列車ダイヤについて -- 3-12 IoTとビッグデーターと鉄道の話

                                      2019年12月17日  

 3-12 IoTとビッグデーターと鉄道の話     

 IoT(Internet of Things)とビッグデーターということが最近よく話題になります。

 N700Sの車両には、加速度計を用いた台車振動検知システムがついているそうです。
 このようなセンサーを用いた異常検知システムも、IoTとビッグデーターの活用ということができます。

 N700Sの車両の、台車振動検知システムが具体的にどのようになっているかは知りません。

 このコラムでは、IoTとビッグデーターについての一般的な筆者の見解をまとめます。

 1.どの程度ビッグなデーターか

  およそ20年前の1990年台後半に、日本全国の固定電話の使用状況を把握するためのデーターベースが作られたことがあります。
 誰がいつ誰と話したかを把握するためではありません。地震などの際には、今ほど携帯電話が普及していなかったので、
 多くの場合、固定電話が輻輳してかからなくなったということが問題になっていました。
 どの回線がいつからいつまで使用されたか、話中あるいは交換機の容量オーバーで使用できなかったかを、
 24時間モニターしようということになり、データーベースがつくられました。1日で1億通話以上利用されていたようで、
 当時としては、前例のない大規模データーベースといわれました。

 加速度計のデーターを集める場合について考えてみます。
 市販の6軸式(加速度計とジャイロセンサー)あるいは9軸センサー(加速度計とジャイロセンサーと磁気センサー)では、
 最大で、1秒間に200回測定できるものが多く、1、000回測定出来るものもあります。
 仮に1秒間に200回測定した結果をすべてデーターベースに記録するとすると、24時間で1,728万個のレコードを記録することになります。
 仮に10個のセンサーのデーターを記録すると、2億レコード近くなり、20年前なら前例のない大規模データーベースといわれたレベルの、
 データーの量になります。

 もし、加速度計の値を常に運転台のモニターに表示してそれを眺めていても、ほとんど意味がありません。
 台車振動検知システムなら、センサーに接続したマイコンでデーター処理して、しきい値を超えるなど、異常があった
 時のみ通知するほうが有効なシステムになります。

 IoTとビッグデーターのシステムについて考える時、どの程度ビッグなデーターになるかを考えて、
 どの段階でどのような処理をして、集約して人間に伝えるかを考える必要があります。

 ただし、一度集約すると、もとのデーターは失われますから、  
  目的がアナリティクスなら、すべてのデーターを記録しておく必要があることがあります。
  アナリティクスとは「データの中に意味のあるパターンを見出し伝えること」を指し、
 データに潜んでいる特定のパターンや相関関係などの知見を抽出することを意味します。
  
 2.リアルタイム処理化バッチ処理か
 
 火山の噴火を警戒する時、GPSなどの衛星測位システムで火山の変形や移動を測定することがあります。
 クルマのナビから想像すると、火山が何十メートルも変形するのかと思いますが、
 実際はセンチメートルあるいはミリメートル単位の変形を測定しています。

 高価な機器が使われているので、測定精度があがりますが、それだけではありません。
 リアルタイムの測定ではそこまでの精度はでません。データーを記録しておいて2〜3日後に、
 記録した時点での本当に正確な衛星の位置が明らかになって、
 はじめてミリメートル単位の測定ができます。

 一般的に、IoTとビッグデーターの活用について考える時、トランザクションの処理のように、
 リアルタイムで処理しなければならない場合と、 アナリティクスの処理のように多くのデーターを
 事後的に処理する場合があります。

 例えば、ドローンを自動制御で飛行させるなら、ドローンに搭載できる程度のコンピューターで
 姿勢がおかしくなる前に、リアルタイムで測定と制御ができなければなりません。
 しかし、将来のドローンの設計のために飛行データーを解析する場合なら、大量のデーターを
 記録することに専念して、解析は事後的に行うほうが良い場合もあります。


 ここではふたつの観点を取り上げましたが、それ以外にも多くの考慮すべき点があります。

 基本的なセンサー自体の性能が、もちろん重要です。
 前回の東京オリンピックでは沿道で中継車でマラソン中継ができるだけで画期的でした。
 しかし、画像は大きく揺れていました。現在は高級な光学式手ブレ補正の装置がついているので
 ほとんど画像が揺れません。そして、最近では2〜3万円程度の自撮り棒でも
 個人的に使用するものなら、実用レベルの揺れない動画が撮影できるようになりました。
 
 携帯端末などのジャイロセンサーは、コリオリの力の大きさから回転の角速度を求めています。
 力の大きさを測定するバネや電気信号の処理方法の改善で、1,000円程のセンサーモジュールで
 数千万円する、リングレーザージャイロの測定精度に近い測定が可能になる可能性も
 まったく無いとは言い切れません。

 ビッグデーターの処理はAIが不可欠になると思われます。
 1秒毎に発生するデーターを24時間処理し続けるとしたら、人間が行うわけにはいきません。

 鉄道は連結して走る形態なので、運転していても列車の様子にすべて気付けるわけではありません。
 各種のセンサーを用いたIoTとビッグデーターの活用は不可欠になるでしょう。
 
 また、ビッグデーターの処理をAIでおこなう場合、スイッチを入れた直後の部分のデーター
 は除外して分析するなど、人間なら当たり前にできることがAIには難しいことがあります。
 事前学習不要のAIとはいっても、一部の条件が一定になるだけで、分析が高速に
 精度よく行われることがあります。
 例えば、鉄道が何度走っても、絶対に決まったルートしか走れないという特性があることで、
 一般的なビッグデーターの処理がはるかに精度よくおこなわれる可能性もあります。

 地上設備や車両を自動的に点検することで、故障する前に整備するという
 ことがいろいろな鉄道会社でおこなわれているというニュースを聞きます。
 いろいろ先進的なIoTとビッグデーターの活用のモデルが鉄道業界から出てくるかもしれません。