとしても社会の規範に反するといわれています。政治資金収支報告書の不記載に関しても、
  立件されなかっただけで、社会の規範に反する政治家が多くいるのではないかと疑う人が居ます。
  このような、既成政党に対する不満や、漠然とした社会全般に対する不満が、極右勢力など、
  極端な活動を行う人を生み出すことがあります。
  帝国主義や植民地主義など、最後に行った者が貧乏くじをひいたということがあります。
  10年後に、日本に、極端な活動を行う人があらわれてしかも世界のなかで、
  日本が一番貧乏くじをひくということは避けなければなりません。