各種のコラム -- 3ー138 政治資金制度改革は、どうあるべきか?
2024年5月20日
3ー138 政治資金制度改革は、どうあるべきか?
政治資金規正法の改正に向け、各党が案をまとめています。自民党と公明党の改革案の違いや、
野党案との違いが話題になっています。しかし、収支報告書のオンライン提出の義務化については、各党の考え方に
あまり違いがなく、話題になっていません。
しかし、政治、行政を含む社会のデジタル化が課題となる現代において、オンライン提出の義務化でデジタル化が
達成されるというのは、50年前の話かというほどの、次元の低い話で、社会のデジタル化に関する課題を全く理解
しない人たちの考え方です。
今回のコラムは、デジタル技術を政治資金制度改革にどのように活用すべきかについて検討します。
パーティー券収入の公開基準を5万円にするか、10万円にするかでもめている状態で、
政治資金管理団体に、正確な政治資金収支報告の作成は期待できません。しかし、政党への寄附金は、民間から
政治団体への資金移動であり、政党交付金や機関紙の発行などと並んで、外部から政治団体への資金移動
の種類は、それほど多くありません。
政党交付金は各党ごとの収入金額が公開されています。ですから、企業団体の政治献金を全面禁止にすれば、
政党への寄附金は、所得税の確定申告において、寄附金控除または、一定の限度以内で税額控除の対象となる個人の
寄附金に限られます。
デジタル技術を活用すれば、すべての確定申告書を集計して、各政党または政治資金管理団体党への寄附金の合計額が
1円単位で計算できます。すなわち、各政党または政治資金団体党の収入金額は1円単位で明らかになります。
ふるさと納税が、誰がふるさと納税をしたかの情報は、外部には秘匿されますが、どの市町村が、いくら受け取ったかの
額が公表されるのと同じしくみです。
そして、各政党または政治資金管理団体党にたいし外部監査を導入し、定期的に貸借対照表項目の実査を行えば、
収入金額から、政治資金収支報告書に記載された支出額を控除した金額と、実査で確認された金額の差額が明らかになります。
政治資金収支報告書の不記載を犯罪として立証するのではなく、会計実務の透明性、正確性、網羅性の検証として、
報告された収入・支出金額と、実査で確認された金額の差額を、各政党または各政治資金管理団体党毎に、
公開します。
50億円の政策活動費の使途を明らかにする必要がないという法律のもとで、4,000万円を超える
収支報告書の不記載については、議員本人の刑事責任を追求するという議論をしても、
国民からみて、政治資金管理の透明性が確保されているとは判断できません。また、連座制などで、
議員本人の刑事責任を追求することにも実効性が伴いません。会計の問題では、金額の大小が
問題の重要性に大きく影響します。たとえ不正でなく、会計処理のミスである誤謬であるといっても、
億単位のお金の行方が不明であれば、財務書類その他の財務・会計に関する情報の信頼性が確保されていることには、
なりません。政治資金制度改革の議論が与野党ともに、連座制など、国会議員の刑事責任の追求に
重点が置かれていますが、皆が求めているのは、政治資金管理の透明性、正確性の向上です。
与野党ともに国会議員だけで議論していれば、議員の刑事責任にかかわる項目の議論に終始しますが、
国民の意見を代表する第三者委員会を設置するなど、有権者の感覚を取り入れることが必要です。
議論の重点をデジタル技術を活用した、正確な実態の把握と公表に移す必要があります。
民間企業は、総会屋にお金を渡していた20世紀の会計に対して、現在は、法人税法の改正の影響もあって、
相当に透明性を確保した21世紀の会計に変わっています。国会議員による政治資金制度改革の議論を
聞いていると、リクルート事件の頃から何も変わっていない、失われた30年の議論を聞いている
印象です。
寄付した事を明らかにしたくない、企業団体の政治献金に頼る政治ではなく、
選挙権を持つ個人からの寄付金に頼る政治になると、選挙の状況も変わってきます。
過去から行われている、世論調査の政党支持率だけでなく、金額はともかく各政党に寄付を行う人の情報は、
もちろん誰が寄付したかの個人情報は明らかにできませんが、どの位の人数が、ひとりあたりどれ程の金額を
