列車ダイヤについて -- 3-9 早得方式かオークション方式か?
2019年3月16日
3-9 早得方式かオークション方式か?
ウィキペディアによれば、「ベストプラクティスは、ある結果を得るのに最も効率のよい技法、手法、プロセス、活動などのこと。」
と定義されており、
「ベストプラクティスは、企業資源計画 (ERP) システムなどによく使われている。
一般にいくつかの相反する選択肢からベストプラクティスを選択しコンピュータシステム内に定義することができるとされている。
従って、同業種の企業は同じ手続きを利用することで、理論上はその経営を改善できる。」とされています。
どうしても細かなことが気になるのですが、
同業種の企業、例えばビジネスホテルでも、年中 One Price を売りとして、新規開業や日曜日などの例外を除いて
年中同じ料金にするところもあれば、Dynamic Pricing を売りとして、近所でイベントがあるなどにより、何段階もの料金を
設定するところもあります。この場合どちらかがベストプラクティスということでしょうか、それともそれぞれのPricing方法について
ベストプラクティスがあるのでしょうか?
同じように、鉄道や航空機の座席の予約方式、料金設定方式として、早得方式とオークション方式は、
どちらかがベストプラクティスなのか、あるいはどのように使い分けられるものかがずっと気になっています。
今回のコラムは、筆者が気になっていることを述べるもので、ベストプラクティスの定義や、早得方式とオークション方式について
どちらが良いかを断定するものではありません。
早得方式とは、東海道・山陽新幹線の予約システムのEX早特・EX早特21や、国内線の航空機の早トク・早割などのように、実際に
利用する、21日前あるいは、45日前・60日前までに予約すると安い割引価格で購入できるものです。
オークション方式とは、国際線の航空機などで見られる、入札金額により、ワンランク上の座席にアップグレードできるシステムや、
出発直前により安い価格の席に変更できるシステムです。
海外の国内線の航空機にも、オークション方式を採用するものがあり、空席がなくなる、入札により合理的な価格が形成される
などの理由から、ベストプラクティスといわれることがあります。
一方、出発直前まで、多くの予約の変更がはいるため、システムの処理が増えるあるいは、座席数以上の予約がはいって、
一時ニュースにもなった、乗客を飛行機から引きずり下ろすなどの原因になることもあります。
日本では、伝統的には早得方式で、早く予約するほうが安くなっていました。
また航空機では、早トク・早割などの価格と正規価格に倍近い違いがあり、実質的に多くの人が、早トク・早割で購入
している場合もあります。 正規価格は何のためにあるのかという声もありますが、いくつかの席を正規価格にしておけば、
満席で乗客が溢れることはないし、非常に混雑した時期でも、どうしてもチケットを購入したい人は、正規価格を払えば空きがあることも
あるという利点があります。どちらかというと、安定性を重視するシステムとも言えます。
また、鉄道と航空機の違いもあります。
例えば、東京から大阪まで移動する時、片道の料金はおよそ、14,000円程度ですが、運輸業者からみた原価の構成が
大きく異なります。 正確な原価は発表されていないのでわかりませんが、東海道新幹線の場合、
東京から新大阪まで、電気代は30万円かからないと言われています。 満席の場合、ひとりあたり200円程です。
このように鉄道は、流動費は安い一方、 鉄道施設購入長期未払金利息や新幹線鉄道大規模改修引当金繰入
などの固定費が相当発生するのにたいし、
航空機は燃料費や空港の着陸料などの流動費の割合が高くなります。 固定費の割合が高いと、多少空席はあっても
利用者数の総数を増やすほうが利益が多くなります。北海道新幹線で、利用率の低さが時々話題になりますが、
以前、4両編成の特急が走っていた区間に、10両編成の新幹線を走らせると、
多くの場合、利用率は下がります。しかし、東北新幹線の東京〜仙台間で満席になるのであれば、
グランクラスの車両を切り離すわけにもいかないので、そのまま新函館北斗まで走らせることに合理性がある
ように思います。利益の最大化を考える時、それほど悪影響はないかもしれません。
最初に述べた、ERPは、Enterprise Resource Planningです。企業で経理・会計の業務として財務諸表を作成する際などに
用いられることが多いのに、すでに発生したトランザクションを記録し集計して財務諸表を作成するツールがなぜ
Planning、企業資源計画と呼ばれるのでしょうか?
実は、ERPは計画するためのツールです。ERPは初期には、MRP(Manufacturing Resource Planning)と呼ばれていたので、
工場で、製品を生産する場合を例として説明します。
品質の良い材料を購入して、加工時間を減らしたり、仕損の割合を減らすことが製品製造原価の減少につながるとか、
製造間接費の配賦の方法を改善して、正しい製品製造原価を算出して会社の利益の最大化を図ることなどが、
本来のERP導入の目的です。また現在では、ERPの扱う範囲は、会社の承認プロセスの適正化や、売掛金の与信限度の適正な計算、
People Analiticsなど、工場に限らず会社全体の業務プロセスに関わっています。
海外の子会社がERPを導入したので、本社もERPを導入したが、経理・会計の業務にしか使っていないで、
工場の業務改善は、独自の表計算ソフトで行っているというのは、正しいベストプラクティスの適用方法とは言えません。
また会社の機関設計として、例えば委員会設置会社がアメリカなどで評判が良いので形式上導入したが、不正が発生したというのも
正しいベストプラクティスの適用方法とは言えません。
ここで、筆者なりの考えをまとめると、
知見のない分野に進出する時、ベストプラクティスを装備したシステムを導入するのは、合理的な行動です。
一方で、独自の考え方をもって、ベストプラクティスと言われるものが存在する分野で、ベストプラクティスと異なる方法
を導入してみるのも合理的な行動です。
しかし、建前として外形だけベストプラクティスを導入し、裏で自己流の業務プロセスを続けるというのは
行わないほうが良いと思います。