列車ダイヤについて -- 3-11 有利差異、不利差異の話

                                      2019年12月17日  

 3-11 有利差異、不利差異の話    

 簿記や管理会計の勉強をされた方は、原価計算基準に規定された、標準原価という言葉を聞かれたことがあると思います。

 原価計算基準 四(一)2
 標準原価とは、財貨の消費量を科学的、統計的調査に基づいて能率の尺度となるように予定し、かつ、予定価格又は正常価格をもって計算した原価をいう。
 この場合、能率の尺度としての標準とは、その標準が適用される期間において達成されるべき原価の目標を意味する。

  原価計算基準 四一
 標準原価は、直接材料費、直接労務費等の直接費および製造間接費について、さらに製品原価について算定する。

 となっており、ここで製品の加工時間が、標準より速ければ、直接労務費(および製造間接費)について、有利差異が発生し、
 標準より遅ければ、直接労務費(および製造間接費)について、不利差異が発生します。


 タイトルにある、有利差異、不利差異というのは、正式には、製品製造原価の計算の際に定義されている用語で、
 鉄道のダイヤについて定義されているものではありません。

 しかし、想定される余裕を含めてダイヤを設定し、なるべくダイヤに忠実に列車を走行し、ダイヤより速いか遅いを記録
 するというのが、筆者には有利差異、不利差異の計算と似ているように思えたので、このタイトルをつけました。

 列車が、何かの原因でダイヤより遅れることがあります。金額には換算しませんが、30秒遅れた1分遅れたといいます。
 東京〜新大阪間を2時間27分で走るはずだったが、実際は2時間28分で走ったというよりは、1分遅れたというほうが
 分かりやすいからです。
 不利差異ばかりで有利差異はめったにありませんが、東京駅は遅れて出発したのに、新大阪駅に定時に到着したら、
 有利差異が発生したと例えることもできるかもしれません。

 このような見方をするとした時、現在の、2019年3月16日改正のダイヤで注目している列車が2本あります。
 こだま700号とのぞみ292号です。

 まず、東海道新幹線の東京駅では、例えば18番線から、10分15秒に博多行ののぞみが出発したら、
 3分15秒後の13分30秒に18番線に列車が到着します。そしてそれと同時に19番線から、
 13分30秒に臨時ののぞみが出発するというように、列車が出発してから同じホームに列車が到着し、
 別のホームから列車が出発する過程で、列車の到着から出発までの間は余裕がありません。

 ところが、こだま700号はひかり503号が7時33分15秒に出発した2分45秒後の、
 7時36分に17番線に到着し、15秒してから、7時36分15秒に、19番線から
 回送列車が出発します。
 
 のぞみ292号では、こだま641号が8時56分45秒に出発した3分0秒後の
 8時59分45秒に15番線に到着し、15秒してから、9時0分0秒に17番線から
 のぞみ213号が出発します。
   
 列車の到着から出発までの間にダイヤの上で15秒の余裕が設定されています。
 
 2018年3月17日改正のダイヤでは、こだま700号の東京到着は7時37分0秒で
 回送列車の出発も、7時37分0秒でした。
 のぞみ292号はありませんでした。

 何のためにこのようなダイヤになったのかわかりませんが、
 あくまで可能性のひとつとしての筆者の想像ですが、
 東京駅での列車の間隔を3分15秒から3分0秒にしたら何が起きるかを1年間試していたのかもしれません。

 もし、こだま700号の到着が遅れた場合、15秒以内なら、回送列車の出発は遅れません。
 それ以上遅れると回送列車の出発が遅れます。
 のぞみ292号の到着が遅れた場合は、到着が15番線で出発が17番線なので、
 のぞみ213号の出発が遅れることはありません。

 ダイヤを維持する上でもうひとつ重要なことが、折り返す列車の車内清掃です。
 ホームの数が限られているので、列車の本数を増やすためには、列車の間隔を短くするのとあわせて
 折り返す列車の滞在時間を短くする必要があります。

 工場で製品を生産していて、何らかの理由で加工が遅れた時、
 加工の順番を変更することがあります。自分の工程で加工が完了する製品は後回しにして、
 自分の工程から加工が始まるような製品の加工を先に行うほうが、
 工場全体の製品製造のスケジュールを維持できるからです。

 同じようなことが東海道新幹線の東京駅でも起きます。
 何らかの理由で、到着列車が遅れた時、遅れた到着列車を待ってから、出発列車を発車させるより、
 順番を替えて、出発列車を先にするほうが、他の列車への影響を少なくできます。
 2023年から行うそうです。

 しかしこの場合、ひとつ問題があります。
 到着する列車が折り返し列車の場合、車内清掃のための時間がさらに短くなることです。
 現在でも、列車の到着が遅れた時、車内清掃の時間が12分より短いことがあります。
 一部の座席の向きが変わっていなかったり、四角な車両を丸く掃くというようなことはありません。

 列車が遅れた場合は、車内清掃の人数を増員するようなことが
 あらかじめ計画されているのかもしれません。