寄付しているかで、寄付をしていない人も含めてた、すべての有権者の各政党に対する考え方に影響します。
選挙の投票率の低さが課題になりますが、デジタル技術を活用した、政治資金に関する情報の公開で、
人々の政治に関する関心が高まり、投票率の向上につながる可能性もあります。
政治資金収支報告書を表計算ソフトで作成し、オンラインで提出すれば、デジタル化というのではなく、
有価証券報告書のように、解析が容易なセマンティックWebの技術を使ったXBRLのフォーマットでの提出も
義務付けるなど、21世紀の基準でのデジタル化を進めなければなりません。
コンピューターのことを電子計算機と呼んでいた、およそ60年前、アメリカからの輸入で、
給与計算業務などへのIT技術の利用が始まりました、それから、互換機路線や、モバイル機器の開発、
メモリーモジュールの製造などで、IT技術の国産化が進んでいきました。しかし、21世紀になって、
海外製のクラウドシステムの利用や、デジタル赤字の拡大で、60年前に戻ったような現状です。
政治、行政を含む社会のデジタル化に遅れをとると、貿易や外交交渉すべてで、不利になります。
パーティー券収入の公開基準を5万円にするか、10万円にするかなどを話題にして、十分に議論を尽くした
という世論を醸成できると考えているのかもしれませんが、政治の世界が古典的だという印象です。
行政機関が行う調査も、例えば労働力調査などのように各世帯を調査員が訪問して、調査票の配布と回収を
行うものがあります。アナログの時代は、このような行政の仕組みが機能している、業務の品質が高い国
だったのでしょうが、世界的にデジタル化が加速している現在では、調査の量においても、リアルタイム性に
おいても劣っています。民間企業や、地方の行政機関で、土木・建築物を検査している部門などでは、
具体的に業務にデジタル技術を活用している事例があるのですが、政治あるいは中央省庁では、
マイナンバーカードやガバメントクラウドの予算の話だけで、自分たちの業務にデジタル技術を活かしている
という事例が見られません。感染症の患者の発生状況の報告や、ワクチン接種の予約のように
システムを導入したにもかかわらず、従来のアナログ式の管理に戻したものについては、
システム化によってどのようなメリットがあったか、何が課題になったかの具体的内容を、
誰でもアクセスできる形で公表しなければなりません。
もちろん、日本に注目すべきIT技術が無いということではありません。
そのなかから、ふたつ、とりあげます。
ひとつは、ポケトークです。スマートフォーンで、翻訳機能付きの通話が可能な時代に、翻訳機能だけのデバイス
に需要があるのかと一瞬思いますが、実際は、翻訳のレベルの高さと、レンタル機器として利用するシチュエーション
などを想定した時の、機器の価格設定の適切さなどがあいまって、ビジネスは絶好調です。
もうひとつは、世界初の汎用的知能ロボットコントローラーといわれる「Mujinコントローラ」です。
ロボットに動きを覚え込ませるのに、勘と経験が不要になり、スマホ感覚で、ロボットの制御が可能になります。
両者を見ての感想ですが、どちらも専用の機器があります。世界初の汎用ロボット制御用OSといっても、
ソフトウェアーだけでなく、専用のコントローラーデバイスで稼働します。私は、ホワイトボードに書いた
数式で、素人には天才的なのか、ただの落書きかわからないような技術より、このような稼働する機器が
有る方が好みです。ポケトークの開発本部はシリコンバレーにあります。日本人のCEOの人もシリコンバレー
在住です。Mujinコントローラの会社は日本にあるので、日本でIT技術の開発ができないという
ことではありません。
日本人は、海外での事業活動が上手くいかないことがあって英語が障壁になっているといわれます。
ポケトークがあると、英語の障壁が取り除かれてビジネスが順調に進展するか、または、
実は英語の障壁ではなく、話している内容自体の問題で、やはりビジネスは進展しないかが明らかになります。
Mujinコントローラは、産業用ロボットだけでなく、自動運転を含むクルマの制御用のOSにも
転用できるとさらに素晴らしいものになりビジネス規模も拡大します。